ブラジルW杯アジア最終予選で日本代表がオマーン戦から勝ち点3を奪い、いよいよ本大会出場に王手をかけた。

W杯予選は結果がすべて。ただ、グループ首位を独走し、本大会出場がほぼ確実な状況で迎えたこの一戦、僕は内容にもこだわってほしかった。オマーンを圧倒して、アジアのライバルたちに「もう日本にはかなわない」と思わせるようなサッカーを見せてほしかったんだ。

でも、残念ながら、満足できる内容には遠かった。前半20分に清武のゴールで先制したものの、前回の対戦では3-0で一蹴した相手に一度は追いつかれ、終了間際の岡崎のゴールでなんとか突き放した。よく勝ち点3を取れたなというのが率直な感想だ。

一番不満だったのはザッケローニ監督の采配だ。相変わらずの固定メンバーの起用、完全に引き分け狙いの消極的な選手交代と疑問だらけだよ。

あえて名前を出すけど、本田は全然よくなかった。ボールを簡単に奪われる。シュートを打っても枠内に飛ばない。走らない。誰が見てもいつもの本田のパフォーマンスじゃなかった。本人も自覚していただろうけど、前半45分間でベンチに下げられて当然のデキだった。また、本田ほどではないにしろ、ボランチの遠藤と長谷部も本調子ではなく、何度も相手にチャンスを与えていた。それなのに、ザッケローニ監督は彼らを90分間使い続けた。

その代わりにどんな選手交代をするのかと思えば、前線の選手(前田、清武)を下げて守備的ポジションの選手(酒井高、細貝)を入れ、本田や長友を1列前に上げた。勝ちにいく采配じゃないし、結果的に選手たちの勝ちたいという気持ちに助けられて決勝ゴールを奪えたものの、チャンスなんて数えるぐらいしかつくれなかった。チームとして機能していなかったね。

何よりベンチにいた攻撃的なポジションの選手たちがどう思ったか。あの状態の本田を90分間使い続けるなら、ベンチにいる中村はもうノーチャンスだよ。それは試合途中からの長友の2列目起用、本田の1トップ起用についてもいえる。乾(いぬい)や宇佐美、ハーフナーらは複雑な気持ちだったはず。彼らはそれほど信用できない選手なのかな。僕はそうは思わない。以前から指摘しているけど、ザッケローニ監督の選手起用、交代はあまりにも消極的で硬直化しているんだ。

振り返れば、今回のオマーン戦のメンバー発表の会見で、ザッケローニ監督は「若手が伸びていない」と原口、宮市らに苦言を呈していた。でも、僕に言わせれば、若手は試合に使わなければ伸びないし、原口も宮市も今まで何回も代表に呼んで、親善試合などで試すチャンスはいくらでもあったのにほとんど使ってこなかった。

代表はクラブと違うんだ。旬の選手を使う決断力がなければ、チームは活性化しない。選手を固定している今のままでは選手間の競争が生まれないから層も厚くならないし、個々のレベルも上がらない。これ以上のチーム力向上は難しいよ。

今は“結果オーライ”でみんな我慢しているけど、ちょっとしたきっかけで不満が爆発しかねないと心配だ。ザッケローニ監督はもっと若手にチャンスを与えるべきだし、ファンやメディアも、本当にザッケローニ監督でいいのかという議論をもっとしなければいけないね。

(構成/渡辺達也)