実践学園・尾林、丁寧な投球で完投、再試合を制する

 人工芝の明治神宮球場から内野は土のグラウンドである市営立川球場に、場所こそ変わったものの、12日に延長12回2対2の引き分けを受けて行われた再試合は、12日の試合に劣らぬ好試合だった。

 この日の試合も、12日と同じように実践学園が先攻、日体荏原が後攻。メンバーは実践学園が7番右翼手・奥友勇人に代わり5番右翼手として佐藤孔志が入り、12日5番だった関口方大は4番に、4番だった石橋英育は6番に、6番だった小林幹太は7番に入った。

 一方日体荏原は、8番二塁手の石川政明に代わって、2番二塁手として古川司盛が入り、2番だった保坂重頼は5番に、5番だった村越 将太は3番に、3番だった森村光は6番に、6番だった田中和麿は7番に、7番だった佐藤圭太は8番に入った。12日の試合では、チーム全体の19安打のうち、1番植松諒、4番関幸一郎、5番だった村越が各4安打の12安打を放っている。植松、関、村越をどう生かすかに重点が置かれたメンバー変更になった。

 先発投手は日体荏原が鈴木 健介、実践学園が尾林直幸と、両校とも12日の試合と同じであった。そして序盤の展開も、12日と同じように引き締まった展開になった。

 実践学園は2回表先頭打者の4番関口が中前安打で出塁するも無得点に終わると、日体荏原も2回裏に4番関が、3回裏には8番佐藤が先頭打者として安打で出塁したが、得点できなかった。

 実践学園の先発・尾林は、低めを丁寧に突く緩急をつけた投球で日体荏原打線を打ち取れば、日体荏原の鈴木も、12日よりややカーブが多かったような気がするが、力のあるストレートとスライダーで、実践学園打線を抑えた。

 この日均衡を破ったのは、実践学園の方だった。

 5回表一死後、6番石橋が左前安打で出塁。続く小林の遊ゴロで二塁に。二死二塁の場面で、8番下村雄二がバットにちょこんと合わせた打球が右前安打となり、石橋が一気にホームインして1点を先取。下村は二盗を成功させ、9番尾林はライト前に流して下村も生還した。実践学園は下位打線が足を絡めて貴重な2点を先取した。

 もちろん日体荏原も、このまま引き下がるわけにはいかない。6回裏一死後、この日スタメン起用された身長161センチの古川司は、レフト前に執念の流し打ちで、出塁。盗塁で二塁へ進み、この日2番から5番に代わった保坂が左前安打。二塁走者古川司は、俊足を飛ばして、一気に生還して、1点差に迫った。

 日体荏原にとって惜しまれるのは、8回裏の攻撃だ。一死後2番古川司は、三遊間を破る左前安打で出塁。3番村越がうまく流し打球は、レフトのラインのやや内側に落ちて二塁打になり、一死二、三塁の絶好機を迎えた。ここで4番関は一飛に倒れ、5番保坂は、尾林のスライダーかカットボールのような、小さく曲がるスピードボールに三振。チャンスを生かせなかった。

 それでも日体荏原は、9回表に一死一、三塁のピンチを迎えるが、少し飛び出した三塁走者を日体荏原の捕手・関が素早く牽制して刺すなど、9回裏の攻撃に望みをつないだ。

 しかしながら実践学園の尾林は、9回裏の日体荏原の攻撃を三者凡退に打ち取り、完投勝利を挙げた。

 試合終了後、両チームの選手は健闘をたたえる握手をし、2日に渡る熱戦は終わった。

 12日の試合では実践学園の5安打に対して、日体荏原は19安打と、得点はともに2でも、内容的には日体荏原が押していた。それに対してこの日は、実践学園が9安打、日体荏原が6安打と、内容面でも実践学園がややリードしていた。

 実践学園の一番のヒーローは、丁寧な投球でこの日は完投し、自らも適時打を打った尾林であるが、足を絡めて下位打線で2点を取るなど、チーム全体で勝ち取った勝利だった。もっとも、実践学園の次の対戦相手は、同じ中野区にある強豪の堀越。この日のように、一球を大事にする好試合を期待したい。

 一方日体荏原は、春季都大会を辞退するなど苦しい時期もあったようだが、伝統校らしく、鍛えられた好チームだった。特に2年生のエース・鈴木は、来年は東京を代表する好投手になる素質は十分にあるように思う。秋にまた、成長した姿を是非見たい。

(文=大島 裕史)