会場の様子。最終的には500人もの来場者があったそうです。中継用のテレビカメラなどが入っていました(このカメラのすぐ右で観戦していました)

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前回の将棋の記事を書いていていてもたってもいられなくなったので、本当に北九州は小倉まで名人戦第六局を観戦しに行ってきました! 2日目(13日(水))だけですけど!

というわけで、将棋の観戦というか、大盤解説会とはどんなものなのかをレビューしていきたいと思います。

今回見てきた名人戦は将棋のタイトル戦の中で最も歴史のある戦いで、制定されてから今年で400周年を迎えます。前は家元制だったのですが、現在は実力名人制となっております(詳しくは前回の記事を参照してください!)。そして、持ち時間が1人9時間で、2日制という将棋界で最も長い戦いが繰り広げられます。

今回見てきたのは、2日目の大盤解説会です。テレビの将棋番組などで、プロ棋士の方々がマグネットでひっつく大きな駒をぺたぺたはったりはがしたりしながら解説している姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。あれが、大盤解説です。今回は実際に対戦しているホテルニュータガワのホールで行われました。

ちなみに大盤解説をしているホールは3階で、2階に棋士の皆様の控え室がありました。控え室では棋士の方々が手の検討をしたり、休憩をされたりしています。インターネットで棋譜を公開するために入力するのも、この控え室で行われました。

ここからは時系列順にいきます。

名人戦は基本的に9:00から開始されていたのですが、大盤解説会は14:00からになります。今回はギリギリに到着したのですが、すでに200人もの観客が入っていました。そして、若い人はいるものの、基本的には年齢層が高い高い。お年を召された方がかなり多い印象です。

14:00に大盤解説がスタートし、まずは立会人でもある大内九段が解説、藤田女流初段が聞き手役で大盤解説がスタートしました。ここでは2日目のいまこのときまでの流れの解説を行います。

14:30からは三浦八段と豊島七段の解説に変わります。この二人は手の検討をメインに解説していました。つまり、実際にこう指された手はこの後このように進んでいくでしょうとか、こういう手に対しては何通りかの定石がありますというように、次から次へと手を進めていき、実際に対戦で手が指されるとまた戻って検討、のような解説です。

そして、15:15には「次の一手」当てクイズが出題されました。ここも、これは現在の局面から次に指される手は何でしょう? というのを当てるクイズです。15:30〆切で投票用紙に氏名と次の一手の予想を書き、投票箱に入れます。ただ、この時の手はあまりにも見え見えだったというか何というか……いいのかな? と思いながら、正解予想を書いて投票しました。

15:30からは10分間の休憩です。ちなみにこの時点で会場は300人を突破していた模様。冷房もがんがん効いているはずなのですが、熱気がすごいです。ホテル側もお水を用意してくれるていたのですがのどが渇きます。見ている側の平均年齢が高いので、休憩は必須ですね。

15:40からはBSプレミアムで放映される名人戦番組のリハーサルが行われました。この時に、吉岡アナウンサーからの挨拶中に「昨日は神奈川からいらしてくれた方がいました。今日、神奈川より遠いところから来た人はいらっしゃいますか?」ときたので、思わず手を挙げるとどうやら私しかいなかった模様。というわけでその後は「どこからいらっしゃいました?」とか「どちらを応援していますか?」と聞かれたりしていました(リハーサル中なのでオンエアはされていません)。ここで、7戦目まで見たいという理由から「羽生挑戦者を応援しています」と答えたりして。

16:00から始まる第六局のTV解説担当は橋本八段と佐藤紳哉六段です。この二人の解説はなんというかやばい! 写真を見てもらうとわかるのですが、佐藤六段はちょっとおでこが広い感じになっています。ところが、昨日の番組ではふさふさの状態で登場! これ、実は有名なカツラパフォーマンスなんです。対する橋本八段は「ハッシー」の愛称で呼ばれ、過去には金髪で対局していたりしたことでも有名です。佐藤六段のパフォーマンスに対し、Twitterで「佐藤六段が何かやったようですね。オレも何かやらなくては……」と将棋以外で対抗意識むき出しなコメントをしていたりもするのです。この二人の解説ですから、何も起きないわけがありません!

