アブラモビッチが久しぶりに本気を出したチェルシーに注目だね

ヨーロッパ各国のリーグが開幕して、熱戦を繰り広げている。前回は香川(マンチェスター・U)の話だけで終わってしまったので、今回は香川以外の注目ポイントについて話そうか。

まず、選手個人。相変わらずメッシ(バルセロナ)、C・ロナウド(レアル・マドリード)といったビッグネームがすごいプレーを見せているけど、そろそろ彼らに取って代わる“怪物”の出現に期待したいところだね。

ただ、困ったことに、その候補があまり見当たらない。ロンドン五輪でインパクトを残した選手はいなかったし、これまで次々とタレントを生み出してきたアルゼンチンやオランダ、アフリカ勢も最近はパッとしない。現代サッカーはピッチ内外のあらゆる部分がシステマチックになっているけど、ひょっとすると、その弊害かもしれないね。ビッグクラブが有望な選手を世界中から青田買いして、“お手本”とするサッカーを叩き込む。だから、似たような選手ばかり育って、いかにもストリートサッカー育ちというような“規格外”のプレーをする選手が少なくなっているんだ。

そういう意味では、EURO(ヨーロッパ選手権)2012でブレイクしたバロテッリ(マンチェスター・C)の存在は貴重だし、頑張ってもらいたい。あとは、ロンドン五輪ではいまいちだったけど、ブラジルのネイマール(サントス)も早くヨーロッパでプレーしてほしいね。

続いては注目のチーム。開幕前の移籍市場ではビッグクラブが軒並みおとなしかった。そんななかで唯一、積極的な動きを見せたのが、昨季のチャンピオンズリーグ(CL)を制したチェルシーだ。

ドログバらCL優勝に貢献したベテランを放出し、香川より評価の高いアザールをはじめ、オスカール、マリンなどテクニシャン系の若手を次々と獲得。いったい、いくらお金を使ったんだろうね。(オーナーの)アブラモビッチが久しぶりに本気を出してきた。

今までのチェルシーといえば、フィジカルの強いパワフルなサッカーが売りだったけど、それをバルサみたいな華麗なパスサッカーに変えられるか。これまでのところ攻撃陣はかみ合っていて破壊力があるし、僕はかなり期待していいと思う。年末に日本で開催するクラブW杯ががぜん楽しみになってきたよ。

最後に、香川以外の日本人選手について。確かに人数は増えたけど、だからといって、それだけ日本のレベルが上がったと考えるのは間違い。選手もファンも、ヨーロッパに移籍するだけで満足してはいけない。試合に出て、アピールをして、より大きなクラブにステップアップできるか。特に攻撃的なポジションで、香川に続く選手の出現に期待したい。

個人的には清武(ニュルンベルク)が面白いと思う。同じトップ下の香川と比べると、清武は守備でもチームに貢献できる。(香川の前所属の)ドルトムントより格下のニュルンベルクでは守備をしなければ使ってもらえないから、チャンスはもらえるだろう。

ただ、清武はロンドン五輪でもそうだったけど、サイドに張ってのプレーが多いのが気になる。それではチャンスはつくれても、得点はあまり望めない。もっと意識的にペナルティエリア内に入っていって、ゴールにこだわってほしいね。

(構成/渡辺達也)