かつてストロング系缶チューハイを1日10缶飲んでいた筆者。毎月、ストロング系だけで驚くほどの金額を支出、最終的には「いいクルマが買える金額」を、ストロング系だけで費やしていたという(筆者撮影)

ストロング系1日10缶男、禁酒3年目に突入

先日、電気グルーヴの35周年コンサート「3594」に行った。彼らを見たのは、まだ「ウィズコロナ」というお触れで、観客は声援を上げられなかった2022年の「SONICMANIA」以来、2年ぶりである。ということは、筆者の断酒期間も2年が経ち、3年目に突入したということだ。

「東洋経済オンライン」というマジメなニュースサイトに寄稿した、筆者のアルコール依存症日記「『ストロング系』毎日10缶飲んでた私に起きた異変 悪いのはお酒か、自分の弱さか、コロナか…」を読んだことのある人はすでにご存じだろうが、2年前までの筆者は1日10缶はストロング系缶チューハイ(以下、ストロング系)を飲んでいた。つまり、朝から晩まで酒浸りである。このときまだ30歳にもなっていない。

なぜ、冒頭で電気グルーヴの話をしたのか? 筆者が最後に酒を飲んだのが、その日だったからだ。幕張メッセでドリンクチケットをレモンサワーに交換して1杯飲み、朝方、最寄駅に着いてから、夜ふかししたせいでギンギンに冴えてしまった体を眠らせるため、ストロング系を一気に4缶飲み干した。そして、その日の晩から、睡眠導入剤をラムネのように口に放り込み、それらをノンアルコール飲料4缶分で流し込んで眠る日々に変わった。

【画像5枚】ストロング系「1日10缶男」の驚きの"出費事情"はこんな感じ

先立って公開した記事「1缶298円『未来のレモンサワー』脱安値化の適否 100円台のRTD市場に、アサヒの新戦力は定着?」でも指摘しているが、ストロング系の台頭は「安い」からにほかならない。

しかし、飲む量も桁が違うと、ストロング系のせいで生活が困窮してしまう可能性もある。そこで、本稿では筆者がアルコール依存症時代にどれほど、ストロング系に金を費やしてきたのかを振り返っていきたい。

大学時代は月に1万〜2万円程度の出費だった

酒と出会うこととなる大学に通っていた当時の筆者は学費、家賃、光熱費は両親に出してもらう「激甘生活」を送っていたため、高額な出費はない。そして、卒業論文用に持っていた書籍や海外旅行代など、多額の金が必要なときは、マンガ喫茶で週に5回、1日9時間アルバイトして扶養から外れない程度に稼いでいたと思う。

しかし、文学部に通っていたため、貯金の仕方を理解しておらず、口座はだいたい1000円切っていた。そして、銀行口座というのは1000円以下だと出金ができないのである。そのため、現金は常に枯渇していた。仮に小銭がたくさんあればブックオフ、高円寺、神保町に行って、数百円の古本、CD、レコードをリュックサックに入るだけ購入してしまうため、部屋が好きなコレクションで溢れて喜んでいても、ずっと腹は空いていた。

また、酒に関していうと筆者が学生だった2010年代中盤、ストロングゼロはすでに存在していたが、実は学生の間でそこまで飲まれていなかった。宅飲みで調達される酒といえば、もっぱら第三のビールか発泡酒、サントリーの「ほろよい」、そしてモルソン・クアーズ・ジャパン(現在は白鶴酒造)の「ZIMA」だった。これが当時は「若者の酒」として親しまれていたのだ。

確かにZIMAはうまい酒ではあったが、アルコール度数は4.5%だったため、すぐに酔うことができない。前出の350ml缶のストロング系のアルコール度数は低くても7%のため、その力の差は歴然である。あと、200円は超えていたと思う。

そのため、筆者はZIMAに興味を持たずにビール、発泡酒、第三のビールばかりを飲んでいた。しかし、自分がかなり酒に強い体質でいくら飲んでも酔わないことを知る。そして、酔っていないと卒業や就職など将来への不安にさいなまれていき、徐々に飲酒量が増えていく。そうなってくると、「ビールもどき」を2〜3缶飲んだところで、次第に酔うことができなくなってきたため、「500円以下」で「出来上がることのできる」酒を模索した。

