【宝塚記念予想】京都開催でどう変わる? 春のグランプリを全方位から徹底解剖!/立川優馬サロン座談会
いよいよ今週は春GIの掉尾を飾る宝塚記念。そこで、Z世代予想家・こうせい氏、注目度上昇中のまぐ氏、そして各種メディアで活躍する立川優馬氏の3名の予想家で座談会を企画しました。
レース質、馬場想定、隊列読み、そして個体の能力。宝塚記念を全方位から前後編で徹底解剖しています。今回はその前編。
こうせい氏、まぐ氏は立川氏が主宰するオンラインサロンに所属しているため、結論が似通るのかと思いきや、さにあらず。三者の個性がぶつかりあった座談会。どうぞ、馬券検討のヒントにご活用ください。
(取材・構成=浜田紅也)
◆レースの話か、馬の話か、そのハイブリッドか
──こうせいさん、まぐさんはともに立川優馬さんが主宰するオンラインサロン『競馬と共に人生を歩むサロン』に在籍されているんですよね。まずは簡単な自己紹介と御自身の予想理論についてのご説明からお願いします。
こうせい 2001年生まれの現役の大学院生で理系分野を専攻しています。予想理論は【ダメージコンビネーション】。「競馬は直線までに勝負は決しており、直線に入るまでの隊列を読み切れば競馬は勝てる」が持論です。具体的には、メンバー構成や枠順、コース形態から、競走馬にかかる【先行負荷】と【差し負荷】の大きさを考えて、直線までにどのポジションでどれだけ余力を残した状態で迎えられるのかを予想しています。
まぐ 私は敢えて年齢には触れませんが(笑)、サンデーサイレンスの初年度産駒の年から競馬を観ています。主軸となる予想理論は【余力ラップ】。主に後半ラップで、独自に設定した基準ラップをクリアした馬を狙い撃つというのが基本戦略です。元々はいわゆる“総合派”だったのですが、本を執筆する際、各ファクターについて洗い直していくうちに“ラップタイム”の重要性に気付きました。そこでさらにラップタイムについて深掘りして体系化したのが【余力ラップ】です。
──そんなお二人が所属するオンラインサロンの主宰者であるのが立川優馬さん。
立川優馬 立川でございます。私の予想理論【レース質マトリックス】は「どの馬が走るのかな」と馬単位で予想するのではなく、「どういうレースになるのかな」とレース自体を予想する手法です。レースを「枠順」「脚質」「ローテ(前走距離)」「ペース」の4要素で2択にして、例えば「内枠・先行・短縮・スローペース」というような形でレースを定義付けします。そのレースがどういう質になるか、つまり“レース質”を先に設定した上で、狙い馬を決めていくわけですね。ですから、初めて出した単行本のキャッチコピーも「馬を見るな!どんなレースになるかだけを考えろ!」でした。
こうせい よく覚えていますよ。僕が立川さんに興味を抱いたきっかけも単行本のサブタイトルにもなっている「競馬は全て二択である」に惹かれたからでした。
──ここからは、この座談会のメインテーマである宝塚記念についてお話を伺っていきましょう。さきほどの立川さんのお話だと、まずはどういうレースになるか=レース質を定義付けるということですね。
立川優馬 今年は京都芝2200mで行われるというのがポイントですよね。従来の宝塚記念はレース質の読みやすいレースで「外枠・差し・短縮・ハイペース」がデフォルト。阪神芝2200mは「初角までの距離が長く」「下り坂からのスタート」なのでペースが上がりやすいのが特徴で、先行争いの最中に直線の急坂があります。時期的にも荒れた馬場になりやすいこともあいまって、どうしたって先行負荷の非常に高いタフなレースになるのです。テンに流れる分、中盤でペースが緩み外からの追い上げも効きやすいため、阪神芝2200mの宝塚記念のレース質は「外枠・差し・短縮・ハイペース」。したがって「内枠・先行」になりやすい阪神芝2000mの大阪杯との出し入れが非常に有効でした。
では「京都芝2200mだと何が変わるか」ですが、レースのラップ形が大きく変わるでしょう。テンの速度が緩んでスローペースからの上がり勝負になるのです。阪神2200mは捲りの持続戦になりやすいのに比べて、京都2200mは溜めての瞬発力戦になりやすいので、それこそまぐさんの【余力ラップ】が有効になってくるのではないでしょうか。
