「無意識の自己批判」で傷つくのをやめよう…自分を自分で励ます方法「セルフ・コンパッション」
周囲から求められる高い期待に届かず、自己批判を繰り返してしまうリーダーは多い。そんな自己批判から脱却する方法を、Googleなどのグローバル企業が取り入れるメンタルケア法「セルフ・コンパッション」を日本に広め、『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』を上梓した若杉忠弘氏が、前編に続いて解説する。
落ち込んだ友人をどのように励ますか
前編でもお伝えしたとおり、私たちは無意識に自分自身に対して、批判的な言葉を浴びせていることがあります。
ですが、大切な友人や同僚が落ち込んでいるときには、批判したり、責めたりはしないはずです。寄り添い、理解を示し、やさしく励ましの言葉をかけるでしょう。
そのやさしさを、自分自身に向けてあげることを、セルフ・コンパッションといいます。
セルフ・コンパッションのアプローチを取り入れることで、ストレスが減り、不安も減ります。そして、幸福感が高まり、仕事にも熱中できるようになるなど、事態が好転していくのです。
では、どうしたらセルフ・コンパッションを実践できるのでしょうか。難しいことはありません。
みなさんは、すでに大切な友人にはやさしさを向けることができますから、そこから学べばよいのです。
たとえば、みなさんの大切な友人が、あるプロジェクトを率いていて、求められていた結果が出せず、落ち込んでいます。みなさんは、次の3つのステップを踏み、友人をやさしく励ますはずです。
セルフ・コンパッションの3つのステップ
(1) 友人が落ち込んでいることに気づきます。友人の状況を理解し、つらい気持ちを受け止めます。
(2) みなさんも仕事がうまくいかないつらさを知っているので、「それはつらいよね」と、友人とのつながりを感じます。
(3) そんなつながりを感じるからこそ、友人のことをおもんぱかり、心からやさしさと励ましの言葉をかけることができます。
セルフ・コンパッションは、友人に対して行ったこの3つのポイントを自分に行うことなのです。つまり、次のとおりです。
(1) 自分がつらいということに気づき、バランスの取れた見方をします。これをマインドフルネスといいます。マインドフルネスとは、「今に気づく」という意味です。
(2) 次に、誰でもつらい経験をすることを思い出します。これを共通の人間性といいます。
(3) そして、最後に、自分にやさしさと励ましの言葉をかけます。これを自分へのやさしさといいます。
無意識の自己批判から脱却するために
セルフ・コンパッションの特徴は、マインドフルネス、共通の人間性、自分へのやさしさの3つです。
私たちが自己批判するときは、この3つができていません。下図に示したように、セルフ・コンパッションの逆さまを行ってしまうのです。
まず、ネガティブな感情に飲み込まれてしまいます。次に、こんなつらい思いをしていることを誰も理解してくれないと孤独感を抱きます。さらに、「自分はダメだ」と追い打ちをかけるように、自分を厳しく批判してしまうのです。
自己批判を続けるということは、みなさん自身が、自分の言動を24時間見張り、よくないことがあれば、すかさず厳しい突っ込みを入れているのです。
みなさんは、いつもビクビクと萎縮し、不安を感じて生活することになります。自信をなくします。新しいことに挑戦することもなくなります。
これでは、いいリーダーになるのは難しいですね。自己批判から脱却する方法として、セルフ・コンパッションが生きてくるのです。
私自身も、セルフ・コンパッションのアプローチによって回復し、救われていく経験をしました。ぜひみなさんも、ストレスや不安を減らし、仕事に熱中できるよう、セルフ・コンパッションを取り入れてみてください。