瓶ビールの大瓶、ペットボトルに入った焼酎のミニボトルを2本、あるいは業務用スーパーで買った謎のウイスキー……。結果、700円程度でアルコール度数37.5%の韓国のギルビーというメーカーの350mlのウォッカを2日に分けて、ラッパ飲みするようになった。

当時は寝坊のために朝食は食べず、昼は300円くらいの学食、夜はコンビニかオリジンで500円以下の弁当を購入していたため、食費に驚くほどの金は使っていなかった。

そして、大学生はなにかあれば飲み会、宅飲み、コンパである。いくら、食べ飲み放題3000円でも震えるような金額だったため、元を取るために金の蔵でも浴びるようにビールもどきを飲んだ(余談だが、金の蔵は今、都内で池袋の1店舗を残すのみになっている)。

結果、大学生の頃からすっかり大酒飲みだ。しかし、就職活動をしていた時期は本当に飲まないと夜は不安で眠れないほどだった。なぜか、酒飲みは将来を心配しがちなくせに、体を壊す量のアルコールを摂取するのである。

社会人になると酒代で生活が逼迫するように…

とはいえ、大学生の稼ぎなんてタカがしれている。本格的に酒で月々の飲食代が圧迫され始めたのは、ストロング系を飲み始めた社会人中盤からだ。

無事に希望していた仕事に就けたものの、あまりの激務で仕事が終わって深夜に帰ったらアルコールを過剰摂取しなければ、ストレスで腹の中がチクチクしていた。それをYouTubeで海外のハードロックバンドのロックフェスの動画を見ながら、アルコール度数の強いストロング系と、タールの重いタバコ、カロリー山盛りの濃口の弁当を口にすることで気持ちを落ち着かせていたのである。

怒られたことも、嫌なことも、お酒を飲んでちゅーっとタバコを吸って、ドカ食い気絶すれば、翌日目が覚めたときには、ボンヤリとしか昨日のことを覚えていない。これこそ、ストロング系を語るときによく使われる「現実逃避のための酒」に近いわけだが、別にストロング系以外の酒でも代用はできた。

ただ、ストロング系は安いから、毎日安心して買えるのだ。ストロング系を一気に何本も煽ることで、「1日が終わる」と実感することができるのだ。

その一方で、いくらストロング系は1缶200円くらい(500ml缶)とはいえ、それを毎日5缶も飲んでいれば1000円近くなる。1日1000円が30日のため、1カ月で3万円はストロング系に使っていたということだ。

月に3万円を超え、最終的には毎月7万円かかるように…

このように、毎日1000円、1カ月では3万円程度を酒に費やすようになった筆者だったが、家で飲んでいる分にはこれ以上金のかかる心配はない。

しかし、これが居酒屋になると、もう手に負えない。家とは違って記憶を飛ばさずに、最後まで楽しんでいられるためにビール、レモンサワー、カシスオレンジを飲むのだ。これらはアルコール度数の低い酒のため、いくら飲んでも酔うことはない。その分、金はかかるが、なんとかして割り勘に持ち込む。


一番上の12杯が筆者が飲んだ分(友人は生ビール2杯)。なお「BreakingNEWS」は筆者が個人的にSNSに投稿するためにした加工で、本コラムには関係がない(筆者撮影)

そして、飲み会が終わると、家に帰っていつもより1缶少なめに、ストロング系を4缶買って飲んでいた。その前に居酒屋にて、ビールをジョッキで5杯は飲んでいるが、それはノーカウントである。というのも、居酒屋で飲んでいる2〜3時間の間に体内から徐々にアルコールは抜けていると思ったからだ。発想がアルコール依存症のそれである。

そして、当然の顛末だが、そんな飲み方を6年も続けていると、完全にアルコール依存症となり、ついには連続飲酒状態に陥ってしまった。つまり、太陽が昇っているうちから酒を飲むようになり、1日にストロング系を10缶飲むような生活になってしまったのだ。

こうなると月の酒代(※外食費を除く)は単純計算で倍の金額なので、7万円近くなる。ウイスキーやらワインやら高い酒を飲んでいないのに、である。リビングにはストロング系の缶がゴロゴロ転がっていた。毎週、空き缶回収の日に捨てているのだが、1回で出す缶の量が尋常ではなかった。

