「血管性浮腫」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

写真拡大

顔のむくみはどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
関口 雅則(医師)

浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。

「顔のむくみ」の原因と対処法

むくみとは、医学用語で「浮腫(ふしゅ)」と言います。むくみは血管の外側に過剰な水分が溜まった状態のことを指します。
顔がむくむ原因には多くのものがあります。
顔のむくみは多くの人が一度は経験したことがあるかとは思います。しかし、むくみが長引いたり、徐々に悪化したりする場合は、医療機関を受診して原因を調べることが必要です。

顔のむくみの原因と対処法

顔のむくみは、目の周りや頬が腫れぼったくなり、皮膚が膨れた感じがします。特に朝に現れやすく、一日を通して徐々に軽減されることが多いです。
さて、顔のむくみで考えられるような原因には以下のようなものがあります。
・睡眠不足:十分な睡眠が取れない場合、特に目の周りが腫れることがあります。
・塩分過多:塩分を摂り過ぎると、むくみを引き起こします。
・運動不足:運動不足は血行不良を引き起こし、体内の水分が滞りやすくなります。

一方で、以下のような病気によっても顔のむくみが生じる場合があります。
・腎臓の病気: 腎不全では、腎臓が正常に機能せず、水分の排出が滞り、むくみが生じます。また、ネフローゼ症候群という病気では、腎臓の障害により尿中に大量のタンパクが漏れ出し、低タンパク血症を引き起こすことでむくみが生じます。
・心不全:心臓の機能低下により血液が滞り、むくみが現れます。
・血管性浮腫:血管の透過性が異常に高まることで、血管外に液体が漏れ出し、皮膚や粘膜に急激なむくみが生じる状態です。この原因は、アレルギー性、非アレルギー性、遺伝性などさまざまです。

むくみを解消できる可能性のある処置としては、冷やしたタオルで顔を冷やしたり、顔のマッサージをしたりすることが挙げられます。また、塩分を控え、水分摂取量を適切にすることが大切です。
病気でない場合は、こうしたむくみを取る方法によって、顔のむくみは改善すると考えられます。しかし、顔のむくみが長期間続く場合や急激に悪化する場合は、内科や腎臓内科を受診することをお勧めします。呼吸困難や急激な体重増加がある場合は、緊急性が高いので救急外来を受診してください​。

男性で顔がむくむ原因と対処法

それでは、男性において顔がむくむ原因として考えられる病気について2つほどご紹介しましょう。

心不全では、進行すると顔のむくみが症状として現れることがあります。
慢性心不全患者の男女比を調べた研究があります。この解析データからは、男女比は6:4となっていました。

また、肝硬変でも全身のむくみが生じ、顔もむくんでしまう症状がでます。
肝硬変とは、肝臓に炎症が生じた結果、肝臓の細胞が線維によって取り囲まれて硬くなってしまう状態のことです。B型・C型肝炎ウイルスや、アルコール性肝炎、高血圧や糖尿病、脂質異常症などが関連している非アルコール性脂肪肝炎などが原因となります。

肝硬変になると、肝臓が正常に機能しなくなり、アルブミンというタンパク質が十分に作られなくなります。アルブミンは血液中の水分を保持する役割を果たしているので、むくみが生じる原因となります。また、門脈圧亢進症という状態になり、体の水分やリンパ液が適切に流れ、排出されなくなります。すると、顔を含む全身にむくみが生じやすくなります。

肝硬変の日本人における比率を調べた研究によると、肝炎ウイルス以外の原因による肝硬変になった人の割合としては、男性65.8%、女性34.2%という結果でした。

心不全も肝硬変も、顔のむくみをきたす可能性がある疾患です。男性・女性両者で起こりうるものですが、男性にやや多い疾患としてご紹介しました。
心不全が急激に悪化した場合、呼吸困難や胸の痛みが現れることがあります。これらの症状が見られる場合は、緊急性が高いので、すぐに救急外来を受診する必要があります。
数日間で急激に体重が増える場合も、心不全の悪化が考えられるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

また、肝硬変が進行し、腹水が急激に増加する場合、腹部膨満感や腹痛が現れることがあります。これらの症状が見られる場合は、緊急性が高いので、すぐに消化器内科を受診する必要があります。
肝不全に進行すると、意識混濁(いしきこんだく:意識レベルの低下)や黄疸の急激な悪化が見られることがあります。これらの症状が見られる場合は、速やかに救急外来を受診する必要があります。

