大人数をマネジメント。どうすればいいのでしょうか(写真: Graphs / PIXTA)

会社のチームをどう切り盛りすればいいかは、ビジネスリーダーにとっての「永遠の課題」です。とくにチームメンバーの数が多い場合、彼らのモチベーションを維持し、目指す方向性をコントロールするマネジメント業務は困難を極めます。NECでリーダーとして1000人規模のプロジェクトを何度も率いた経験を持ち、現在ではコンサルタントに転身した五十嵐剛氏の著書『結果を出すチームのリーダーがやっていること』から一部を抜粋・再編集し、マネジメントのコツを紹介します。

直接の指示はしないがチーム全員の声は拾う

前回の記事(「1000人規模を上手に管理する」たった1つのコツ)で、リーダーが直接指示をするメンバーは7人までにすべきだと説明しました。

「ということは、リーダーはその7人としか話をしないの? ほかのメンバーとはコミュニケーションを取らないの?」などと疑問に思われた方もいるかもしれません。

もちろん私は、リーダーは7人以外のメンバーと完全に話をしないようにすべきだ、などと極端なことを言っているわけではありません。

リーダーが直接指示をするのは直属の7人だけにすべきですが、それとは別に、チームの構成メンバーとは適度にコミュニケーションを取ったほうがよいでしょう。

ただし、直接指示をする7人のメンバー以外と話をするときには、リーダーは少し注意をしなくてはなりません。

直接それらのメンバーの誰かを呼び出して、現場の詳しい話を聞く……。一見、職場でよく見られる状況に感じますが、このような「直属のサブリーダー(=中間管理職)を飛び越えたコミュニケーション」は、基本的に避けたほうがよいでしょう。

直属ではないメンバーを呼び出すときには、そのメンバーのリーダーに当たる直属のサブリーダーも同時に呼び出し、一緒に話を聞くようにしてください。

面倒に感じられるかもしれませんが、指揮系統の階層を飛び越えて、階層が下のメンバーを個別に呼び出す行為自体に、組織では「特別な意味」が生じてしまうからです。

叱責を受けていると感じるメンバーも

リーダーは単にちょっとしたコミュニケーションを取っているつもりでも、呼び出された当人は叱責を受けていると感じることがありますし、言葉尻を捉えて「直接の指示を受けた」と考えることもあります。特別扱いされていると感じるメンバーもいるでしょう。

呼び出された当人や、その周囲のメンバーは、何かその人がまずいことをしてしまったのではないか、あるいは「リーダーのお気に入り」なのか、などと考えます。

特にリーダーと当人のあいだに入っている中間管理職に当たるメンバー(サブリーダー)は、自分が同席に呼ばれないと、何か失敗してしまったのか、自分が信頼されていないのか、などと疑心暗鬼になることもあります。

リーダー自身はまったく気にしていなくても、組織の階層を飛び越えるコミュニケーションは気軽にしないほうがいいのです。

とはいえ、現場の情報を常に吸い上げなければ、リーダーに入ってくる情報が間接情報ばかりになり、リーダーが「現場感」を失ってしまう危険性もあります。どう対応したらよいでしょうか。

1つの方法は、メールやグループウェアを使ったボトムアップ方向のコミュニケーションの促進です。この方法であれば、直接相手を呼び出すわけではないので、チーム内に余計な意味が発生するのを多少は防げます。


(図:本書より引用)

ただし、このときにもリーダーは、サブリーダーの頭越しに各メンバーに指示を与えないよう気をつけなければなりません。親身になって話を聞いても、「具体的な指示などは、後日、サブリーダーを通して伝えるね」などと対応するといいでしょう。

もう1つの方法は、リーダーが自ら現場に足を運び、現場の様子をチェックしながら、その場にいるメンバーに感謝やねぎらいの言葉をかける形でコミュニケーションを取ることです。仕事の邪魔をしない程度に各メンバーと世間話をしながら、現場の生の声を集めていきます。

この方法も、サブリーダーの頭越しのコミュニケーションではあるのですが、その状況からリーダーが自然に各メンバーと話ができます。1つの「型」として成立しているので、実態としては頭越しのコミュニケーションであるにもかかわらず、特別な意味が生じることがありません。

リーダーが直接に現場の不満や不安、あるいは各担当者の意見や細かい状況を把握したい場合には便利なため、私も大きなチームでリーダーをしていた頃はよくこの方法を利用していました。

サブリーダーの報告ではカバーできない情報も

ちなみにこのとき、あなたがリーダーとしてメンバーに信頼されていれば、彼らとの気やすい会話も成立しやすいでしょう。

7人のサブリーダーからの報告ではカバーし切れない、現場の生の声も直接聞こえてきます。

そうしたリアルな現場の声は、チームの実態やプロジェクトの進捗状況を把握するうえで重要な情報になることもあります。

たとえばAさんが「昨日は本当に忙しくて大変でした……」と話していて、その過密スケジュールについてサブリーダーから報告されていないのなら、そこにあなたが認識できていなかったボトルネックが潜んでいる可能性があります。

あるいはBさんが「品質を重視するように注意しています」と話していて、その指示が、あなたがサブリーダーに指示したものと同じだったなら、あなたの指示がサブリーダーを通して、下の階層のメンバーにまでしっかり伝わり、共有されていることがわかります。

逆に指示内容と違うことを現場のメンバーが言っていたら、どこかで指示の内容が変わってしまっていることがわかるわけです。

現場の状況に応じて、サブリーダーの今後の指導につなげることもできるでしょう。

サブリーダーを飛ばした直接対話は控えめに


繰り返しになりますが、こうした限定的な方法以外では、サブリーダーの頭越しでの直接対話は控え目にすることを意識しましょう。

リーダーが直属のメンバーを飛ばして指示をしてしまうと、サブリーダーの仕事を奪うことになります。指示系統も混乱しますし、サブリーダーやメンバーからの信頼も失いかねません。

自ら動かなければならない、という思い込みがあると、ついつい過剰な直接対話をしがちですから、気をつけてください。

(五十嵐 剛 : 株式会社リーダーズクリエイティブラボ 代表、いきいきチーム創り仕掛け人)