向上vs相洋
青く澄んだ空、そしてグラウンドまでしたたり落ちそうな、球児達の汗と情熱。ここは、神奈川の球児たちの聖地、横浜スタジアム。今まで、どれだけの球児達がこの聖地で歓喜を味わい、涙を流し、悔しさを飲み込んできたのだろうか。
準々決勝第一試合、向上対相洋。11:00AM、スタジアムに響き渡る歓声を、選手一人一人が吸い込んで、彼らは、グランウドへ駈け出した。
灼熱の中、行われたこのカードは2時間半にも及ぶ、準々決勝にふさわしい、一戦となった。まず、チャンスメイクしたのは、初回の向上。先頭打者、三廻部 憂磨が三塁打を放ち、無死三塁と絶好の好機を演出する。しかし、次打者、鈴木陵史の場面で、リードの大きかった三廻部 憂磨が三塁でさされ、先制のチャンスを逸してしまう。向上は、続く2回も、先頭の安達 鴻希が安打で出塁するも、後続が倒れ、絶対に欲しい先制点を奪えない。
一方、1回、2回とピンチを潜り抜けた、相洋は2回、一死三塁とすると、3番松田真弥が放った内野へのゴロが、松田真弥のこの一戦にかける執念が勝り、内野安打となる。押され気味だった相洋が先制点を奪う。
相洋に先制点を奪われた向上は、4回、反撃の、のろしを上げる。2番鈴木陵史が出塁するとスチールなどで一死三塁と得点圏に走者を進める。ここで、4番安達 鴻希がライトへ犠牲フライを放ち、試合を振り出しに戻す。
その後、両校ゆずらず、同点のまま、試合は終盤戦へ。 「いくつもの日々を越えて、たどり着いた今がある。だからもう迷わず進めばいい栄光の架け橋へと・・」 向上のスタンドの応援団が7回表の攻撃の前に、ゆずの「栄光の架け橋」を大合唱。この熱いメッセージは、グラウンドの選手達へは届くのか。
大合唱を受けた、向上の選手達は、そのメッセージを、確かに受け取った。途中出場の福田伊織が安打で出塁し、亀井智寛がライトへの二塁打を放ち、ついに一点をもぎ取る。試合の均衡は破れた。その後、松澤周季の死球などでチャンスを拡大し、1死一塁三塁とすると、9番高橋 裕也の犠牲フライでさらに一点を追加し、試合を3対1とする。
そして、試合はいよいよ最終回へ。なんとしても、追いつきたい相洋は、執念をみせる。9回2死二塁の場面で、代打松倉巧弥が望みをつなぐ、二塁打を放ち、一点差とする。スタジアムには、歓喜と悲鳴が入り混じった声がこだまする。相洋のスタンドのボルテージがこの日、最高潮になるも、最後の打者が三振に倒れ、万事休す。 相洋は。あと一歩及ばず準決勝に駒を進めることはできなかった。
一方、灼熱の中の戦いを制し、30年ぶりの4強入りを決めた向上。神奈川の頂点まであと2つ。甲子園への栄光の架け橋へ向けて、選手、応援団が一緒になって走り続ける。
(文=編集部)
【野球部訪問:第138回 向上高等学校(神奈川)】