SNSのアカウントは遺産?デジタル遺産の取り扱いで注意することは?
デジタル遺産って何?
デジタル遺産とは、故人の所有しているデジタルコンテンツやオンラインサービスのアカウント、デジタル資産の総称です。これには、以下のようなものが含まれます。
・オンラインアカウント:SNS、メール、オンラインバンキング、クラウドストレージ、サブスクリプションサービスなど
・デジタルコンテンツ:写真、ビデオ、音楽、ドキュメントなどのデジタルファイル
・仮想通貨:ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産
・電子書籍やゲーム:購入した電子書籍、デジタルゲーム、アプリケーション
・ウェブサイトやブログ:個人が運営するウェブサイトやブログのコンテンツ
デジタル遺産とデジタル遺品の違い
デジタル遺産とデジタル遺品は混同されがちですが、微妙な違いがあります。
デジタル遺産は、上記で述べたように、故人の所有するデジタルコンテンツやアカウントの全体を指します。これには、金銭的価値を持つもの(仮想通貨やオンラインショップの残高など)も含まれます。
デジタル遺品は、故人が残したデジタルファイルやメッセージ、SNSの投稿など、個人的な記録や思い出が中心となります。これらは感情的な価値が大きく、遺族にとって大切なものとなります。
相続が発生する前にすべきこと
デジタル遺産を適切に管理するためには、生前に以下の対策を講じておくことが重要です。
1. デジタル遺産リストの作成
自身が保有する全てのデジタルアカウントや資産のリストを作成し、ログイン情報を記載します。これには、ユーザー名、パスワード、アカウントの種類、利用しているサービス名などを含みます。
2. 遺言書の作成
デジタル遺産の管理や相続に関する具体的な指示を遺言書に記載します。特定のデジタル資産を誰に相続させるか、どのように管理するかを明確にすることが重要です。
3. 信頼できる人への情報共有
信頼できる家族や友人にデジタル遺産リストの存在を知らせ、必要な場合にアクセスできるようにします。特に、仮想通貨ウォレットの秘密鍵やクラウドストレージのパスワードは慎重に管理する必要があります。
4. 2段階認証の設定
重要なアカウントには2段階認証を設定し、セキュリティーを強化します。ただし、認証コードの管理方法も併せて検討する必要があります。
トラブル防止のために
デジタル遺産の相続や管理には、いくつかのトラブルが発生する可能性があります。以下の点に注意することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
1. サービス提供者のポリシー確認
各オンラインサービスの利用規約やプライバシーポリシーを確認し、アカウントの相続やデータの取り扱いに関する規定を理解しておきます。多くのサービスでは、利用者の死亡後のアカウント管理に関する明確な指針が提供されています。
2. 法律の理解
デジタル遺産に関する法律は国や地域によって異なるため、住んでいる地域の法的要件を理解しておくことが重要です。弁護士などの専門家に相談することも検討すべきです。
3. 定期的な更新
デジタル遺産リストや遺言書は、定期的に更新する必要があります。新しいアカウントの追加やパスワードの変更、デジタル資産の変動に対応するためです。
4. 第三者へのアクセス権限
家族や信頼できる友人に必要なアクセス権限を付与することで、緊急時や死亡後にスムーズに対応できるようにします。ただし、これに伴うセキュリティーリスクも考慮し、慎重に対応します。
まとめ
デジタル遺産の取り扱いは、現代のライフスタイルにおいて、避けて通れない課題です。早期に対策を講じ、トラブルを未然に防ぐことで、自身のデジタル資産を適切に管理し、遺族への負担を軽減することができます。デジタル社会において、自分自身のデジタル遺産をしっかりと守るための準備を怠らないようにしましょう。
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー