使い方によって毒にも薬にもなる生成AIだが…

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 コミックマーケットなどの同人誌即売会で欠かせなくなった存在といえば、コスプレイヤーである。今やコスプレは日本の文化として認知されており、海外にも愛好者が増加しているが、そんなコスプレイヤーの間で大きな問題になっているのが生成AIだ。

 SNSなどにUPされたコスプレ写真をもとに、生成AIを使ってヌード写真などの卑猥な画像を作成され、ネット上にばらまかれる被害が続出しているのだという。声優やアイドルも同様の被害に遭っており、生成AIに写真を読み込ませないようにと、警告を発する例もある。

 こうした被害は以前から少なからずあったが、昨年頃から問題が顕在化し、SNS上でも被害の声を上げるコスプレイヤーが増えた。その被害件数はデータこそないものの、相当な数になると思われている。実際に被害に遭ったコスプレイヤーA氏が、匿名で取材に応じてくれた。【文・取材=山内貴範】

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卑猥な画像がメールで送られてきた

――生成AIによって卑猥な画像を作られる被害に遭ったと伺っています。生成AIについて、Aさんは最初から否定的だったのでしょうか。

使い方によって毒にも薬にもなる生成AIだが…

A:いえ、はじめは、生成AIがそれほど危険なものだとは思っていませんでした。むしろ、生成AIを使って、自分の画像を“ジブリ風”に加工したりして遊んでいたくらいです。写真をもとに、アニメのフィギュアやアクリルスタンドのような画像を作ってくれる生成AIもありましたよね。

 私に限ったことではなく、コスプレイヤー界隈では、少し前までは生成AIに好意的でも否定的でもなかった人が多かったはずです。早くから危険だと思っていた人ももちろんいると思いますが、少なくとも私の周りでは、面白いツールだなという感じで遊んでいる人が多かったですね。

――そうした生成AIについて、認識が変わったきっかけはあるのですか。

A:ある人が私にメールで、画像データを送ってきたんです。同人誌即売会で撮影してくださった方が写真を送ってくださることはよくあるので、どんな写真かなと思ってファイルを開いたら、愕然としてしまいました。コスプレをした私が卑猥なポーズをとった画像だったのです……。枚数にして100枚以上でした。

 びっくりして、この画像をどこで手に入れたのかと、返信してしまいました。そしたら、 “僕が生成AIを使って作成したんですよ”と自慢げに言い、“毎晩楽しんでいます”とも言ってきたのです。ぞっとしました。こんなことをされたのは初めて。怒りや、辛さや、とにかく様々な気持ちが錯綜してしまい、その日は眠ることができませんでした。

際どい写真をUPしすぎた

――Aさんの周りのコスプレイヤーには、同様の被害に遭った人はいるのでしょうか。

A:なかなか声を上げにくいのかもしれませんが、今のところいないようです。なんで私が……という思いがありますが、ただ、私も反省しないといけない点があります。私は結構、際どい衣装を着て、やはり際どいポーズの写真を撮影してもらって、これまで何度もSNSにUPしてきましたから。

 そのせいか、実際に撮影をしているカメラマンから、“エッチなことが好きなのか”といった卑猥な質問をされることがありました。あくまでも私はキャラクターが好きで、原作に忠実な衣装を着ていただけなのですが、露出度が高いのは事実。冷静な目で見ると、勘違いをしてしまう人がいても仕方ないのかなと思っています。

――SNSに際どい写真を載せているコスプレイヤーはたくさんいますね。そういった写真を撮影してもらうのは、なぜなのでしょうか。

A:はっきり言って、“いいね”ほしさ、フォロワーほしさが理由になっていると思うんですよ。私の場合も承認欲求が原因だったと思います。最近のコスプレはとにかくみなさんレベルが上がっていますし、コスプレイヤーはみんなかわいいんですよ。だから、普通の写真ではなかなか認めてもらいにくくなっているといいますか……。

 ただ、こういう話をすると、“そんなことを思っているのはあなただけだ”と怒られるかもしれません。でも、おっしゃるように、SNSに際どい写真を載せているコスプレイヤーが多いのは事実ですし、絶対に狙っていると思うんですよね。検索するといくらでも出てきますから。私も、ストッパーが効かなくなっていた面があるのかもしれません。

被害に遭わないと恐ろしさはわからない

――とはいえ、あくまでもそれはそれで、生成AIによる被害とは別物ですよね。

A:そうですね。ただ、私は生成AIについて危機意識が甘かった。この点は反省したいです。声優さんやイラストレーターさんが、“NO MORE 無断生成AI”と訴えていた時も、他人事だと思っていましたからね。自分が被害に遭わないと、生成AIの恐ろしさはわからないと思います。

 おそらく、撮影した画像を加工せずにUPしているコスプレイヤーは、ほとんどいないのではないでしょうか。顔をレタッチしたり、背景をぼかしたりと、画像の補正や調整はみんな行っています。生成AIについても、そういった便利で面白いツールだと思っていました。

――著名人の画像を使ったディープフェイクなども問題になっています。

A:私は無名のコスプレイヤーですから(編集部注:というものの、Xのフォロワーは10万人近い)、卑猥な画像をばらまかれたり、商業利用される可能性は低いのかもしれませんが……。有名なコスプレイヤーやアイドル、声優のみなさんは生成AIで画像や映像を製作され、販売される可能性だってあると思うんですよ。

 私は金銭的な被害に遭っているわけではないので、訴えることは難しいかもしれません。しかし、生成AIに画像を作られたせいで、精神面で不調になっている人はいるのではないでしょうか。児童ポルノを作成される心配だってありますよね。

 コスプレイヤーはプロとして活躍している人もいますが、ほとんどの人が一般人で、楽しみながらやっていると思います。せっかくこんなに盛り上がっているんですから、少しでも被害に遭う人がいなくなってほしい。そして、被害が大々的になる前に、何らかの対策は必要だと思います。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部