乱戦の裏に潜む「大量失点」の連鎖

5打数3安打と活躍した蓮井 颯人(高松南)

 最近、地方大会・甲子園問わず高校野球で頻発している「ビックイニング」。観る側からはハラハラドキドキすることこの上ないが、プレーする側・采配する側から見ればこれほど厄介なものはない。かつて社会人野球で金属バットが使用されていた時代(1979〜2001年)のように、高校野球でもいまやセーフティーリードは「10点」でも疑問符が付く感じだ。

 とはいえ、高校野球においては打撃力の強化だけでビックイニングは生み出せない。そこには必ず四球・失策・失策に現れない判断ミスなど相手の「マイナス要素」が絡んでくる。そう考えると攻撃側の「ビックイニング」と言うよりは守備側の「大量失点」と表記したほうが、むしろ正しい表現かもしれない。

 そこで、この試合を振り返ると、2回表・志度の5得点は二死からの連続ヒット後、5連続四死球とフィルダースチョイスによるもの。一方、4回裏に高松南があげた7得点も、5安打に2失策が絡んでいるため、投手の自責点は「3」に留まっている。要は「止める術」はあるということだ。

石丸 達也監督からの檄を受け、気勢を上げる志度の選手たち

 試合自体は7回表に一死満塁から内野ゴロと旧チームから4番を張る岸田 大樹(2年・捕手・右投右打・175センチ63キロ・高松市立古高松中出身)の右前適時打、そして岸田がオーバーランで挟まれる間に逆転のランナーを迎え入れた志度が鮮やかな逆転勝ちを飾ったが、これ自体も失策が絡んで自責点は「0」。

 ミスを完全に撲滅するのは困難だが、減らせば明らかに失点は減る。打力で全国に追いつくのは一朝一夕にはいかないが、守備力と判断力は鍛えれば即効性が高いはず。

 これは両校だけの問題ではない。この試合をたたき台にして香川県内・四国内の選手たち、指導者、そして伝える我々も含め、高校野球にかかわるみなさんは、もう一度自分たちの「あるべき姿」について考えていく必要があるだろう。

(文=寺下 友徳)