女性で顔がむくむ原因と対処法

女性で顔がむくむ原因としては、女性ホルモンの変動が一因となっている場合があります。
例えば、月経前症候群(PMS)の一症状としてむくみが出る場合があります。その他、女性に多い疾患としては、甲状腺機能低下症でも顔のむくみが出る原因となります。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下してしまう病気であり、橋本病(慢性甲状腺炎)が代表的なものです。
甲状腺機能低下症は女性に多く、男女比は1:20-30ほどとなっています。甲状腺機能低下症の場合には、顔を含む全身のむくみの他にもいろいろな症状が出ます。例えば、甲状腺の腫れや無気力、疲労感、寒がりになる、体重が増える、便秘、声が掠れるという症状が典型的です。

対処法についてもそれぞれご紹介します。
月経前症候群の場合には、軽い運動などでむくみが軽減されることがあります。飲み物として冷たい水を飲み過ぎると、体を冷やす方向に働き、むくみが悪化する可能性があります。しかし、症状が生活に支障をきたす場合や、自己管理が難しいと感じる場合は、婦人科を受診してください。医師の診断により、ホルモン療法やサプリメントの提案が行われることがあります。

一方、甲状腺機能低下症の場合には、内分泌内科や甲状腺専門医での治療を受けることになります。甲状腺ホルモン補充療法を受けることが一般的です。
顔のむくみが続く、疲れやすい、体重が増加する、寒がりになるなどの症状が見られる場合は、内分泌内科や内科を受診してください。血液検査により甲状腺ホルモンのレベルを測定し、適切な治療が行われます。

朝になると顔がむくむ原因と対処法

朝になると顔がむくむ原因としては、ここまでに述べてきた疾患による場合もあります。
さらに、アルコール類を飲み過ぎると、朝になると顔がむくむ場合があります。
アルコールを過剰に摂取すると、血中のアルコール濃度が上昇し、血管が拡張します。その結果、静脈やリンパによる水分の処理が追いつかず、むくみが生じやすくなります。特に夜間は、横になって寝ている間に顔に水分が溜まりやすくなるため、朝起きたときに顔やまぶたが腫れやすくなります。

アルコールの摂取がむくみの原因であれば、まずはお酒の量を控えましょう。そして、寝る前に過剰な水分摂取を避けて早めに就寝し、翌朝は早めに起きるように心がけましょう。また、頭を少し高くしてうつぶせ寝を避けることで、むくみの改善が期待できます。加えて、塩分の摂取を控え、十分な睡眠をとり、適度な運動を行い、ストレスを減らし、バランスの取れた栄養を摂るようにしてください。

すぐに病院へ行くべき「顔のむくみ」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

突然の呼吸困難を伴う場合は、循環器内科へ

顔のむくみとともに、呼吸困難や胸の痛みがある場合は緊急性が高いです。このような症状が急に現れる場合は、すぐに対応が必要です。
考えられる病気としては、心不全や肺水腫(はいすいしゅ)といった疾患が考えられます。
また、肺がんなどによって上大静脈という太い血管が狭くなる上大静脈症候群という疾患でも顔のむくみが生じることがあります。

心不全では、心臓の機能が低下し、血液が滞ることでむくみと呼吸困難が生じます。
肺水腫では、肺に液体が溜まり、呼吸困難を引き起こす可能性があります。
上記の症状がある場合は、循環器科を受診し、速やかに治療を受ける必要があります。場合によっては救急外来を利用することも考慮してください。

「顔のむくみ」症状の特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「顔のむくみ」症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

心不全

心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、十分な血液を全身に送ることができない状態です。これにより血液が体内に滞り、特に足や顔にむくみが生じます​​。
心不全の治療には、塩分制限、適度な運動、薬物療法(利尿薬、血管拡張薬、β遮断薬など)が含まれます。重症の場合は、ペースメーカーや心臓移植が考慮されることもあります。
むくみが急激に悪化する、呼吸困難や胸の痛みがある場合は、すぐに循環器内科を受診してください。特に心不全の既往歴がある場合は緊急性が高いです。

リンパ浮腫

リンパ浮腫は、リンパ系の機能低下や閉塞により、リンパ液が適切に排出されず、組織にたまることで生じるむくみです。主に手足に現れますが、顔にも生じることがあります​。
リンパ浮腫の治療には、圧迫療法、リンパドレナージ(マッサージ)、運動療法、スキンケアが含まれます。また、専用の弾性ストッキングやスリーブの使用も効果的です。
むくみが長期間続く、皮膚に感染症の兆候(赤み、痛み、熱感)がある場合は、医療機関を受診してください。
リンパ浮腫の場合、皮膚科やリンパ浮腫専門のクリニックへの受診をお勧めします。

血行不良

血行不良は、血液の流れが悪くなることで組織に必要な酸素や栄養が届かず、むくみが生じる状態です。これには心臓の機能低下や血管の狭窄(きょうさく:狭くなること)が原因として考えられます​​。
血行不良の改善には、適度な運動、食事療法(特に塩分や脂肪の摂取を控える)、温浴、マッサージが有効です。また、薬物療法として血管拡張薬や抗血栓薬が用いられることもあります。
むくみが慢性的に続く、足や手が冷たい、痛みやしびれがある場合は、循環器科または内科を受診してください。

「顔のむくみ」症状の正しい解消法は?

