第3シード・鹿島学園がポジショニングの妙で水戸一を下し県大会出場決定!

先発・市村悠大(水戸一)

 水戸地区代表決定戦第3試合は、第3シード・鹿島学園と水戸一の対戦となった。

 鹿島学園は今秋から、岡部真洋氏(34歳)に代わり、女子野球クラブチームのアサヒ・トラストや、社会人野球連盟所属の日本ウェルネススポーツ専門学校でつい最近まで監督をしていた小林利彦氏(35歳)が監督を務めるようになった。知人から事前に、「鹿島学園は監督が交代してスタイルが変わった」という話を聞いていたので、この日どのような野球を見せてくれるか、秘かに楽しみにしていた。

 鹿島学園の先発は、背番号9の左腕・山口光騎(2年、横須賀ヤング)、水戸一の先発は、背番号18の右腕・市村悠大(1年、美野里中、オール茨城最終候補)だ。

 1回表、水戸一は打線が繋がり幸先よく先制する。先頭の1番・木村文哉(2年、美野里中)がフルカウントからセンター前ヒットで出塁すると、2番・水嶋啓仁(2年、赤塚中)が初球で送って一死二塁のチャンスを作る。ここで3番・和田智樹(2年、美野里中)は初球をセンター前に弾き返し、水戸一が1点を先制する。

 さらに4番・和田佳樹(2年、美野里中、智樹とは双子)もセンター前ヒットで続き、一死一、二塁と再びチャンスを作る。しかし、5番・橋本はショートゴロ併殺に倒れ、この回を1点で終える。(水戸一1対0鹿島学園)

 1回裏、鹿島学園は先頭の1番・佐藤 大智(1年、座間シニア)が死球で出塁すると、2番・日下部壮汰(1年、小山ボーイズ)が送って一死二塁。さらに盗塁と死球などで二死一、三塁とする。ここで5番・山口はライト前に運び1点を返す。(水戸一1対1鹿島学園)

鹿島学園、ライトのポジショニングに注目

 鹿島学園はこの試合で、外野手が大胆な守備陣形を敷く。右打者の場合はライトがライト線に極端に寄り、センターは右中間のど真ん中に、レフトは少し左中間に寄りレフト線はがら空き。一般的な定位置とはかけ離れた極端なポジションを取る。左打者の場合はその逆だ。

 4回表、そのポジショニングが3つのアウト全てにおいて見事に的中する。水戸一先頭の3番・和田智の当たりは右中間への長打コースだが、あらかじめ右中間を守っていたセンターがほとんど動くことなく、正面で難なくキャッチする。続く4番・和田佳(左打ち)の当たりは右中間へ抜けようかという当たりだが、これもまた右中間につめていたライトが正面でキャッチし二死とする。5番・橋本はファーストの裏へ落とすヒットで出塁し、二死一塁となるが、6番・海老澤広平(2年、美野里中)のライト線への低いライナー性の当たりを、ライト・藤枝耕太(2年、旭中)が前方にダイビングし、拝み捕りでアウト。好プレーが飛び出す。鹿島学園がポジショニングの妙で見事に凌ぐ様子は鳥肌ものだ。

 5回裏、鹿島学園は、先頭の8番・藤枝がセンター前ヒットで出塁。9番・カレオン・クリス(2年、相模原BBC)が送って一死二塁。藤枝が盗塁し、1番・佐藤が死球でつなぎ、さらに盗塁を成功させ一死二、三塁とする。ここで2番・日下部はカウント2ボール1ストライクからスクイズを試みるが、水戸一ファースト・橋本が猛チャージし本塁はタッチアウトとなる。

 二死一、三塁。続く3番・平栗清大(2年、南東北ヤング)は追い込まれながらも勝負強く適時ライト前ヒットを放ち1点。さらに4番・小檜山優也(2年、南東北ヤング)も適時レフト前ヒットと続き、1点。鹿島学園がこの回2点を追加する。(水戸一1対3鹿島学園)

大粒の雨の中行われた、7回表

 6回裏、鹿島学園は、一死から8番・藤枝、9番・カレオン、1番・佐藤の3連打で一死満塁の大チャンスを迎える。続く2番・日下部は浅めのライトライナーに倒れ二死となるも、3番・平栗、4番・小檜山が2人とも初球で死球となり、連続押し出し。2点を追加する。(水戸一1対5鹿島学園)

 7回表を迎えるところで突然空気が冷たくなり、水戸市民球場は激しい雨に襲われる。雨の中、何とか7回表を終え、試合は一時中断する。

 約2時間後の17時、ようやく7回裏から再開される。水戸一は肩が冷えた市村に代えて、背番号1の丹下をマウンドへ送る。8回裏、鹿島学園は1番・佐藤が死球で出塁し、盗塁とエラーなどで生還。さらに、3番・平栗も死球で出塁すると、4番・小檜山のレフト線二塁打で生還し、この回さらに2点を追加する。(水戸一1対7鹿島学園)

鹿島学園・山口光騎

 9回表、水戸一は3者凡退で長かった試合はようやく終了となる。敗れはしたものの、水戸一・先発の市村悠大は、伸びのあるストレートとブレーキの利いたカーブ系の変化球を持つ、まとまりのあるピッチャーだった。ただ、全ての失点には、自ら与えた四死球が絡んでいる点は反省材料としたい。

 鹿島学園・先発の左腕・山口光騎は、唯一失点した初回に3つのヒットを許したものの、2回以降は立ち直り、9回で被安打6、奪三振3、与四球2と上々の内容だった。球威は今夏の2枚看板だった高木や神田に比べると劣ることは否めないが、公式戦での完投勝利をきっかけに勝てる投手へと成長して欲しい。

最後に、珍しい場面があったので紹介したい。5回表、二死。水戸一の9番・吉田(右打ち)はカウント1ボール2ストライクからタイムを取り、左打席に移動した。その後1球見逃した(ボール)あと、再びタイムを取り右打席に移動。その後の投球が2球続けてボールとなり四球を選んだ。試合進行上は嫌がられる行為かもしれないが、水戸一・吉田は何がひらめいて打席を入れ替えたのか、その後どうして右打席に戻ったのか、狙いは何だったのか、非常に興味をそそられた場面であった。

(文=伊達 康)