J_News_photo - stock.adobe.com

写真拡大

 中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
アパマンショップ」を運営するAPAMANが、株式の非公開化を目指すTOB(公開買付)を実施すると発表しました。これはMBO(経営陣による買収)と呼ばれるもの。APAMANはこの非上場化を機に子会社を整理し、新たな組織体制を構築する見込みです。

◆「賃貸住宅仲介業店舗数No.1」企業の正体

 賃貸住宅を探した経験のある人であれば、「アパマンショップ」に足を運んだ人やホームぺージの賃貸物件情報を目にしたことがあるでしょう。公式ホームページには、「賃貸住宅仲介業店舗数No.1」とあります。公開物件数は240万を超えており、賃貸住宅の仲介会社としてよく知られた存在です。

 ただし、APAMANは仲介をするだけの会社ではありません。物件のオーナーから管理の委託を受けて入居者を集め、集金、滞納督促、清掃、保守、契約更新業務など賃貸住宅の煩雑な管理業務全般を行っています。従って、入居者からは仲介手数料、オーナーからは管理手数料を徴収する仕組み。これは一般的な賃貸管理事業者が行っていることと同じです。

アパマンショップ」は9割以上がフランチャイズ加盟店で運営されています。APAMANは加盟店に対してクラウドシステムや店舗運営ノウハウを提供し、加盟料やロイヤリティも受け取っています。

◆業績は堅調も、成長性に欠ける

 また、賃貸住宅だけでなく、社宅や駐車場なども扱っています。

 展開する事業は3つ。賃貸管理の手数料収入を中心としたPlatform事業、FC加盟店のロイヤリティやクラウドサービス利用料のTechnology事業、コインパーキングなどのその他です。

 足元の業績は決して悪い会社ではありません。2024年9月期第3四半期の売上高は、前年同期間比0.6%減の340億円、営業利益は同28億円でした。今期は通期の売上高を前期比0.5%増の460億円、営業利益は同3.8%増の39億円と予想しています。

 コロナ禍の営業制限で2020年9月期の営業利益率が1.9%まで低下したものの、その後持ちなおしました。営業利益率は3期連続4%台で推移する見込みです。

 しかし、成長性があるかというと話は別。今期が予想通りに着地しても、3期連続の売上平均成長率は1%ほど。売上高は8期連続400億円台で停滞することになります。

◆管理戸数は「1年で2000近く減少」

 売上高が伸び悩んでいる主要因になっているのが、賃貸管理戸数の減少。2024年6月末時点の管理戸数は8万8260。前年から1842も減少しました。

 賃貸住宅の管理業務は差別化を図りづらく、価格競争に陥りがち。

 管理の依頼を受けるのは、ローンの出し手である金融機関や不動産物件の購入先の紹介といったケースが多く、必然的に信頼が厚い大手が有利にもなります。事実、この分野の最大手である大東建託は、2024年3月末時点の管理戸数が125万。1年で3万戸上乗せしています。

 しかも、日本銀行が金利を引き上げたことで、不動産投資の冷え込みも予想されます。賃貸物件への投資意欲が減退すれば、更なる管理戸数減少も視野に入るのです。中堅の賃貸管理事業者には逆風が吹いていると言えるでしょう。

◆子会社の再編で「事業の選択と集中」を狙う

 今回のAPAMANのMBOには大きな特徴があります。子会社の再編を行うのです。

 賃貸管理や駐車場などに関連する事業の大部分を、日本産業推進機構という投資ファンドに売却します。日本産業推進機構は独立系のPEファンド。過去にマンガ雑誌などを手掛けるぶんか社の買収、鴨川グランドホテルの非上場化の支援などを行ってきました。