劇的な幕切れ!巻、逆転サヨナラで準決勝進出

 小林俊(巻)

 ベスト4をかけた最後の試合には、部員11人ながらここまで勝ち上がってきた加茂暁星と巻が対戦。試合は劇的な幕切れで幕を閉じた。

 巻の先発・小林 俊(2年)は、序盤低めを丁寧につくピッチングで凡打の山を築き、加茂暁星打線に的を絞らせない。一方、加茂暁星先発の森山(2年)は初回、4番・田中(2年)のタイムリーで1点を失うも、力のあるストレートを武器に、以降得点を許さない。両エースとも、ランナーを背負うものの、後続を退ける形でスコアボードに0を並べる。巻が1点リードで迎えた八回表、加茂暁星は先頭の2番・田辺(2年)がツーベースで出塁。ここで巻は小林俊から2番手・梨本(2年)へスイッチ。

 だが続く粟屋(2年)もサードゴロエラーで出塁。すかさず盗塁を決め、無死ニ、三塁のチャンスを迎える。この場面4番・北澤(2年)がスクイズを決め、同点。さらに続く5番・佐藤(2年)もスクイズを決め1点を勝ち越す。そのまま迎えた九回裏、力みからか加茂暁星・森山は先頭打者に四球を出してしまう。

 ここでバッターは初回、先制打を放っている4番・田中。田中は甘く入ったストレートを見逃さず、ライト前へ運ぶ。ライトへ飛んだ打球は、右翼手の前でポーンとイレギュラーし、ライトが後逸。一塁走者が一気に生還すると、ライトからの中継が乱れたすきに、バッターランナーも一気に生還。逆転サヨナラというな幕切れで巻が3対2で勝利し、ベスト4に名乗りを上げた。

エキサイティングプレイヤー森山涼(2年・投手・加茂暁星)

 「ストレートが真ん中に入ってしまいました。失投です。(右翼手の後逸を見て)やばいなと思いました。でも同点で無死三塁。切り替えて次の打者をどう抑えようかとと考えていたら、中継が乱れて…」九回、サヨナラの場面をこう振り返る加茂暁星エースの森山。

 初回、1点を失うが、中盤は伸びのあるストレートを武器に、巻打線に真っ向勝負。途中、加茂暁星にとっては不利な判定が2度もあったが、気持ちを切らさずにスコアボードに0を並べた。「調子は普通。1点失いましたが、ランナーを出しても粘り強く投げていれば、必ず味方が点を取ってくれると思っていました。(八回)連続スクイズで2点取ってくれた時は本当にうれしかった。だから、絶対に抑えようと思って投げました」

 抑えようという強い気持ちは逆に力みにつながり、九回、先頭打者に四球を出した後、先制タイムリーの4番・田中を迎える。甘く入ったストレートをライトに弾き返され、不運なイレギュラーそして、味方の中継ミスもあり、一気に逆転を許してしまう。「ミスは誰でもするもの。それがあの場面で出てしまったというだけ。それもこれも先頭打者に四球を出した自分の力不足。勝ち急いでしまいました。冬はこの敗戦をしっかり受け止めて、こういう試合で勝っていけるように精神面はもちろん、下半身強化で体重も増やして、コントロールも磨いて、春、夏で勝ち進めるように練習していきたいと思います」

 言葉を選びながら、慎重に受け答えする森山。その表情は敗戦直後にも関わらず、落胆というよりははっきり前を見据えているように見えた。エースとしての自覚と決意。現時点でも、新潟県下有数の好投手と評価されている彼が、この敗戦をキッカケにどう飛躍するのか。春、夏の大会が楽しみだ。

(文=編集部)