タンク(右奥)から重油が流出し、吸着シートが敷かれた排水路(27日、山梨県北杜市で)

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 26日午後5時頃、山梨県北杜市高根町箕輪の農業用水路に重油が流れていると、地元の米生産者からJA梨北(韮崎市)に連絡があった。

 近くのJA施設「りほく」の重油タンクから農業用水路を通って水田に流れ込んでおり、市によると、水田31筆、約5・5ヘクタールに及んでいるという。タンクの排出口の弁や配管が何者かに外された形跡があり、JA梨北は、北杜署に被害届を出す準備を進めている。

 現場は、八ヶ岳広域農道・レインボーライン近くの水田地帯。りほくはJA梨北の子会社で、葬祭や損害保険などの業務を担っている。

 JA梨北や消防などによると、タンクは容量約1800リットルの鉄製で、温水ボイラーの燃料として茶褐色のA重油が入っており、施設に外付けされていた。

 重油は、コンクリート製の囲いのひび割れから排水路や農業用水路を通って水田に流れ込んでおり、周囲には油の臭いが漂っていた。ただ、県は流出量が少ないとして生育への影響は小さいとみている。

 タンクの底部にある排出口は、固く締められていた鉄製の弁が外されており、ここから重油が漏れたとみられる。さらに、ボイラーとつながっている配管も壊されていた。弁も配管も見つかっていないという。

 JA梨北は25日には現場周辺で油の臭いなどがなかったことなどから、26日に何者かが敷地内に侵入し、タンクに手を加えたとみている。

 タンクは消防に設置を届け出ていたが、約30年間使用されないまま老朽化が進んでおり、廃止届は出されていなかった。

 27日はJA関係者らが排水路や農業用水路などに残った重油を、重機や吸着シートなどで取り除く作業に追われた。

 周辺は梨北米の産地で、今月上旬まで田植えが行われていた。JA梨北は「明らかに人為的にタンクが壊されている。農業用水路や水田の復旧を進める一方で、警察と相談しながら対応していきたい」としている。