〈世帯年収1,300万円〉都心マンションを見送り“郊外一戸建て”を選んだ夫婦が、3年後に気づいた〈住宅選択の誤算〉
住宅購入は、多くの家庭にとって人生で最も大きな買い物の一つです。物件価格や住宅ローンの返済額に目が向きがちですが、実際の暮らしでは通勤時間や生活環境、維持費などさまざまな要素が生活に影響します。総務省『令和5年 住宅・土地統計調査』によると、日本の住宅の約6割は持ち家で、多くの世帯が住宅購入という選択をしています。物件の条件だけでなく、実際の生活との相性も重要です。
「都心マンション」か「郊外一戸建て」か
「最初は都心のマンションを買うつもりだったんです」
そう話すのは、首都圏で暮らす会社員の田村さん(仮名・43歳)です。妻(41歳)と小学生の子ども2人の4人家族で、世帯年収はおよそ1,300万円。数年前、子どもの成長に合わせて住宅購入を検討し始めました。
当初検討していたのは、都内の駅近マンションでした。しかし価格は7,000万円前後。広さもそれほど取れません。
「同じ予算なら、郊外なら庭付きの家が買えると言われたんです」
最終的に選んだのは、都心から電車で1時間ほど離れた郊外の新築一戸建てでした。価格は約5,000万円。敷地も広く、駐車場もあり、子どもがのびのび過ごせそうな環境でした。
「広い家に住めるのは魅力でしたし、子育てにはいい環境だと思いました」
引っ越した当初、家族の満足度は高かったといいます。子どもたちは庭で遊び、家の中も広くなりました。
しかし生活が落ち着くにつれ、少しずつ負担を感じる場面が出てきました。最も大きかったのが通勤です。
田村さんの勤務先は都内のオフィス街。郊外の自宅から会社までは、電車を乗り継いで約1時間40分かかります。
「往復すると3時間以上になります」
朝は6時台に家を出て、帰宅は夜9時前後になる日も珍しくありません。
総務省『社会生活基本調査』でも、通勤・通学時間は生活時間の大きな割合を占めることが示されています。住宅の立地は、日々の生活時間に大きく影響する要素でもあります。
「家は広くなりましたが、平日はほとんど家にいないんです」
そう苦笑します。
3年後に気づいた「住宅選択の誤算」
妻もまた、生活の変化を感じていました。
以前は駅前のマンションに住んでいたため、スーパーや病院は徒歩圏内でした。しかし引っ越し後は車が生活の中心になります。
「買い物も子どもの送迎も、ほとんど車です」
ガソリン代や自動車保険、車検など、車にかかる費用も家計に加わりました。
さらに戸建てならではの維持費もあります。庭の手入れや設備の交換など、マンションでは管理費に含まれていた部分を自分たちで対応する必要があります。
「家を買えば終わりだと思っていたんですが、実際は違いました」
購入から3年が過ぎた頃、給湯器の交換が必要になりました。費用は十数万円。大きな金額ではないものの、住宅ローンを払いながらの出費は想定以上だったといいます。
最近、田村さんはこう思うことがあるそうです。
「通勤時間はもう少し重視してもよかったかもしれません」
家そのものに不満があるわけではありません。子どもたちは広い家を気に入っていますし、近所の環境も落ち着いています。
ただ、生活全体で考えると、時間の負担は想像以上に大きかったといいます。
「平日は家にいる時間が少ないので、この広さを活かせているのかは考えることがあります」
国土交通省『住宅市場動向調査』でも、住宅取得は多くの世帯にとって大きなライフイベントであり、立地や価格などさまざまな要素を総合的に判断して決めていることが示されています。
「どの選択が正解だったのかは分かりません。ただ、家を選ぶときは物件だけじゃなくて、暮らし全体を想像することが大事なんだと思います」
住宅は長く暮らす場所です。だからこそ、広さや価格だけでなく、通勤や生活の利便性など、日々の暮らしに直結する条件も含めて考えることが重要になるのかもしれません。
