橋本環奈(写真=遥南碧)

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 NHK連続テレビ小説『おむすび』が9月30日からスタートする。朝ドラ第111作目となる本作の舞台は平成と令和。主人公・米田結は平成元年生まれ。すでに“懐かしい”ものとなっている平成を、結の姿を通して一体どう描いていくのか。すでに“ギャル姿”で放送前からインパクトを放っている結を演じるのは橋本環奈。『紅白歌合戦』(NHK総合)での名司会ぶりも記憶に新しい橋本が、“朝の顔”として日本中にどんな姿を見せてくれるのか。朝ドラヒロインとしての決意を放送を前に聞いた。

参考:『おむすび』橋本環奈を中心に米田家集合の“おむすび”ビジュアル TAKAHIROが振付を担当

●「ギャルって素敵だなと日に日に思っています」

ーー第1週の舞台は福岡県・糸島です。主演を務める朝ドラの舞台のひとつが、橋本さんの地元でもある福岡というのは特別な思いがありましたか?

橋本環奈(以下、橋本):本当にうれしかったです。学生の頃に友人と遊んでいた場所がロケ地にもなっていたり、懐かしいなと感じるとともに楽しいですね。ただ、あまりにも地元モードになりすぎて、方言のまましゃべってしまうときもあるので、視聴者の皆さんが違和感を覚えないように標準語も混ぜるようにしています。撮影では、糸島の皆さんが本当に温かく、たくさんの協力をしてくださっています。お芝居も皆さん慣れているのか上手なんです(笑)。本当にありがたいですし、感謝しています。

ーー本作では1995年の阪神・淡路大震災も描かれます。橋本さんは演じるにあたってどんな準備をされたのでしょうか?

橋本:2011年の東日本大震災のときも福岡に住んでいたので、私自身はこれまで大きな震災を経験したことがありません。実際に被災された方々が多くいる中で、同じ気持ちになることは出来ないですし、軽々に震災をわかったフリは絶対にしたくないと思いました。監督・スタッフの皆さんとたくさん話をして、当時の資料を調べることはもちろん、被災者の方々に直接お話も聞きました。ただ、私が演じる結は、阪神・淡路大震災の時は6歳。実際に被災時に6歳だった方にもお話を聞いたのですが、なんとなく、焦げた匂いを感じていたとか、周りのみんなが悲しい顔をしていたとかうっすらと覚えてるぐらいで、友達と避難所に集まって一緒に寝たり生活するのも最初は楽しいと思ってしまったとも語られていて。個人個人違うと思いますが子どもだったら実際にそういう思いもあると思うんです。結として、記憶の中にある震災をどう受け止めているかというのは本当に難しいなと感じています。実際に被災に遭われた方が本作を観て当時を思い出し、辛い思いをしてほしくないと思う一方で、嘘を描きたくない気持ちもあります。被災された方に寄り添うことは大事なのですが、憐れんでほしいと思ってもいらっしゃらないとは思うので、その点は本当に丁寧に作品を作り上げていかなければいけないと思っています。

ーーそして、制作発表当時から話題となっていたのが本作が“ギャル”を描くという点です。

橋本:世代も違いますが、身近にギャルがいなかったので、ギャルに対しての情報がほとんどなかったんです。ギャルピースだったり、髪が明るい、メイクが濃いとか、見た目の部分をなんとなく知っているぐらいで。でも、実際に演じてみてわかったのは、ギャルにとって重要なのは見た目ではなく、心意気、マインドなんだなと。「好きなものに一直線、周りの目を気にしない」「周りに何を言われても好きなことをとことんやる」「仲間を大事にするし、絶対に裏切らない」。なんて素敵なんだろうと思いました。ヘアメイクも気持ちを盛り上げるという部分で大切なんだなと。ギャルって素敵だなと日に日に思っています。

ーー橋本さんのギャル姿も先行して公開されていますが、ギャルメイクやパラパラなどは実際にしてみていかがでしたか?

