『おむすび』写真提供=NHK

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 9月30日より始まったNHK連続テレビ小説『おむすび』。本作は平成元年に生まれた主人公・米田結(橋本環奈)がギャルとして自分らしく生き、やがて栄養士を目指す物語だが、なぜか野球ファンの間で話題となっている。

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 というのも、ホークスファンの祖父・永吉(松平健)がいる米田家のお茶の間では常にプロ野球中継が流れており、実際の試合映像が使用されているからだ。中でも注目を集めたのが、第2話で描かれた米田家の夕食シーン。テレビでは、福岡ダイエーホークス対千葉ロッテマリーンズの試合が展開されており、スコアが0対6になった時点で永吉は「カーッ! また打たれた!」と激怒し、息子の聖人(北村有起哉)にテレビを消させた。

 しばらく経って試合の行方が気になったのか、再びテレビをつけさせた永吉だったが、ホークスは再びロッテに得点を許す。これには永吉も呆れ、「もう、よか! 今日でホークスファンばやめじゃ!」と匙を投げたかと思いきや、「今日でファンばやめるけえ、これで見納めたい」とそのまま試合を見続けていた。

 SNSでは、野球ファンの描き方について解像度が高いと話題に。子供の頃、試合の展開に文句をつけている父親や祖父に「そんなにイライラするなら見なきゃいいのに……」と思ったことがある人は多いのではないだろうか。また、テレビでは当時の王貞治監督の姿も映し出され、永吉が結に「ここだけの話、王さんに一本足で打ちんしゃったほうがよかばいって勧めたのは俺たい」とホラを吹いていたが、選手の育ての親を自称しがちなのも野球ファンあるあるだ。

 第6話では対日本ハムファイターズの試合が展開されており、ホークスの松中信彦選手が満塁ホームランを放つも、結に電話中の聖人が邪魔になって大事な瞬間を見逃してしまった永吉。「なしてテレビの前でやるとか! 嫌がらせしとっとか!」と怒っていたが、このシーンも野球ファンから共感の声を集めていた。

 そんな野球ファン注目の人物・永吉を演じる松平健は、中日ドラゴンズの本拠地である愛知県出身。2008年には自身が主演を務めた『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)をイメージした歌詞が入っている中日ドラゴンズの応援歌「燃えよドラゴンズ! 2008」を歌い、8年後の2015年には4代目球団歌「昇竜 -いざゆけ ドラゴンズ-」の歌唱にも抜擢されている。そういうこともあってか、野球との縁が深く、TBS日曜劇場『下剋上球児』では三重県一の野球強豪校として知られる星葉高校の野球部監督・賀門英助を好演。威厳と貫禄に満ちた監督像で視聴者を圧倒した。

 ほかにも同作からは、主人公・南雲脩司(鈴木亮平)が指導する越山高校野球部の3年主将・日沖誠を演じた菅生新樹と、夏の甲子園三重県予選の初戦相手である五十鈴高校の投手・椎野陽大を演じた松本怜生が『おむすび』に出演。松本が本作で演じるのは結が憧れている書道部の先輩・風見亮介だが、菅生は今回も高校球児役で、結の幼なじみ・古賀陽太を演じている。今週は陽太が所属する糸島東高校野球部と、第1話で結が出会った四ツ木翔也(佐野勇斗)が所属する福岡西高校野球部の試合が描かれるようだ。

 ちなみに本作で野球指導を務めるのは、ダイエーホークスにも1年在籍していたことがある元プロ野球選手の山崎慎太郎。実は2021年度後期の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』でも山崎は野球指導に入っており、深津絵里、村上虹郎、青木柚らキャストの美しいフォームにも視線が集まっていた。ギャル指導にも元『egg』のカリスマギャル・Rumi(ルミリンゴ)を起用するなど、細部にわたってリアリティにこだわっている本作。野球の試合シーンにもよく目を凝らしてみると、さらに物語を楽しめそうだ。(文=苫とり子)