一つのボークが流れを変えて、桜丘が逆転

 人工芝の瑞穂球場はことのほか暑い。ただでさえ名古屋市内は最高気温36℃を表示しているという暑さだ。試合中に、相次いで選手の足が攣って中断というシーンも多かった。それでも、大きなアクシデントがなくてよかった。

 桜丘は豊橋市にある私立校で、楽天の中川 大志など、プロ選手を輩出した実績もある。今春の豊川に続けと、このところ県内でも元気のいい東三河勢の私学である。これに対して、愛知産大工は昨秋も県大会ベスト8に進出するなど、近年安定した実績で健闘が光っている。

 そんな両校の対戦は、愛知産大工が2回に2死一二塁から9番深谷君が右前打して先制。さらに3回にも林君のバント安打などで2死一二塁から6番平田君が三遊間をゴロで破って林君を帰して2点目。

 しかしその裏、三塁打の小田君がボークで却って1点を返した。

 これで試合の流れが変わったのか4回、桜丘は2死から、4番大苫君が四球で出ると原君が左前打でつないで山崎君も四球で満塁とすると、小田君が三遊間を破って2者を帰す逆転打となった。さらに武田君四球後9番大村君も中前打でこの回3点目が入った。

 6回に振り逃げと深谷君のタイムリー打で1点差とされたものの、その後を大苫君はよく踏ん張って堪えた。そして、次の大きな分岐点は7回の攻防だった。

 この回、ここまで暑い中100球以上投げてきた大苫君もさすがに疲れが出てきたのか連続四球。ここで、桜丘の杉澤哲監督は、大苫君を外野に下げて、米村君をマウンドに送った。その代わり端にバントが内野安打となって無死満塁。

 桜丘としては絶体絶命のピンチとなった。しかし、2ボールからの中間君のスクイズは投手への飛球となりダブルプレー。愛知産大工としては、最悪の結果となった。

 ピンチを逃れた桜丘はその裏、2四球とバントなどで2死二三塁とすると、3番森本君が右中間を破る三塁打を放って、試合の流れを大きく引き寄せた。さらに、8回にも5番原君の左翼へのソロなどで2点を追加した。

 桜丘は7回途中からリリーフした米村君が、好リリーフして締めた。春先から大苫君と競い合ってきただけに、その二人がそれぞれに役割を果たして、桜丘としては、この大会いい流れに乗れそうだ。

 先発の縄田 颯君が1回、2回を3者凡退に抑えて、その間に先制するという、いい形の滑り出しかと思われた愛知産大工だった。しかし、まさに一つのボークで流れが変わってしまったということになった。今季から、三塁への疑似投球はボークを取られることになっていたのだが、それに該当してしまった。

 もちろん、そんなことも確認していたのだろうけれども、それが大事な場面で出てしまう。それもまた、夏の大会。プレッシャーの厳しいということなのだろう。

(文=手束 仁)