<大相撲九月場所>◇十二日目◇19日◇東京・両国国技館

 全勝街道を突き進んでいた関脇・大の里(二所ノ関)についに土がついた。“待った”をかけたのは大怪我を乗り越えて復活した前頭七枚目・若隆景(荒汐)。意地を見せた若隆景の激勝に「鳥肌」「相撲も男前」とファンは歓喜し、伊勢ヶ濱親方も「よう粘ったっすね」と賛辞を送った。

【映像】何度もピンチをしのぎ大逆転の若隆景

 所要9場所という異例のスピードでの大関昇進へ王手をかけた“怪物”の前に、かつて大関候補の呼び声も高かった実力者が立ちはだかった。今場所、初日から破竹の11連勝を遂げてきた大の里。昨年、2年連続アマチュア横綱の実績を引っ提げて鳴り物入りで角界入りし、同五月場所で初土俵を踏んだばかりの若武者は、早くも幕内優勝争いを牽引する存在に成長した。

 新三役に昇進した今年五月場所で12勝を挙げ幕内最高優勝を手にすると、先場所も9勝を挙げて殊勲勝を獲得。今場所は初日から無傷の11連勝を遂げ、これで大関昇進目安とされる“三役で3場所33勝”まで残り星ひとつと迫っていた。まだ大銀杏も結えない大の里が大関昇進を果たすとなれば、初土俵から所要9場所という、羽黒山、豊山、雅山の12場所を大きく塗り替える史上最速の記録となる。

 そんな怪物に“待った”をかけたのが、幕内最高優勝経験者の若隆景だ。かつて7場所連続で関脇の地位を守り、“大関に最も近い男”とも呼ばれた若隆景だったが、怪我による休場のため幕下まで陥落。昨年十一月場所から復帰すると順調に番付を駆け上がり、幕下全勝優勝、14勝での十両優勝を経て、再入幕を果たした先場所では2ケタ11勝の活躍を見せた。今場所はここまで3敗を喫するもすでに勝ち越しを決めており、まだ逆転優勝の可能性が残されている。

 初顔合わせとなる一番。立ち合いもろ手で当たった大の里が圧力をかけて一気に出るも、土俵際で耐えてもろ差しに組んだ若隆景。若隆景に押し返された大の里は、苦しい体勢から強引にねじ伏せようとするも通用せず。最後は再び土俵際で粘った若隆景がもろ差しからうっちゃるように体を入れ替えて寄り切って勝利した。白熱した攻防に観客は大いに沸き、決着がつくと館内が拍手で包まれた。勝った若隆景は9勝目を挙げ逆転優勝の望みをつないだ。惜しくも敗れた大の里は今場所初黒星となる1敗目を喫した。

 取組を受け、ABEMAで解説を務めた元横綱・旭富士の伊勢ヶ濱親方は「立ち合い若隆景が速かった」と指摘。続けて「(大の里も)一気に来たんですけどね。(若隆景は)左に入って、右に入って、もろ差しになって。よく残しましたね」と振り返りつつ「いや〜、よう粘ったっすね」と若隆景を絶賛した。一方、大の里について「おっつけながら下からまわしを取りにいけばよかった」「押しながらまわしを取らなきゃいかんですね」とアドバイスも送っていた。

 大の里の快進撃を若隆景が止めた一番に、ファンからも「鳥肌」「相撲も男前」「見事すぎた」「こんな相撲はなかなか見られない」「カッコ良すぎる歴史的技術」「素晴らしい」「バランス感覚凄いわ」「感動しちゃうよ」と興奮の声が相次いで寄せられた。

 なお、十二日目の全取組を終え、幕内優勝争いは1敗を喫したものの大の里が引き続き単独トップ。2敗で関脇・霧島(音羽山)と前頭十五枚目・高安(田子ノ浦)、3敗で若隆景と前頭十三枚目・錦木(伊勢ノ海)が追いかける展開となった。大の里は2度目の幕内最高優勝、そして史上最速の大関昇進へ向けて残り三日に賭けることになる。(ABEMA/大相撲チャンネル)