【レポート】ブラジルW杯 8Kパビリックビューイング観戦記 - 解像度も興奮もフルHDの16倍に!!
●8Kでサッカー中継に革命は起きるか6月14日、サッカー日本代表のW杯緒戦、筆者はNHKの「8Kスーパーハイビジョンパブリックビューイング」の会場で応援……、いや取材する機会に恵まれた。コートジボワール代表との試合は、残念な結果に終わってしまったが、解像度7,680×4,320ドットを誇るスーパー8K映像の迫力やいかに。
○8K映像による生中継を300インチ級の大画面で
NHKはFIFAと共同で、8Kスーパーハイビジョンによる「2014FIFA ワールドカップ ブラジル」のパブリックビューイングイベントを進行している。日本代表戦や決勝戦など最大9試合を生伝送して、22.2chの立体音響とともに300〜350インチの巨大スクリーンに投影するというものだ。
国内の会場は、横浜市の「イオンシネマ 港北ニュータウン」、東京都江東区の「芝浦工業大学 豊洲キャンパス」、大阪市北区のグランフロント大阪 ナレッジシアター、徳島市のときわホール(アスティとくしま)の4カ所。現地ブラジルでも開催されている。筆者は豊洲会場で観戦した。
○8Kでサッカー中継に革命は起きるか
さて今回、筆者も試合に没入して、日本代表を応援したいところだが、頭の片隅で映像をチェックすることを忘れてはならない (むしろそれがメインのミッションだ)。筆者は二つの点に注目しながら、戦いに臨んだ。
ひとつは8K映像の精細感、密度、奥行き感といった画質。もう一つは8Kならではのカメラワークだ。前者についてはサッカーでなくともすでにサンプル映像はあるが、後者については未知の部分。この試合はNHKにとっても8Kによるサッカー生中継の緒戦なのだ。
330インチの巨大スクリーンに現地レシフェ「アレナ ペルナンブーコ」の様子が映し出された。けっこう激しい雨が降っている。そして、ナイトゲームであることに今さらながら気づく。映像の精細感をアピールするにあたっては、最悪のコンディションといえるだろう。
スタジアムでスタメン紹介が終わった後に、会場のスクリーンには8Kのサンプルとしてブラジルの風景が数分流された。こちらは晴れた昼間の映像で、8K映像の精細さや奥行きの表現力が十分に伝わってくるものだった。
○観戦者が語る8Kの精細感と濃密感
キックオフの笛が鳴り、試合が始まった。最初に8Kの威力を感じたのは、5分・コートジボワールの10番ジェルビーニョ選手がアップになったときだ。ピタっと体に吸い付いたユニフォームににじむ汗の様子が見える見える。その後、本田選手の先制ゴールのスローリプレイでは、ボールがネットに当たった瞬間、雨粒がパッと弾け飛ぶ様子が明らかに。31分・日本の左サイド長友選手とジェルビーニョ選手の競り合いでは、二人の筋肉のスジから迫力が伝わってきた。
このように、「寄り」の映像では330インチの大画面でも高精細感を認識できるのだが、「引き」の映像ではあまり感じられない。前述のように悪天候と時間帯による影響があるかもしれないが、実はパブリックビューイング会場の記者席は、観覧席とは別のゾーン、スクリーンから離れた後方であった。
そこでハーフタイム、スクリーンと最適な距離で観戦した来場者の方々に感想を聞いてみた。みなさんが共通して語ったのは、8K映像の精細感と濃密感についてだ。フルHDの解像度は1,920×1,080ドットだが、4Kでは3,840×2,160ドット、8Kでは7,680×4,320ドットとなる。画素数にして、8KはフルHDの約16倍に及ぶ。画面が大きくなるほど、解像度の差が画質の差に直結してくる。
「あれだけの大画面で映像が破綻していないのはすごい。いつもスタジアムの前から3列目でJ2・栃木SCの試合をみているが、それと同じような感覚で試合に入り込めた」(栃木県・三森さん)。
「最前列に座り観戦したが、雨粒の一つひとつが見えて、やっぱりきれいだなと素直に感じた」(東京都・牟田口さん)。
「ものすごくきれい。大画面だけどボケることがなく、ひょっとすると現地で観戦するより、印象に残るシーンを見られたのでは。スピーカーの臨場感もすごかった」(静岡県・福島さん)。
また、三森さんや福島さんのコメントにみられるように、8K映像と22.2chの立体音響による臨場感についての評価も高かった。
●サッカーマニア注目、8Kならではのカメラワークは?○サッカーマニア注目、8Kならではのカメラワークは?
筆者にとってのもう一つの注目点、カメラワークについては事前に期待しすぎたのかもしれない。率直にいうと、"8Kならでは感"はとくになく、これまでの放送映像と大差のない内容であった。
筆者が期待していたのは、DFラインからFWまでフィールドの選手10人(相手も入れて20人)の動きを一つの画面で観られるような「引き」の映像だ。もちろん、迫力を味わえる「寄り」の映像もエキサイティングで面白い。だが、8Kの精細感であれば、フィールド選手すべてが30mの幅に収まるといわれるモダンサッカーのピッチ全体を俯瞰して、試合を楽しむことも十分に可能ではないだろうか。
W杯の8K撮影はまだ続く。マニアックな要望かもしれないが、残りの試合では、ボールの周囲だけでなく、引きの映像でボールと逆サイドのポジショニングや最前線の駆け引きを観るような映し方にも、ぜひトライしていただきたい。また、晴天のデーゲームで8Kの実力をいかんなく発揮した映像も堪能してみたいものだ。
なお、8Kパブリックビューイングの各会場では7月14日まで録画上映も行っている。事前申し込み不要で入場無料なので、興味のある方は体験してみてはいかがだろうか。録画上映の日程は、NHKのイベント情報ページから確認できる。
(阿部求己)