初日はふさふさで登場した佐藤六段に対し、桂馬(大盤では「桂」表記の駒)を取る時に「ここで『カツラ』をとります」と挑発する橋本八段。「いやいや。それはケイですよね。のりませんよ」と対抗する佐藤六段。始終そんな感じです。

そして二日目はカツラを取って自然体で登場した佐藤六段。アナウンサーさんにまで「昨日とはちょっと様子が違うようですが……」とツッコミを入れられていたりします。そのあとも「ここで『カツラ』を取りましょう」とか「『ハッシー』攻めですね。ここはさらに『ハッシー』で受けないと」とか、ひたすらネタを詰め込んだ(でもきちんと解説をしていた)2時間でした。この辺はBSプレミアムの番組で見た方もいるのじゃないかと思います。

そして18時に番組が終了すると同時に、対局も30分のおやつ(夕食?)休憩に。大盤解説も30分休憩に入りました。

18:30からは深浦九段解説と藤田女流初段が聞き手役で進行しました。まずは「次の一手」当てクイズの当選者発表からです。ここでびっくりすることが。今回は問題が簡単なものだったこともあり、正解者が160人以上いました。でも、何故か私に森内名人の色紙が、同行した友人に羽生二冠の色紙が当選したのです! やったー!

というわけで、この瞬間から森内名人を応援する側に傾いてしまいました。はい、アナウンサーさんに「羽生挑戦者を応援しています」と言ってからわずか3時間での鞍替えです。でもでも、色紙が当たったら応援しちゃうでしょう?

この時、対戦の局面はかなり難解で難解で。こうやったら詰むんじゃないか、いやこうなら詰まない、という感じにひたすら検討を続ける解説になりました。深浦九段も「普段はもっと色々と他の話をするのですが、局面が難解すぎて検討が追いつきません」というぐらい、お互いちょっと油断をするとすぐに逆転されてしまう危うい感じになっていました。

そして20:20に10分休憩を行い、そのまま休憩開けの20:32分頃に羽生挑戦者が投了。森内名人が防衛を果たしたのです。投了に至る手の直前、隣に座っていたおじいさまは「森内名人が水を3回立て続けに飲んだ。これは、読み切ったな」と言っていたのが印象的でした。さすが観戦慣れされている方は目が肥えています。

終局すると、お互い検討を行う感想戦が始まります。これが、テレビですとそれほど長くなさそうな印象だったのですが、実際には長い長い。1時間ぐらい色々な角度から検討をして、他の手は無かったのかといった研究をされていました。

感想戦は21:40に終了し、22:00からBSプレミアムの番組のリハーサルが始まります。こちらは13日の25:40から10分放送する、速報のような番組です。

ここで面白かったのは、前説で「みなさま拍手とかをいただくのは大変ありがたいのですが、この収録は深夜に放送されます。そこで盛り上がっていると大変まずいので、お気持ちだけはいただきますので、拍手とかはご遠慮願います」と言われたこと。さすがNHK。放送される時間帯で拍手を控えるとかがあるのですね。

そして森内名人が到着し、収録がスタート。全てが終了したのは22:20頃でした。実に長かったのですが、めちゃめちゃ面白い! 将棋ファンは行っても損をしないと思います。

行かれる時の注意としては、名人戦のような大きなタイトルの場合かなりの人数が集まる(今回は最終的に500人を超えていたようです)ので、水とかは用意をした方がいいということと、場合によっては立ち見になるということを覚悟した方がいいということです。また、長丁場になる可能性があるので、棋士の方々がおやつを食べるのと同じように、おやつを用意(会場内で食べていいかわからなかったので外に出て食べましたが)したりした方がいいと思います。実際、ほとんど座っていたはずなのにめちゃめちゃ疲れましたし、お腹が空きました。

でも、すっかりはまったので今後も機会があったら大盤解説には足を運びたいと思います。対局の会場でやっている大盤解説以外にも、各地で中継して行われているものもたくさんあるので、今後は足繁く通う予定です。みなさん、次の大盤解説でお会いいたしましょう。
(杉村 啓)