今週は北朝鮮の金正恩第一書記が「泣いている豚」呼ばわりされたというニュースが気になりました。しかも自国の航空会社のフェイスブックで! いったいどういうことか?
 各報道によれば、北朝鮮唯一の航空会社「高麗航空」のフェイスブックのページが「イスラム国」の関係者を名乗る何者かにハッキングされたという。金正恩が泣いている写真や「泣いている豚」という文字がつけられ、サイバー攻撃された。
 なぜ「イスラム国」が北朝鮮を? 実は、北朝鮮は《フランス週刊紙銃撃事件について同国のファビウス外相にお見舞いの電報を送り、北朝鮮として「あらゆる形態のテロに反対する」との立場を示した。》という。(9日・産経ニュース)
 ツッコミどころ満載の電報だが、これがハッカーに「北朝鮮は敵」とみなされたらしい。
北朝鮮が「イスラム国」サイバーテロの標的に!? しかもその「サイバー・カリフ」と名乗るハッカーは米中央軍のツイッターやユーチューブの公式アカウントも最近乗っ取っている。つまり、ソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃問題でやり合っていた北朝鮮とアメリカがここでは一転して被害者同士という「夢のタッグ」の可能性があるのだ。なんという混沌!
 ここでもう一度北朝鮮がフランスに送ったという電報の内容を振り返ってみよう。
「あらゆる形態のテロに反対する」……。「あらゆる形態」とは直接的な武力のほかにサイバー攻撃の「テロ」のことも言っているのだろう。そう、北朝鮮はフランスへメッセージを送りつつ、全世界(とくにアメリカ)に自身のサイバーテロ疑惑をしれっと否定していたのだ。そして思わぬところから攻撃を受けた。アメリカと一緒に。きのうの敵は今日の友。
 さて、サイバー攻撃で金正恩が泣いている写真や「泣いている豚」という文字がつけられあちょうたのは14日だという。この日はテロで襲撃された風刺週刊紙シャルリ・エブドの特別号が発売された日でもある。表紙は「私はシャルリ」と書かれたプラカードを手に「涙を流す」イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載した。
 あれ、もしかして、北朝鮮への「泣いている豚」攻撃って同じく絶対的な存在(金正恩)を「泣かせる」という意趣返しの可能性はないだろうか。考えすぎか? とりあえず「私は金正恩」というメッセージもつけて欲しかったです。
著者プロフィール

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。