「梅毒」の勢い衰えず パパ活・マッチングアプリが感染爆発の一因に

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東京都医師会は2024年9月10日の定例記者会見で、性感染症梅毒が都内で感染拡大していることについて注意を呼びかけました。この内容について中路医師に伺いました。

≫【イラスト解説】「梅毒」は女性・男性で症状が違うことはご存じですか?

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

東京都医師会による注意喚起の内容とは?

東京都医師会が定例会見でおこなった注意喚起の内容について教えてください。

中路先生

今回取り上げるニュースは、東京都医師会が都内で定期的におこなっている会見で言及された内容が元になっています。会見の中で、東京都医師会の疾病対策を担当する川上一恵理事から、「今、梅毒の感染者数は増えています。先日来、エムポックスの感染者数も増加していて、性感染症はとても注意しなければいけない病気」と性感染症、特に梅毒の感染者数が増えていることに対して警鐘を鳴らしました。川上理事は、梅毒の感染が増えている現状について、「梅毒に関しては男女関係なく、女性は20~30代、男性は20~50代までに幅広く感染が広がっている点が問題。性風俗産業に従事している人に限られているわけでもなく、ごく一般の家庭の主婦の方たちにも広がってきている。東京都としても無料検査を実施するなど、いろいろと考えられる対策は取っているけれども抑えられていない」と述べています。
また、川上理事は妊娠女性への梅毒感染で生じる問題として、「梅毒には先天梅毒といってお母さんのお腹の中で感染し、生まれながらにして梅毒の影響を受ける赤ちゃんも増えてきている。そういった意味でも全力で対処していかなければいけないと思っている」と警戒感を示しました。
その上で、川上理事は、「梅毒の場合はきちんと診断して、治ったことを確認できるまで医師の指示通りお薬を使えば治る病気。そういった意味で一般の方々への啓発を進める以外に方法はない。私どもも東京都と協力して、啓発のポスターを掲示するなどの展開をおこなっているが、できればマスコミの方々からの報道や若い人たちに影響のある方法など、みんなで協力して啓発する以外にないのではないか」と啓蒙活動の必要性を訴えました。

梅毒とは?

東京都医師会が警鐘を鳴らした梅毒について、どのような病気か教えてください。

中路先生

梅毒という病気は、他人の粘膜や皮膚と直接接触するなどの性的な接触によってうつる感染症です。梅毒トレポネーマという病原菌が原因で、症状として出てくる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることが病名は由来しています。梅毒に感染したかどうかは医師による診察と、血液検査(抗体検査)で判断します。感染が明らかになった時の一般的な治療方法としては、外来で処方された抗菌薬を内服することになります。内服期間などはステージによって異なるので医師が判断することになります。病変した部位によっては入院のうえ、点滴で抗菌薬の治療を行うこともあります。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。晩期顕性梅毒という感染後数年たった状態になると死亡することもあります。

パパ活・マッチングアプリの影響は?

今回おこなわれた会見では、梅毒の感染者の年齢について、女性は20~30代、男性は20~50代と言及されています。女性の方が若い年齢に集中しているように感じますが、何か原因になることは想定できるでしょうか? マッチングアプリを活用した、いわゆるパパ活が影響している面はあるでしょうか?

中路先生

女性の方が男性より若い年齢層に梅毒の患者数が多い理由は現時点ではっきり分かっていませんが、やはりこれまでの性風俗産業を介した感染に加え、より経済的弱者である若年女性の間にアプリやSNSなどで中高年男性と直接やりとりして性的サービスを提供し金銭を得る「パパ活」が広まっていることが原因の一つとして考えられます。また、この様な場合はお互いに性感染症の検査をしているかどうかの確認が困難で、気がつかないうちに梅毒感染症を広げている可能性が考えられます。今後は、特に若年女性に対して「パパ活」などでの不特定多数の男性との性交渉のリスクについてメディアなどを通じて改めて啓蒙していく必要があると思われます。

まとめ

東京都医師会は2024年9月10日の定例記者会見で、性感染症梅毒が都内で感染拡大していることについて注意を呼びかけました。梅毒は治療すれば治る病気なので、少しでも梅毒の可能性が疑われることがあれば、医師の診断を受けるようにしましょう。

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