こうせい ペースを考える上では、ベラジオオペラとディープボンドの枠並びが凄く重要になってくると考えています。今年は登録13頭と少なく、明確な逃げ馬も不在。逃げ候補はシンプルに初速が速いベラジオオペラか、主張すれば出していけそうなディープボンドのどちらかだと思います。そこで枠並びですね。ディープボンドがベラジオオペラよりも外枠を引いた場合、ディープボンドはテンのスピードが速くない上に距離短縮ローテになるので強めに促していく必要があり、その結果先行争いが長引く可能性は十分にあります。一方、ベラジオオペラが外枠を引いた場合は、外から強めに主張して他馬を被せていく形になるので、内の馬はポジションを取りたくても取れない状況になるはず。立川さんはペースが緩むという見立てでしたが、それは2頭の並び次第だと僕は考えています。
まぐ 京都での連続開催なので、馬場状態は気になりますよね。どれぐらい時計が掛かって、どれぐらいの上がりになるか。
立川優馬 第3回、第4回京都開催はAコース(6日間)→Bコース(6日間)→Cコース(4日間)→Dコース(4日間)という、内から使い倒していくコースローテーションで、その最終日が宝塚記念です。それでですね、小島友実さんの新刊によると、京都改修のタイミングで3~4コーナーのコーナー角を緩くしたため、コース幅の小さいDコースでは外回りの内が空かなくなっているようなのです。元来、京都外回りコースは4コーナーで馬群が広がって内が空くのですが、今のDコースではそれが望みにくい。内をタイトに回って瞬発力でビュンと抜ける競馬が通用しないので、馬場の良い外をそのまま回してきた馬が強い=外枠有利の傾向が強まるとみています。実際に、改修後の京都で唯一、Dコースが使われた2回京都の最終週は圧倒的に外枠有利になっていました。
こうせい ソーダズリングが勝った京都牝馬Sの週ですよね。確かに京都牝馬Sは完全な外差し決着でした。
立川優馬 2回京都の時は改修から間がなかったので、路盤が緩かった影響もあったかもしれません。ですからこの(取材)後に行われるDコース替わり1週目の競馬をみて、外枠優勢であれば宝塚記念も外枠重視に振り切ってもいいのではないでしょうか。
こうせい Dコース最終週、梅雨の影響もあって内が使えない状況になるだろうというのは同感ですが、結論部分については真逆の見解を持っています。内が使えない状態で、そのまま先行した馬達がわざわざ内を通すイメージは持てないんですよ。先行馬が内を避けるような立ち回りで進路を外に求めると、それにつられて差し馬はさらに外を回す形になるはずです。そうなった時、後方追走の差し馬は非常に外を回されて「物理的に間に合いませんよ」みたいな世界線になる可能性は十分にあります。だとすれば、いわゆる“距離ロスを抑える立ち回り”が必要になってくるという見立てで、具体的にはロスなく立ち回れる器用さであったり、ポジションを確保できる先行力が求められるのではないかと睨んでいます。
立川優馬 新潟外回り2000mで、先行馬が内を空けてもさらに大外をぶん回した馬が間に合うパターンがあるじゃないですか。そのイメージもあると思っているので、京都芝2200mの宝塚記念のレース質は「外枠・差し・スローペース」で、瞬発力タイプ優勢と診断する予定です。極端な降雨があった場合、話は別ですが。
こうせい 僕は2006年の宝塚記念のイメージを持っているんですよね。ちょうどそれ以来の京都での宝塚記念になりますが、あの年は、勝ったディープインパクトは例外として、2着がイン差ししたナリタセンチュリーで、3着が逃げたバランスオブゲーム、そして先行したダイワメジャーが4着。立ち回り性能が問われたのは明白です。バランスオブゲームとダイワメジャーについて補足すると、ともにマイルGIや1800m重賞での好走実績もあるので、馬場が良くないからといって、体力勝負歓迎タイプの評価を上げて、逆にスピード勝負型の評価は下げるというイメージは持たなくても良いと考えています。
まぐ 馬場も展開も流動的で読みにくいですね。ただ、馬場や展開がどうであれ、◎はジャスティンパレスでほぼ決めています。
こうせい 結論に入るのが早いなぁ(笑)。
立川優馬 これこそが予想方法の違いですよね。私の場合はレースの話から予想を始めるけれど、まぐさんは馬個体の話から予想が始まる。そしてこうせいさんはそのハイブリッド。