そして、連続飲酒状態に陥ってしまうと、食事を取れなくなる。というのも、胃や食道が荒れているのと、常に酒を飲んでいるため、吐き気とお腹がたぷたぷで食欲がないのだ。深夜、松屋で目玉焼きとポテトサラダを頼む。もはや、それくらいしか体が受け付けなかった。柔らかいもの……だけど、油っぽいものとソーセージ程度の肉は食べたいのだ。

もう、ここまで来ると、さっさとストロング系を飲まなければいいだけの話だが、前出のようにビールは何杯飲んでも酔えない。また、ウイスキーやカップ焼酎を外で飲むのはさすがに気が引けた。筆者も倫理観は持ち合わせている。当然のことだが、人に迷惑をかけるような飲み方はしないように心がけている。その分、就業中に隠れてストロング系を飲んではいたが。

しかし、飯はまともに食わず、酒だけで毎月7万円の出費だ。30歳にもなるのに貯金はゼロ。むしろクレジットカードの負債だけがたまり、ほぼ借金状態。家でも外でも飲んだ結果、社会人になってからのわずか6年程度で、少なく見積もっても400万〜500万円以上を酒に費やしてきたのだから、当然そうなる。いいクルマが買えた金額だ。さすがに、詰んでいるな。

γ-GTPが正常値の60倍に

案の定、それまでの暴飲暴食が祟ってしまい、健康診断で「γ-GTP 2410(通常は40〜60)」と血糖値の値である「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」は6.0%(正常値4.6〜6.2%)となり、糖尿病予備軍にもなってしまった。


戒めとして、今でもX(旧ツイッター)のヘッダーに使っている(筆者撮影)

「正常値は6.2%ということは、まだ救いがあるのでは?」と思われるかもしれないが、6.0%を超えた時点で糖尿病の可能性が否定できなくなるのだ。しかも、まだ29歳のときである。

アルコール依存症はしょうがないにしても、糖尿病に関しては「家系(かけい)の問題だから」と家族に説明したが、烈火のごとく怒鳴り散らされた。それはそうだ。明らかに原因は自分にあることは、もちろんわかっている。

ちなみに、なぜわざわざ「家系(かけい)」とカッコ内に読み方を入れたかというと、この当時、友人にLINEで「絶対に家系のせいだって」と文章を送ったところ、「お前、毎日濃い味のラーメンばかりを食べていたら、それは糖尿病になるよ」と、横浜家系ラーメンなどの「家系(いえけい)」に間違われたからだ。今回も読み方を書かないと、余計な心配を読者にされてしまう。

断酒後も、ノンアル代で月に何万円も支出…

こうして、冒頭の話に戻るが、2022年にSONICMANIAと家に帰るまでに最後の酒を飲み干して、ぴたりとアルコールをやめた。


仕事柄飲み会の機会も多いが、ノンアルコールを貫いている(筆者撮影)

あれから2年。一滴も酒を飲んでいない。先日の電気グルーヴのコンサートでもドリンクチケットは、レッドブルと交換してサッと飲んで、スタンド席に入る前にゴミ箱に捨てた。

おかげで、γ-GTPもHbA1cも平均値に戻ったが、やはり腹が水分でたぷたぷでないと、夜は眠れない。そのため、今でも毎晩ノンアルコール飲料を就寝前に5缶飲み干すようになったのだから、出費の面からするとあまり大差ない。

また、かつては日中でもストロング系を飲んでいたが、それが今は2リットル分の炭酸水に変わったため、少しは安くなったが、そもそもストロング系自体が安いので、これもそんなに変わっていない気がする。水を飲めという話だが、少しでもあの頃に飲んでいたものに近い炭酸がほしいのだ。


アルコール依存から、現在は糖質依存気味に。毎晩、ノンアル缶を積んで1日を終えている(筆者撮影)

ところが、今度は断酒したことによる"弊害"が、筆者の体に現れるようになったのである。(後編:「ストロング系1日10缶男」断酒後に体に起きた事 アルコールから離れても、一件落着とはならずに… に続きます)

(千駄木 雄大 : 編集者/ライター)