春日部共栄vs大宮東
大宮東対春日部共栄。埼玉県民にとっては黄金カードだ。
両校、同じ年に甲子園準優勝をしている。大宮東は選抜準優勝。春日部共栄は夏に甲子園準優勝を果たしている。大宮東の当時の主力は阪神、西武で活躍した平尾 博嗣、春日部共栄のエースは西武、横浜で活躍した土肥 義弘である。このカードに第1試合よりも観客が詰め掛け、内野席はほぼ満席。そして外野席も埋まるほどになった。
試合は投手戦となった。
大宮東・中田 浩貴（3年）、春日部共栄・金子 大地（3年）の投げ合いとなった。2人ともタイプが非常に似ている。中田はやや腕を下げた左スリークォーターから120キロ後半の速球と、スライダーを投げ分ける投球スタイル。金子も左サイド気味に125キロ〜130キロの直球とスライダーを投げ分ける。そしてお互い投球テンポが実に速い。捕手から受け取って、5秒以内に投球動作に入る。
二人のテンポの速さに打者は付いていくだけで精一杯。次々とフライ、ゴロを打たせて取り、0行進が続いた。
唯一、大宮東が6回裏に一死一、三塁のチャンスを作った。ここで2番長澤 彰（3年）はスクイズを仕掛けた。打球は投手前へ転がり、金子が必死にバックホーム。ギリギリのプレーとなったが、判定はアウト！もしセーフとなっていれば、大宮東に一気に流れが傾いていたかもしれない。
緊張感のある攻防は、投球時にいつも冷静な金子が吠えるほど、熱い勝負となっていた。
そしてお互い得点をあげれぬまま試合は9回まで来る。
なんとか先制したい春日部共栄は先頭の清水 頌太（2年）がレフト線を抜ける二塁打で無死二塁のチャンスを作る。無死から長打が飛び出すのはこれが初めて。2番小暮 涼（3年）が三塁前へ犠打を決め、一死三塁のチャンスを作る。打者は第2打席でライトフェンス直撃の二塁打を放っている3番守屋 元気（3年）が打席に入った。
大宮東バッテリーに選択肢は2つある。このまま守屋で勝負するか、それとも守屋を歩かせて、この日無安打の原田 寛樹（3年）で勝負するか。
大宮東バッテリーは敬遠を選択。守屋は中田のボールにしっかりと合っていて、犠飛を打つ力は十二分に持っている。無理に勝負する必要はない。
そして打席には4番原田がむかう。自分の前の打者が敬遠されたのだ。これで原田は燃えないわけがない。4番打者の意地として先制打を放ちたい。そして2-1からの4球目。直球を捉え、一、二塁間を抜ける安打を放つ。
ついに、春日部共栄が投手戦の均衡を破り、先制に成功した。
先制打を放った原田は一塁ベースで大きくガッツポーズを見せた。この安打で、一塁走者の守屋は三塁まで進み、一死一、三塁から5番三浦 友之（3年）が遊ゴロ。守屋はゴロゴーでスタートを切っており、本塁生還し、2対0と貴重な追加点を挙げた。二死二塁となって、6番金子が中前適時打を放ち、3対0とさらに点差を広げる。
そして9回裏。このまま終わりたいところだが、大宮東も反撃に出る。3番塚原 慎也（3年）の右前安打、4番堀 拓郎（3年）の中前安打で無死一、二塁。5番中田浩の二ゴロ。併殺を狙おうとしたが、送球が逸れてまさかの無死満塁に。ここで大宮東は代打攻勢に出る。
まず1人目の代打・成田 竜真（3年）は空振り三振に倒れ、一死満塁。2人目の代打・竹本 慧（3年）は中前適時打でまず1点を返すが、3人目の代打・岩崎 剛士（2年）が併殺に倒れ、試合終了。
春日部共栄が3点のリードを守りきり、3年ぶりの決勝進出を決めた。
苦戦を強いられた春日部共栄。準決勝の大一番ということで、選手たちに硬さが見られたが、9回表、攻撃に対する姿勢は「何としてでも点を取りに行く執念強さ」を感じさせた。
次の相手は市立川越。昨秋の準決勝で敗れ、惜しくも関東大会出場を逃した相手である。それだけにリベンジを果たしたい思いは強い。今度は甲子園出場をかけて戦うこととなった。
これまであと一歩で甲子園を逃した先輩たちの想いを背負い、全力で戦い抜き、頂点を掴み取る。
（文＝河嶋 宗一）
