東海大相模・小笠原、毎回10奪三振で鶴嶺を抑え、ベスト8進出! 

毎回10奪三振の力投を見せた小笠原慎之介(東海大相模)

 この夏、甲子園出場の東海大相模。夏を経験している選手が多く、期待値がどうしても高くなってしまう。その中で勝ち続けることができるかが、このチームの宿命だが、鶴嶺に苦戦をしながらも、勝利を決めた。

 東海大相模は2回裏、二死一塁から1番杉崎 成輝が直球を捉え、レフト線を破る長打。一塁走者の川地は鶴嶺のレフトの動きを見て、本塁へ突入できると確信すると、三塁手際でさらにスピードを上げ、最後は捕手のタッチをかいくぐりようなスライディングで1点を先制する。見事な走塁であった。

 さらに3回裏、二死一、二塁から7番磯網の中前適時打で1点を還し、4回裏には、一死二、三塁から3番豊田 寛の三ゴロで1点を追加。さらに二死二、三塁から5番千野 啓次郎の適時打、相手野手の失策で、5対0と点差を広げた。

 先発の小笠原 慎之介。この夏は最速146キロを計測したが、140キロをバンバンを出すような投手ではなく、むしろコントロール重視で、コンビネーションで抑える投手だ。しかしこの日は本来の制球力がなく、四球を出すことが多い。

 ただ、走者を背負ってから、エンジンを上げる。ランナーがいない時は135キロ前後だが、ランナーがいる時は、140キロ前後の速球を連発し、鶴嶺打線を抑えていく。とはいえ、5回まで毎回のごとく走者を背負う投球は、本人からするとあまりスッキリしない投球だっただろう。

 6回以降は100キロ前後のカーブを織り交ぜた配球にシフトチェンジ。非常に球速が遅く、逆に鶴嶺打線が合っていなかった。またカーブを使うときはしっかりと縦振りで投げる。それにより投げる感覚が蘇ってきたのか、軽く投げていても140キロ前後の速球を投じ、スライダー、カーブを織り交ぜ、6回、7回は三者凡退。結局、4安打完封、毎回の10奪三振で、鶴嶺を封じこみ、ベスト8進出を決めた。

 これで小笠原は2回戦の橘戦に続き2試合連続の二桁奪三振。16イニングを投げて、24奪三振と驚異的なペースで奪三振を奪っており、やはり別格の投球を見せている。

3安打を放った杉崎(東海大相模)

 一方で打線は鶴嶺の先発・井口の緩い変化球にタイミングが合わず、強くボールを叩くことができていなかった。

 その中で活躍を見せていたのが1番杉崎 成輝。172センチ68キロとそれほど大きくないのだが、この夏は打率.577、3本塁打、9打点と長打力を披露したが、本質的には野手の間を抜く中距離打者タイプ。この選手の良さは身体が突っ込むことなく、右足を踏み込んだ時に膝が開くことなく、ボールを手元に呼び込んで、綺麗に身体を回転させ、スイングが出来ていること。速球だけではなく、緩い変化球を対応がでいている。この試合では第1打席から中安打、左三塁打、左安打と3打席連続安打を放った。1年の時は体が開き気味で、ボールをしっかりとらえられない課題があったが、だいぶ克服してきている。

 そしてフットワークが軽快で、この試合でも左右の打球に対しては、素早い動きを見せた。強打者タイプではないのだが、高校生の左の好打者によく見られるパワー不足も見られない。守備も良い。今後ドラフトを意識出来る内野手へ成長を遂げるか、注目をしてみたいと思う。

 準々決勝は慶應義塾とあたる。個人として今日以上の活躍を見せる選手が多くなっていくか注目をしていきたい。

(文=河嶋 宗一)