大阪桐蔭、強打、強打の波状攻撃でベスト8に名乗り

 全国の強豪校を挙げようとすれば真っ先に名前が出てくるのが大阪桐蔭で、対する箕面東は時々好投手が出て話題になることはあるが全国的な知名度はない。

 真っ向からぶつかっても勝ち目はないと思ったか、箕面東の先発は1年生左腕の田部秀和。1回裏に早くも1点取られ、尚も1死一、二塁のピンチが続くが、4番正随優弥(3年・一塁手・右投右打)を併殺打に打ち取り最少失点にとどめたのは立派である。しかし、2回から大阪桐蔭の波状攻撃が始まる。

 2回は死球、四球、死球で満塁の好機を迎え、1死後、9番福島 孝輔(3年・投手・右投左打)が右前に弾き返し1点。さらに1番中村 誠(3年・左翼手・右投右打)の2点タイムリーで引き離しにかかる。3回は打者一巡して6点、4回は正随のソロホームランなどで4点を加えて5回コールドの14対0でベスト8に名乗りを上げた。

 大阪桐蔭の持ち味は強打、強打の波状攻撃である。2番峯本 匠(3年・二塁手・右投左打)、3番香月 一也(3年・三塁手・右投左打)、森 晋之介(3年・中堅手・右投左打)は下級生のときから甲子園大会に出場していたこともあり知名度は全国区。

 峯本は昨年の選抜でランニングホームランを放ち、このときのベース1週タイムがプロ一線級並みの14.99秒を計測した。この健脚はもちろん現在も健在で、この日の第3打席ではワンヒット+右翼手のエラーで2人の走者に続いて一挙にホームへ生還し、このときのタイムが15.42秒だった。途中で足を緩めても15秒台で還ってくるところに走塁への強い意欲を感じる。

 打撃面で目立ったのは香月である。3打数1安打、そのうち第2打席は満塁での併殺打とパッとしないが、形のよさとスイングスピードの速さはさすが強豪・大阪桐蔭で下級生の頃からスタメン出場を果たしていただけのことはある。

 トップというのは前足をステップし、その直後にバットを引いたときにできる“体が割れた”状態のことを言う。誰でもこの状態はできると考えがちだが、パチッと音を立てるように割れができる選手は少ない。言ってしまえば、そういう割れができる選手を私はドラフト候補として紹介している。香月はそのトップのときの割れがしっかりとできている。

 1死三塁で打席に立った第1打席は内角のコースいっぱいに投じられた左腕の縦変化のスライダーを十分呼び込んで右前に先制タイムリーを放っているが、このコースの変化球は普通ファールにするのが精一杯である。この渋いゴロ打球に形のよさが見事に表現されていた。

 西谷浩一監督いわく、今年のメンバーの中でプロ志望の選手は香月1人だと言う。高いレベルをめざす技術の高さはやはりプロをめざす選手ならではのものだと感じ入った次第である。

 投手は大阪桐蔭のアキレス腱と言われているが、先発した福島はサイドに近いスリークォーターから140キロ近いストレートとキレのいい横変化のスライダーを駆使して5回を2安打に抑えた。左肩の開きが早くコントロールが甘いという課題はあるが、甲子園大会に行っても本格派で通じるボールの力は十分に感じた。左打席からの強打も一級品で、こういう選手が9番に座るチームは全国的に見ても少ないと思う。

 準々決勝を勝ち上がれば準決勝は枚方津田対履正社の勝者との大一番が控えている。もし履正社との対決になれば全国的な注目を集めることは必至。こういう試合を当たり前の日常として観戦することができる大阪の高校野球ファンは幸せである。

【野球部訪問:第35回 大阪桐蔭高等学校(大阪)】