橋本:パラパラはすごく楽しかったです。糸島の皆さんがエキストラとして参加してくださっているのですが、最初は戸惑いもありましたけど、最後には皆さんノリノリで(笑)。ギャルメイクは、チョコレートぐらいのファンデーションを塗って、つけまつ毛をつけて、口に油を塗っているんじゃないかと思うぐらいの口紅も塗って、本当に自分ではなくなっていました(笑)。劇中では、お父さん(北村有起哉)がその現場に来て、「結はどこだ?」って眼の前にいるのに探す展開があるんです。台本を読んでいて「さすがにそれはないでしょう」と話していたんですが、実際にパラパラのイベントの日に来れなかった父に写真を送ったら「誰?」と(笑)。台本もリアルでした。

ーーギャルメイクはかなり時間がかかったのでは?

橋本:あんなメイクを普段はしないので、すごく時間がかかりました。でも、みりちゃむ(ハギャレン(博多ギャル連合)の総代表・ルーリー役)がいてくれたので、メイクの仕方もいろいろとアドバイスしくれて。本物のギャルがいると違うなと(笑)。泊まり込みの撮影だったこともあり、ハギャレン(みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、 田村芽実)のみんなとはすごく仲良くなりました。

ーー橋本さん自身の中には“ギャル魂”はありましたか?

橋本:「仲間を大事にする」という点は、私自身もずっと持っている部分かもしれません。友達は本当に大事だし、一番の味方でいたいというのはずっと思っていました。高校の時からお仕事もさせていただいたので、なかなか学校に行けないときもあったのですが、友達が本当に支えてくれて。板書したノートを貸してくれたり、何か賞を獲ったときは黒板にサプライズで寄せ書きのメッセージを書いてくれたり。本当に恵まれていたんです。周囲のみんなにも大切にされていたからこそ、自分自身のことも大切にしたいと思いました。その点では高校生のときのマインドは“ギャル”と言えるものだったかもしれません。

●脚本・根本ノンジの描く人物は「本当にみんな愛くるしい」

ーー根本ノンジさんの脚本の魅力はどんな点にあると感じていますか?

橋本:テンポ感が素晴らしくて、台本を読んでいても「早く次が読みたい!」といつも思っています。特に大好きなのが、米田家の会話シーンです。みんなキャラクターが濃くて、みんな愛おしいのですが、特に松平健さんが演じるお祖父ちゃんが本当にナイスキャラで。こんなお祖父ちゃんがいたら最高だなって皆さん思うと思います。ずっとニコニコしているお祖父ちゃんで、温かい! そして、そんなお祖父ちゃんと反対とも言える生真面目なお父さんを(北村)有起哉さんが演じていてまた魅力的で。お母さんもおばあちゃんもノンジさんが描くキャラクターは本当にみんな愛くるしい。序盤の糸島編のエピソードは素敵なものばかりなのですが、結を演じていても迷うことが本当にないんです。結がなぜそう思ったのか、そう言ったのか、そう行動したのかが、作り込もうとせずともスッと分かる。いろんな感情が丁寧に描かれていて本当にすごいなと思います。

ーーそして、放送前から話題になっているのが、仲里依紗さんが伝説のギャルでもある結の姉・歩を演じるという点です。

橋本:結と歩の最初の撮影シーンがギスギスしている関係だったので、(仲)里依紗さんも私もどう声をかけていいのかと探り探りの感じだったんです。でも、仲睦まじくなってからは前室でもずっと一緒にいて、本当に他愛もないお話をずっとしています。とにかく話が面白くて、里依紗さんは本当に“ギャル”といいますか、とっても素敵なんです。現場でも誰に対しても分け隔てなく接していて、尊敬することばかりで。もともと大好きな方だったのですが、一緒にお芝居をして、ますます好きになりました。お姉ちゃんとして、結に寄り添ってくれる姿にとてもグッときています。

ーー本作は朝ドラ第111作目となります。最後に「1」にちなんで橋本さんが一番大事にしていることを教えてください。

橋本:健康ですかね。朝ドラバトンタッチセレモニーで伊藤(沙莉)さんもお話されていたんですが、1年間撮影をしていくには、心と身体が健康じゃないと成り立たないと。私は自分で自分の機嫌を取りたいので、とにかく我慢をしないということは大事にしています。もちろん、お仕事なので好きなことだけをやっていればいいというわけではないですが、できるだけ仕事もプライベートも楽しくしたい。それは心がけていることですね。

ーーまさに“ギャル魂”ですね。

橋本:好きなことを貫いているという意味ではそうかもしれないですね(笑)。

(文=石井達也)