(※写真はイメージです/PIXTA)

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将来を見据えた資産運用が必須といわれている昨今。一方で「投資をしたことがない」という人も半数近くにのぼります。低収入の若年層だと「元手になる資金がない」という理由で、投資したくも投資できないというジレンマを抱えている場合も。しかし、そこで起死回生を狙うと、とんでもない事態に直面するケースもあるようです。

投資をしない理由…6割が「知識がない」、4割が「元手になる資金がない」

株式会社FreeLifeConsultingが全国の20〜40代の男女に対して行った投資に関するアンケート調査によると、投資経験がある人は全体の51.4%。投資をする理由としては「長期的にお金を増やしたい」が69.8%で圧倒的に多く、将来を見据えて投資に取り組んでいることがわかります。一方で、「短期的にお金を増やしたい」が35.6%と3割強。このなかには、長期視点と短期視点の両方を持っている人もいれば、短期視点で一気に資産を築き上げようとする、ギャンブル的な投資を行っている人もいるでしょう。

【投資をする理由は?】

・長期的にお金を増やしたい…69.8%

・短期的にお金を増やしたい…35.6%

・配当金が欲しい…31.1%

・経済や金融を学びたい…29.6%

・株主優待が欲しい…26.3%

・なんとなく…5.1%

一方で、投資をしたことのない人にその理由を尋ねたところ、圧倒的に多かったのが「知識がない」で64.4%。「元手になる資金がない」42.8%、「減ること(元本割れ)が嫌」30.9%、「投資のイメージが悪い」15.6%、「なんとなく」12.1%、「預金だけで十分」4.5%でした。

現在実家暮らしだという中山祐樹さん(仮名・31歳)の場合は「元手になる資金がない」を理由に投資に対して二の足を踏んでいた人のひとり。話を聞くと、出身は一流私大。同級生が金融やコンサルティングなど、業界的にも高給な会社を選ぶなか、山中さんは学生の頃のボランティア経験から、福祉業界へと進んだといいます。

――同級生と比べると、業界的に給与は劣る。それを承知のうえで、やりがいを優先して就職先を決めました

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマン(正社員、平均年齢42.6歳)の平均給与は月収で40.8万円、年収で673.7万円。中山さんと同じ30代前半では、月収で32.6万円、年収で549.4万円が平均値です。対して、中山さんが活躍する「医療・福祉業界」では、平均月収33.2万円、平均月収526.5万円。全平均は下回るものの、突出して低いというわけではありません。しかし中山さんは……

――初めて勤めた会社は、初任給が20万円。そのあと28歳まで働いたけど、給料はほとんど変わりませんでした

その後、同じ業界に転職。給与は月収26万円(転職時)になったものの、2つ目の会社でも3年。いまだに28万円と、大卒平均はもちろん、業界全体からも大きく下回ります。

――同級生からも「会社選びが下手」とバカにされる始末で

低収入で結婚ができません…そのとき目に入った「SNS広告」が悲劇の始まり

手取りにすると22万円ほど。しかもその頃、今のように実家暮らしではなく、都内で1人暮らしをしていたとか。

――毎月、必要最低限の出費だけでもカツカツでした

東京で必死に頑張る中山さんでしたが、さらなる悲劇が襲います。厚生労働省の調査によると、平均初婚年齢は男性で31.3歳、女性は29.7歳。ちょうど大学の同級生が次々と結婚していく頃。中山さんも交際歴3年の彼女がいて、そろそろ自分も……というタイミングでした。しかし

――手取り22万円だと、経済的に結婚を考えるには不安で

彼女の焦る気持ちから「短期的に儲ける方法はないか……」と追い込まれるようになったという中山さん。そこで目に留まったのが「今がチャンス!」というSNS広告。短期間で大金を稼げるという情報商材でした。総額200万円。どうでしょう、みなさんなら買うでしょうか。しっかりと見極める必要がありますが、通常であれば訝しく思うもの。しかし、追い詰められ、起死回生を狙っていた山中さん「正常な判断ができなかった」と振り返ります。

藁にもすがる思いで購入を即断したものの、購入するお金がありません。そこで利用したのが、消費者金融。「お金を稼いで、すぐに返済する!」と短絡的に考えたといいますが、ここからは負のスパイラル。情報商材を200万円で購入→でも1円も儲からない→借りたお金を返せない→膨らみ続ける借金……。

――もう無理だ!

助けを求めたのは実家の両親。

――それはそれは修羅場でした

あれほど激怒する親をみたことはないと振り返る中山さん。それでも両親は息子のピンチを救ってくれたといいます。

中山さんはその後、都内で1人暮らししていたアパートを引き払い、実家に舞い戻り。通勤で片道1時間半かかりますが、実家暮らしで出費を抑えているといいます。

――結婚はまだ当分先。それまで彼女が待ってくれるかどうか

消費者庁『令和4年版消費者白書』によると、若者(15〜29歳)の情報商材に関する消費商談件数は、「2017年」1,002件→「2018年」1,753件→「2019年」2,496件→「2020年」3,022件→「2021年」4,088件と急増。もちろん情報商材のすべてが悪いモノではありませんが、一部、詐欺にも近いようなモノで、多額の借金だけ抱えてしまうような事例が増えています。

冒頭にあるように、投資は長期で考えるのが基本で、短期的に儲けるのはプロでも難しいことです。「こんなのに引っかかるなんて……」と思いつつも、切羽詰まったときには正常な判断ができなくなるもの。このようなトラブルに直面し、人生を棒に振らぬよう、気を付けたいものです。

[参考資料]

株式会社FreeLifeConsulting『投資に関するアンケート調査』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

厚生労働省『令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)』

消費者庁『令和4年版消費者白書』