1000人規模の人材、どうマネジメントすればよいのでしょうか(写真: takeuchi masato / PIXTA)

会社のチームをどう切り盛りすればいいかは、ビジネスリーダーにとっての「永遠の課題」です。とくにチームメンバーの数が多い場合、彼らのモチベーションを維持し、目指す方向性をコントロールするマネジメント業務は困難を極めます。NECでリーダーとして1000人規模のプロジェクトを何度も率いた経験を持ち、現在ではコンサルタントに転身した五十嵐剛氏の著書『結果を出すチームのリーダーがやっていること』から一部を抜粋・再編集し、マネジメントのコツを紹介します。

直接指示するメンバーは7人まで

リーダーのあなたは今、チームに何人のメンバーを抱えていますか?

3人、5人、7人、10人、50人、100人……と人それぞれでしょう。会社の規模によってもこの人数は大きく変わるはずです。私は、多いときで1000人以上のメンバーを抱えていました。少ないときで4人です。

1000人ものメンバーの面倒をどう見るのか?

当然ながら、1人で見られるわけがありません。しかし、見なければなりません。この問題をどう解決していたのか?

結論から言います。メンバーが多すぎるときにはサブリーダーを立てていました。

自分のチーム内の役職者や、能力の高い人をサブリーダーに任命し、直属のメンバーとして彼らにだけ指示を出します。

それ以外のメンバーは、それぞれのサブリーダーの下に配置して、サブリーダーに指示をしてもらうことで、多すぎるメンバーをマネジメントしていました。

つまり指示系統はいわゆるピラミッド型で、上からの指示がメンバー全員に行きわたるようにしていたわけです。

ただし、逆方向のボトムアップで、現場の声もいちばん上の私まで上がってくるようには注意していました。各サブリーダーが、リーダーである私に現場の声を遠慮なく伝えられるよう、風通しのよい雰囲気づくり、場づくりにも常に気を配っていました。

またサブリーダーを飛ばして、直属ではないメンバーが私に直接、現場からの声を伝えられるようにもしていました。

この方法は組織の階層を飛ばすことになるので、リーダーによっては一律に受けつけないこともありますが、私の場合は現場の声を聞ける貴重な機会として、主にメールやグループウェア経由での情報提供を歓迎する旨をチーム全体に知らせていました。希望があれば、直接の面談なども行います。

試行錯誤で見つけ出した1つのコツ

このとき、私が何度か試行錯誤して見つけ出したコツが1つあります。それは自分が直接指示をするサブリーダー、つまり直属のメンバーを7人までにかぎることです。


(図:本書より引用)

そのほかのメンバーはそれぞれのサブリーダーの下にぶら下げていきますが、その際にも1人のサブリーダーが直接面倒を見る人員は7人までに収めてください。

なぜなら聖徳太子でもない私たちがメンバーの面倒を見られるのは、7人が限界だからです。

直属のメンバー7人が1週間、月曜日から金曜日まで8時間働いたとすると、メンバー1人当たり8時間×5日=40時間の労働時間となります。7人全体では40時間×7人で280時間です。

リーダーはこの280時間の成果物すべてをチェックする必要があります。当然、問題があればメンバーのフォローもしなければなりません。

リーダーは1人しかいないので、メンバー7人の280時間分の仕事を40時間で見なければなりません。メンバー1人当たりで考えれば、40時間の成果を5.7時間で見る計算です。

実際にはリーダーはメンバーの面倒を見る仕事だけをしているわけではなく、社内会議や客先の会議への出席、人事関係や事務関係の業務など、山ほど仕事をこなさなくてはなりません。

それらに割く時間も考えると、経験的に、直属のメンバーは7人までが「リーダーとしての仕事」をこなせる限界値と言えるのです(逆に言えば、7人までは直属のメンバーを増やせる、ということでもあります)。

たとえばメンバーが50人いたら、自分の直下に7人のサブリーダーを立て、その下に6人ずつ配置すると、サブリーダーとそのメンバー全員で49人になります。

1人のサブリーダーに7人のメンバーをつけることで、50人全員をカバーできます。あるいはサブリーダー全員に7人ずつ配置すれば、56人まではカバーできます。

8人以上になったら階層を増やす

チームにこれ以上の人数がいる場合には、ピラミッドの階層を増やして対応するのが基本だと考えておきましょう。4階層あれば400人くらいまで。5階層あれば1000人以上のチームでも対応できます。

実際には分担する業務の内容や会社規模、オフィス空間の制約などがあり、1000人規模のチームは滅多にあるものではありません。ある程度大きくなったら分割して、それぞれのチームにリーダーを立てるほうが現実的でしょう。

また階層が下に行くと、1人ひとりの作業の難易度は低くなり、作業内容の特殊性も小さくなる傾向があります。たとえば階層の上のほうでは専門知識を使ってシステムの設計を行いますが、下のほうではその設計書の指示に従って単純なプログラミング作業をする、といった違いです。

そのように業務内容のレベルが違うメンバーをまとめる際には、階層の下のほうでは7人の枠にあまりこだわらず、機能やサブシステムで大きく分けるほうが機能する場合もあります。

ただし、原則としてはそれぞれのリーダーが直接見るのは7人までとし、それ以上になるときには階層を増やす、という意識を持っておくと、大人数のチームを管理しやすくなります。

最近は、組織は極力フラットにすべきだという声もありますが、人数が7人以上のチームはピラミッド型にしなければ、リーダー1人の負荷が大きすぎていずれ回らなくなります。

ちなみに、「人事は経営陣や人事部の仕事で、リーダーが勝手にチーム内の階層構造をつくることなどできないのでは?」と思うかもしれません。しかし、これは大きな勘違いでしょう。

チームを任されたリーダーには、チームを機能させるために誰をサブリーダーにするか、また誰に何を任せるかを決める権限があるはずです。

8人以上のチームではサブリーダーを立てる


仮に会社側がそれを認めないのであれば、説得して認めさせるのもリーダーの仕事だと思います。

どうしても思うようにできない場合には、リーダーになることを断るか、それができない場合には、自分は名目上のリーダーにすぎない、と割り切って対応するしかないでしょう。

チームの規模が大きいときには、メンバー全員をリーダーが1人で見ることは難しいため、8人以上のチームではサブリーダーを立てること。それを原則とすることをお勧めします。

(五十嵐 剛 : 株式会社リーダーズクリエイティブラボ 代表、いきいきチーム創り仕掛け人)