むくみの原因がアレルギーによるものや睡眠不足などによるものである場合には、市販の抗アレルギー薬や睡眠薬が有効である可能性があります。また、五苓散(ごれいさん)という漢方薬は、利尿作用があり、むくみの解消に効果的です。
しかし、長期間続くむくみ、急激に悪化するむくみ、呼吸困難や胸の痛みを伴うむくみは自己判断で放置しないようにしましょう。

一般的に顔のむくみの症状を和らげるためには、規則正しい生活や適度な運動などが効果的と考えられます。むくみを解消するために即効性のあるセルフケアについては医学的な効果が証明されたものはないのが現状です。しかし、家庭でできる対処法には、以下のようなものがあります。

・冷やしたタオルで顔を冷やす: 血管を収縮させ、むくみを軽減します。
・顔のマッサージ: 軽くマッサージすることで、リンパ液の流れを促進します。
・塩分を控えた食事: 塩分の摂取を減らし、体内の水分バランスを整えます。
・水分を適度に摂取する: 適度な水分補給を心がけ、体内の水分バランスを保ちます。

また、むくみ予防に効果があると考えられる食べ物のひとつにきゅうりがあります。きゅうりにはカリウムが豊富で利尿作用があり、体内の余分な水分を排出する効果があります。食事のバランスを保つことも重要ですので、これらの食材をバランスよく取り入れるよう心がけましょう。

むくみが長期間続いたり、応急処置をしても改善しなかったりする場合は、医療機関を受診することが重要です。特に他の症状(呼吸困難、胸の痛みなど)が伴う場合は、速やかに専門医の診断を受けましょう。

病院に行くべき症状の目安には以下のようなものがあります。
・むくみが1週間以上続く: むくみが続く場合は、内科や腎臓内科を受診することをお勧めします。
・呼吸困難や胸の痛みを伴うむくみ: 緊急性が高いため、循環器科を受診してください。
・急激に悪化するむくみ: 急激に悪化する場合は、救急外来を受診することを考慮してください。
・全身のむくみ: 全身のむくみが見られる場合は、腎臓内科を受診してください。

「顔のむくみ」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「顔のむくみ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

顔にむくみが出やすい人の特徴を教えてください。

関口 雅則医師

顔にむくみが出やすい人の特徴は、睡眠不足であったり塩分の多い食事やアルコールを過剰にとる習慣があったり、運動不足であることなどがあります。また、女性の場合には月経前症候群(PMS)などでホルモンバランスが乱れ、顔がむくむ場合もあります。

顔のむくみを早くとる方法はありますか?

関口 雅則医師

顔のむくみを早く取る方法には、冷やしたタオルを顔に当てる、優しくマッサージする、水分をしっかり摂る、塩分を控える、枕を高くして寝る、カリウムを多く含む食材を摂取する、軽い運動を行うなどがあります。これらを実践することで、むくみの軽減と予防が期待できます。

まとめ

顔のむくみは一時的なものから心不全や腎不全、肝硬変に至るまで、多岐にわたります。日常的な対処法としては、冷やしたタオルでの冷却、顔のマッサージ、塩分を控えた食事、適度な水分補給、カリウムを含む食材の摂取、適度な運動が効果的です。しかし、むくみが長期間続いたり、急激に悪化したりする場合は、早めに医療機関を受診して原因を確認し、適切な治療を受けることが重要です。

「顔のむくみ」で考えられる病気

「顔のむくみ」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器内科の病気

心不全

上大静脈症候群

肺水腫

腎臓内科の病気

腎不全ネフローゼ症候群

消化器内科の病気

肝硬変

内分泌内科の病気

甲状腺機能低下症クッシング症候群

免疫内科の病気

血管性浮腫

こうした病気が疑われる場合には、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

「顔のむくみ」に似ている症状・関連する症状

「顔のむくみ」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

まぶたがむくむ

唇が腫れる

顔が赤くなる

首がむくむ

全身がむくむ

皮膚がひきつれる感じがする

体重が増える

顔面のしびれや麻痺が生じる

頭痛

顔のむくみが生じる際に、こうした症状も伴う場合には、単なるむくみでなく他の疾患が原因である可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。

【参考文献】
・ナトリウム(厚生労働省)
・呼吸器Q&A(日本呼吸器学会)