野党としての真価を問われる

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 民主党代表選は1月7日に告示され、岡田克也代表代行(61)、細野豪志元原発担当相(43)、長妻昭元厚労相(54)の3人が立候補、18日の投開票に向けて選挙戦がスタートした。

 2014年末の第47回総選挙で、「自公圧勝」をもたらしたのは野党第一党である民主党の不人気だった。民主党政権時の普天間基地移設に見られた右顧左眄する弱さが、国民の民主党への投票を阻んだ。

 安倍晋三政権は、「民意」を得て経済的には金融緩和のアベノミクスを推し進め、政策的には悲願の憲法改正への道筋をつけようとしている。

「リベラル勢力を糾合する」長妻の立候補で岡田票が食われた

 産経新聞は、1月4日、一面トップで「自民総裁『3期9年』論」と報じた。2015年9月の総裁選で再選される可能性が高い安倍首相に、もう一期、首相を務めさせ、2020年の東京オリンピックを安倍首相のまま迎えさせ、同時に憲法改正を視野に入れた活動を委ねる、というのである。

「2期6年」という現行の総裁公選規定は多選を戒めたものだが、それが厳格に過ぎるかどうかは、今、問題ではなかろう。問うべきは、金融緩和と公共工事という国のカネで景気浮揚を図り、株価を上げ、その人気で憲法改正にまで踏み込もうとする雰囲気が、自民党内に醸成されていることの是非だ。

 本来、こうした与党の独走を阻むのは野党だが、民主党の体たらくはこれまで見てきた通りである。

 では、新代表は民主党を立て直し、政権の抑止力に成り得るのか。

 2014年末までの段階では、岡田VS細野という一騎打ちになる可能性が高く、「岡田優勢」というのがプロの見立てだった。

「岡田支持派は、野田佳彦元首相が率いる『花斉会』や旧社会党出身の赤松広隆前衆院副議長の『サンクチュアリ』など。これに対して細野は自ら『自誓会』という派閥を立ち上げ、これを前原誠司元外相の『凌雲会』などが支援している。当初は細野優勢だったが、連合傘下の労組には、野党再編志向の細野に対するアレルギーがあり、岡田が巻き返した印象。安定感もあるし、岡田で決まりじゃないか」(民主党関係者)

 ただ、年末ギリギリの12月29日、長妻氏が「リベラル勢力を糾合する」として出馬を表明、これを赤松氏ら旧社会党系グループが支援。三つ巴の戦いとなり、混迷してきた。岡田票が食われることで、「細野優勢」という見方が浮上している。

 悲しいかな、告示の時点で国民の関心は薄いが、論戦を活発にすることで安倍政権の方向性に疑義を突きつけることが、3候補に課せられた責務だろう。

伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある