国士舘vs工学院大附
蒸し暑さはあるものの、大気が不安定なためか、時折冷たい風も吹いてくる。雨がいつ降り出してもおかしくない気象状況の中で、昭島市民球場の第1試合は、予定より10分速い午前9時50分に始まった。
ノーシードながら高い評価を受けている国士舘と、昨夏準優勝の都立日野、シード校の都立片倉という都立の強豪を相次いで破った工学院大附の対戦。
試合は序盤から国士舘が優勢に進める。初回は安打2本を打ちながら無得点に終わったが、2回裏は一気に畳みかける。左前安打の7番忰田健太、遊撃手への内野安打の8番松本幸洋を一、二塁に置き、1番吉田隼は三塁線を鋭く破る二塁打を打ち、国士舘が2点を先取した。さらに2番森山怜祐の遊撃手の頭上を越える左前適時打でもう1点追加し、この回3点を入れた。
国士舘の先発は、注目の好投手、背番号10の四戸 洋明。185センチの長身から、伸びのあるストレート、キレのいいスライダーなどをテンポ良く投げ、工学院大附打線は手が出ず、4回まで3人ずつで攻撃が終わった。5回表には5番沼田洋佑が初安打となる二塁打を打ったが、四戸は走者が出ると、さらにギアを上げたように力のある球を投げて、後続を断った。
工学院大附の先発は都立日野戦に続き背番号10の左腕・壬生瑛。2回に3点を奪われたものの、3回は無得点に抑え、4回からは2、3回戦の後半に投げ、チームを勝利に導いた豊泉智之がマウンドに上がった。
豊泉は、4回は三者凡退に抑えたものの、5回につかまる。
この回国士舘は、一死後3番佐藤慶季の四球、4番中尾 将の左前安打、5番西山裕貴の四球で満塁。6番杉岡拓はワンボールの後の2球目を逃さず中前安打で2人が還る。さらに続く忰田の中前安打で満塁とし、松本の内野ゴロの間にもう1点追加し、6対0と勝敗を決定づけた。
普通のチームなら、これでコールドゲームに向けて一直線となるところだが、2、3回戦の勝利で勢いに乗る工学院大附は、ここから反撃に転じる。
6回表先頭打者8番坂口太一が左前安打で出塁すると、9番豊泉のバントを国士舘の投手・四戸が処理して二塁に送球するも、これを落球。さらに暴投も重なって無死二、三塁。1番菊池賢士郎の内野ゴロの間に1点。2番田中飛呂の中前適時打でもう1点入り、4点差とした。しかし、反撃もここまであった。
6回裏国士舘は中尾の中前適時打で1点を追加。すると工学院大附のマウンドには、菊池が上がった。都立片倉戦では先発投手であり1番打者だった菊池は、この日1番中堅手として出場していた。
けれども菊池は8回裏、中尾の二塁打で1点を献上した後、続く西山にも中前適時打を許し、この回2点目。2対9でコールドゲームが成立した。
2、3回戦で大熱戦を演じた工学院大附は、最後は力尽きたといった感じだった。それでも西東京大会の前半を盛り上げた戦いぶりは、強く印象に残った。
一方国士舘は好投手・四戸に加え、打線にもスキがなく、盗塁など積極的に仕掛けてくる攻撃は圧巻だ。国士舘にしても早稲田実業にしても、力のあるチームがノーシードでいるだけに、5回戦以降も、激しい戦いが予想される。
(文=大島 裕史)