「日本にミサイルが配備される…」米国の知られざる「思惑」に愕然「フィリピンの次は…」

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知らぬ間に「米国のミサイル基地」と化していた日本

日本にとっての「最悪のシナリオ」とは?

政府による巧妙な「ウソ」とは一体…?

国際情勢が混迷を極める「いま」、知っておきたい日米安全保障の「衝撃の裏側」が、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』で明らかになる。

※本記事は布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』から抜粋・編集したものです。

米軍が開発中の地上発射型中距離ミサイル

前章で紹介したCSBAの海洋圧力戦略に関する報告書でも、地上発射型中距離ミサイルによる「陸上攻撃作戦」が、第一列島線沿いでの地対艦ミサイルによる「海上拒否作戦」や地対空ミサイルによる「航空拒否作戦」、サイバー攻撃などで敵の情報、指揮・統制ネットワークを破壊・攪乱する「情報拒否作戦」と併せて主要作戦に位置付けられています。

同レポートは、米国が新たに開発する地上発射型中距離ミサイルを「(高価なため)大規模な一斉射撃を行うのに必ずしも費用対効果が高いとは言えないが、地上の航空機、ミサイル発射機、集結した部隊、港湾内の主力艦、重要な指揮・統制、情報通信関連の施設など一刻を争う標的を迅速に攻撃するには、かなりの価値がある」と評価しています。

現在、米軍が開発を進めている地上発射型中距離ミサイルは、次の3種類です。

(1)長距離極超音速兵器(LRHW:Long-Range Hypersonic Weapon)

弾道ミサイルのようにロケットで打ち上げた後、滑空体(HGV)が切り離され、変則的な軌道を極超音速(音速の5倍以上)で飛翔しながら目標に向かうミサイル(射程2775キロ以上)。通称、「ダーク・イーグル」。

(2)中距離能力(MRC:Mid-Range Capability)

海軍が運用するトマホーク対地巡航ミサイルとSM6ミサイルを地上から発射するタイプ(射程は、トマホークが約1600キロ、SM6が約370キロと推定)。2023年、このシステムを使ってトマホークとSM6の発射試験に成功した。通称、「タイフォン」。

(3)精密打撃ミサイル(PrSM:The Precision Strike Missile)

陸軍の高機動ロケット砲システム「HIMARS」から発射する弾道ミサイルで、INF全廃条約の破棄前に開発が始まったため当初の射程は499キロの計画だった65  第2章 中距離ミサイルがもたらす危機が、破棄後は500キロ以上に変更。初期タイプは対地攻撃用だが、射程1000キロ級の対艦攻撃も可能な能力向上型も開発する。米陸軍だけでなく、オーストラリア陸軍も調達予定。通称、「プリズム」。

このほか、海兵隊も地上発射型トマホークを導入します。2023年7月には、カリフォルニア州のキャンプ・ペンドルトンを拠点とする第十一海兵連隊にトマホークを運用する長距離ミサイル中隊が新編されました。

日本への配備の可能性は?

「はじめに」で述べたように、米太平洋陸軍の司令官は、2024年中に地上発射型中距離ミサイルをアジア太平洋地域に配備すると明言しました。

日本も、その有力な候補地の一つです。

なぜなら、中距離ミサイルを中国本土に届かせるためには日本かフィリピンに持ってくる以外の選択肢はないからです。

米国領土で中国に最も近いのはグアムですが、射程の最も長いLRHWでも中国本土には届きません(グアムから中国本土に届かせるには3000キロ以上の射程が必要)。そうなると展開先は必然的に、同盟国である日本かフィリピンになります。

CSBAの海洋圧力戦略に関するレポートも、「この種の移動式(ミサイル)システムはルソン島、ミンダナオ島、パラワン島、沖縄本島、九州などの大きな島々に配置することができる」と記しています。

2021年7月8日の朝日新聞朝刊は、この問題を取り上げて、匿名ですが米国防総省関係者の以下のコメントを紹介しています。

「軍事作戦上の観点から言えば、北海道から東北、九州、南西諸島まで日本全土のあらゆる地域に配備したいのが本音だ。中距離ミサイルを日本全土に分散配置できれば、中国は狙い撃ちしにくくなる」

しかし、配備先の地元からの反発など、政治的ハードルの高さから、「恒久的配備ではなく、米軍がグアムに配備し、訓練やローテーションで日本に一時配備する案が軸になるのではないか」との外務省幹部の見立ても紹介しています。

中距離ミサイル、フィリピンにはすでに…

2024年4月、米陸軍はトマホークやSM6ミサイルを発射できる地上発射型中距離ミサイルシステム「タイフォン」を初めてフィリピンに展開しました。

展開は、米陸軍とフィリピン陸軍の共同訓練「サラクニブ」の一環として行われました。タイフォンの移動式ミサイル発射機は、ワシントン州ルイス・マコード統合基地からルソン島北部のフィリピン軍基地までの約1万3000キロを、米空軍のC17輸送機で15時間かけて輸送されました。

米太平洋陸軍は公式ウェブサイトで「この画期的な展開はフィリピン軍と連携して相互運用性、即応性、防衛能力を強化し、新たな能力の重要なマイルストーンになるだろう」と発表しました。

恒久的配備か訓練での一時展開かは別にして、いずれ日本にもタイフォンがやって来るでしょう。

米陸軍が開発中の3種類の地上発射型中距離ミサイルは、いずれも「マルチドメイン・タスクフォース(MDTF)」という部隊が運用する予定です。

マルチドメイン・タスクフォースは、敵のA2/AD能力を無力化して自軍の戦域へのアクセスを確保することを任務とする陸軍の新しい部隊です。

2017年に、最初の部隊(第一マルチドメイン・タスクフォース)がルイス・マコード統合基地に新編されました。同部隊は2018年から毎年日本に展開して、自衛隊との共同訓練に参加しています。

米陸軍は2022年、ハワイにもマルチドメイン・タスクフォースを新編しました。米陸軍はさらにもう一つ、インド太平洋地域に新編する計画です。

米国のウォーマス陸軍長官は2023年6月、マルチドメイン・タスクフォースの配備について日本政府と協議していることを明らかにしました。

米陸軍が2024年2月に公表した戦力構造の再編に関する白書(Army White Paper: ArmyForce Structure Transformation)に気になる一文があります。

同盟国との協議が進むにつれて、陸軍は抑止力強化のため、マルチドメイン効果大隊や長距離火力大隊などMDTFの部隊を恒久的に前方駐留させることになるだろう。

地上発射型中距離ミサイルを運用する「長距離火力大隊」をはじめ、米陸軍がマルチドメイン・タスクフォースの部隊を日本に配備したいと考えているのは間違いありません。

>>つづく「「ミサイル開発」水面下で進める政府…まさかの配備先に愕然「知らなきゃよかった…」」では、米国のあとにつづく形で進行する日本政府の「ミサイル開発」の実態を明らかにします。

「ミサイル開発」水面下で進める政府…まさかの配備先に愕然「知らなきゃよかった…」