損保ジャパンで強まる組織的な「情報漏洩」の疑い
組織的な情報漏洩を図った疑いが強まっている損保ジャパン(編集部撮影)
損害保険ジャパンによる情報漏洩問題の火の手が、大きく広がり始めている。
7月12日、旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)の親密代理店であるトータル保険サービス(東京都中央区)は、損保ジャパンからの出向者が、ほかの保険会社の契約者の情報を、出向元である損保ジャパンに漏洩していたと発表した。
さらに、横浜銀行の親密代理店である朋栄(横浜市)に出向している損保ジャパンの社員も、同様に契約者情報を漏洩していたことが新たにわかった。
約2700件を漏洩、さらに膨らむ可能性も
トータル保険サービスで漏洩が確認された契約件数は、現時点で延べ約2700件。漏洩した情報は法人契約が多く、契約者名、契約先の損害保険会社(計19社、損保ジャパンを含む)、保険の種類、保険期間、保険料、トータル保険サービスの担当者名などだ。
旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)の親密代理店である、トータル保険サービスが公表した情報漏洩に関する文書(編集部撮影)
トータル保険サービスによると、2019年からの過去5年間における漏洩件数だといい、それ以前に期間をさかのぼって調べた場合は、件数がさらに膨らむ可能性がある。
また、保険会社から代理店への出向期間は2〜3年が通例のため、情報漏洩にかかわった損保ジャパンからの出向者は複数人いるもようだ。
朋栄のケースでは、アパートローンの契約者情報を、出向元の損保ジャパンに漏洩していた。複数の関係者によると、「ローンに付随する火災保険などの情報を漏洩した疑いがある」という。漏洩件数などは目下調査中とみられる。
ほかにも同様の情報漏洩が発生していないか
両社のケースに共通するのは、出向元の損保ジャパン(金融法人部)が、競合他社の契約者情報を出向者と平然と共有していたということだ。
組織的に情報漏洩を図っていたことになるが、それが損保ジャパンの本社サイドからの指示なのか、目的は自社への乗り換え提案なのか、もしくは契約シェアの確認なのかなどは、現時点ではわかっていない。
損保ジャパンは、前身の1社である旧日本興亜損害保険からの流れで、地方銀行、第二地方銀行との取引に強い。横浜銀行に限らず、地銀系の代理店に多くの出向者を送り込んでおり、ほかにも同様の情報漏洩が発生していないか徹底した調査が求められそうだ。
足元では、銀行系代理店のみならずトヨタ自動車系列の販売店においても、損保ジャパンから出向した社員が契約者情報を漏洩した疑いが浮上しており、今後大きな問題に発展する可能性がある。
(中村 正毅 : 東洋経済 記者)