AI技術向上の弊害!?人気女子アナの「下着合成画像ポスター」がネットオークションで売られていた

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「アイコラ」という言葉を覚えているだろうか。

アイコラのアイはAIのアイではなくアイドルのアイで、コラはコラージュのコラ。アイドルの顔と別人の水着や裸の画像の首から下の部分を組み合わせた写真のことを示した造語だ。日本で’90年代初めに急増し、世間を騒がせた。そのいわば”最新アイコラ技術”というべき手法を使って作られた人気女子アナの画像が、つい最近、大手ネットオークションサイトで販売されていた。

民放テレビ局の人気女子アナのアイコラ画像

画像の存在に気づいたのは8月上旬のことだった。商品名は「A(編集部注:実際のサイトでは実在する女性アナウンサーの名前) 超美人アナウンサー ニットランジェリーA1サイズ・ポスター」で価格は「現在3000円 即決7500円 送料東京は880円」となっている。セクシーランジェリーを身につけたAが写った画像ポスターが少なくとも4点販売されていたのだ。

もちろん一目でアイコラ画像とわかるが、昔に比べかなり精巧に作られている。この画像は8月下旬になってもそのままネットオークションで販売され続けていた。

「AI技術を駆使して作られるこれらの画像は『ディープフェイク画像』と呼ばれ、つい先日、アメリカの女子高生が何気なくSNSに上げた思い出の写真や卒業アルバムが、裸の画像に加工されバラまかれるという事件がNHKのニュースで報じられています。

韓国では、SNSなどで公開されていた知人や学校の同級生など身近な女性の顔写真をもとに偽の性的な画像などが作成され、それらが通信アプリ『テレグラム』で共有、拡散されるという事件が多発しています」(全国紙社会部記者)

実は、こういった技術が生まれる前から合成写真はあったが、その多くは写真を切り抜いて張り合わせ、それをまた撮影したような粗雑なものだった。しかしパソコンが普及して写真編集ソフトが安価で手に入るようになると、素人でも簡単にアイコラが作成できるようになった。

またインターネットが普及すると、アイドルだけでなく女優やスポーツ選手などのアイコラ写真をネットに投稿する輩が増え、これは著作権、肖像権の侵害や芸能人のイメージを損なうとして業務妨害の可能性も指摘された。アイコラは社会問題化していったのだ。だが、芸能人サイドも黙っていたわけではない。

「アイコラでも買う人がいる」

’07年9月、地方局の女性アナウンサーが同社ホームページから取得した彼女の顔写真を用いたアイコラによる虚偽の記事を掲載した雑誌社を名誉毀損と著作権法違反の疑いで大阪府警に刑事告訴している。

アイコラを公開することが犯罪行為に当たると指摘されるようになって久しく、現在はアイコラで商売する者はいないだろうと思われていたのだが、大手ネットオークションサイトでアイコラポスターが堂々と売られているのには驚くしかない。

今回の画像もすぐにアイコラだと判断できるが、ポスターとして販売されているこのアイコラ画像を購入する者は多いという。

「買う人はアイコラだとわかって買っています。たとえフェイクでも清楚な女子アナがありえない姿をしていることがマニアにはたまらないのでしょう」(前出・編集者)

この状況をAが勤務するテレビ局は把握しているのだろうか。問い合わせてみるとやはり気づいていなかったようで、早急に対策をするようだ。そして、このような回答を得た。

「違法な画像や動画に対しましてはこれまでも削除要請など必要な措置を取って参りました。今後も、このような画像、動画に対しては厳しい姿勢で臨む方針です」

9月中旬の段階で確認してみると、ネットオークションサイトに同ポスターの販売ページは無くなっていた。同テレビ局が販売者に対し削除要請したと思われる。「弁護士法人・響」の古藤由佳弁護士はこのように解説する。

300万回以上再生されているものも

「AI画像は、元データをもとに生成された新しい画像なので、例えば複数の元データをもとに生成された画像が実在の人物に似ていた場合には元データとなった方と当該AI画像との同一性や関連性が問題になる場合があります。しかし、本件では画像が当該女子アナのものであるとして販売されているので、仮にAI画像であったとしても、同一性や関連性については問題ないものとします。

この前提で、画像や写真に写った本人が望まない画像を作成し、それを公開する行為はそのご本人に対する名誉毀損となります。今回のような、下着姿や水着姿は、プライベート性の高いものですし、性的な画像ともいえますので、仮に公開の許可を求められても、ご本人は公開を望まなかった可能性は十分にあります。

本件と似たもので、例えば、『ディープフェイク』をつかって、出演者の顔を有名芸能人の顔に替えたアダルトビデオ動画を公開したサイト管理者が名誉毀損容疑で逮捕された事件があります(’20年11月、動画をインターネットにアップしたとして、警視庁と千葉県警がシステムエンジニアと大学生を逮捕している)。

また、元データとなった写真を撮影した方は、元データに対する著作権を持っているので、著作権者に無断で、これを使用した場合には、著作権者に対する著作権侵害にもなります」(「弁護士法人・響」の古藤由佳弁護士)

では、被害者が被害届を出した場合、どのような捜査が行われ、どういった罪名がつき、どれくらいの罪状となるのか。

「上記のように、元データのご本人に対しては名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立しますので 3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。どれくらいの数の商品を売ったのか、写真の内容(過激さ)により、どの程度被害者の名誉が傷つけられたと言えるか等により 量刑は異なりますので、現時点で量刑の見通しについては不明です」(前出・古藤弁護士)

ポルノ動画サイトでは、日本人女優やアイドルのディープフェイクの動画があり、300万回以上再生されているものもある。ネット上には今でも多くの女性芸能人のディープフェイクが公開されているという。

販売目的はもちろんだが、面白半分でアイコラを作成し、ネット上で公開することも犯罪行為に当たると知っておくべきだ。

取材・分:佐々木博之(芸能ジャーナリスト)