左から、まぐ氏・立川優馬氏・こうせい氏

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 今週は春GIの掉尾を飾る宝塚記念。Z世代予想家・こうせい氏、注目度上昇中のまぐ氏、そして各種メディアで活躍する立川優馬氏の3名の予想家による座談会の後編。

 前編のラストでまぐ氏は「◎はジャスティンパレスでほぼ決めています」と宣言。今回は、そのジャスティンパレスやドウデュースなど人気各馬の解説や、目を付けている穴馬について3名が触れていきます。

(取材・構成=浜田紅也)

◆2人はベラジオオペラを高評価

立川優馬 これこそが予想方法の違いですよね。私の場合はレースの話から予想を始めるけれど、まぐさんは馬個体の話から予想が始まる。そしてこうせいさんはそのハイブリッド。

──レースが先か、馬が先か、あるいはその両方か、ですね。ここからはまぐさんのターンということで、出走予定馬について具体的に伺っていきましょう。この流れだと、ジャスティンパレスからになりますね。

まぐ シンプルに天皇賞(秋)組は強いと思います。ラスト5F11.4-11.4-11.6-11.4-11.7を刻んで勝ち時計1.55.2。超高速馬場の恩恵があったとはいえ、3着プログノーシスの金鯱賞の圧勝ぶりからもハイレベルな一戦であったことは疑いようがありません。

立川優馬 (ジャスティンパレスの)走破時計1:55.6は凄いけれど、あくまで超高速馬場をハイペースで引っ張ってもらってのものなので額面ほどの評価をしていいかは疑問です。その天皇賞(秋)ではメンバー最速の上がり33.7秒を使っていますが、今回のメンバーならもっと速い上がりを使える馬、いわゆる瞬発力戦に強い馬はもっと他にいるよね、というのが率直な評価です。

まぐ 確かに33.7秒という数字自体は特筆するほどではありませんが、それまでは34秒台の上がりしか出せていなかった(阪神大賞典で記録した34.2秒が最速)馬が、33秒台の脚を使ったことを評価したいですね。それとこの馬を推す理由は京都替わり。有馬記念のレース後談話で、横山武史騎手が「ギアチェンジが上手くない」と語っていたので、坂の下りで勢いをつけられる京都は間違いなく合っています。

こうせい ジャスティンパレスの強さはトップスピードに乗ってからの持続力性能の高さだと思っているので、京都で行われた天皇賞(春)でハイパフォーマンスを出しているというのは十分納得がいきます。あと、近走の内容から後方追走のイメージが強いと思うのですが、今回はルメール騎手ですよね。ルメール騎手騎乗時はポジションを取れているので、立ち回り戦になっても苦しむことはないでしょう。ディープボンドが外枠を引いて先行負荷の高いレースにしてくれたら、早め抜け出しを図るディープボンドを目標に差し切る競馬のイメージが湧きます。まさしく去年の天皇賞(春)の再現になるので、より評価を上げたいですね。

──三者三様の評価ですね。続いて、一番人気が見込まれるドウデュースについてはいかがですか?

まぐ ちょっと表現が難しいのですが、ハーツクライ産駒らしさが出てきたような気がするんですよね。ダービー馬ですが、今は瞬発力勝負よりも小回りで捲り性能を活かす競馬が向いているように思います。23年の京都記念(阪神2200m)や23年有馬記念(中山芝2500m)がどちらも捲り勝ちで、インを突いたドバイターフは窮屈なところがあったとはいえ伸び切れませんでした。

立川優馬 ジャスティンパレスと同様に、この馬も本質的には瞬発力タイプではないと考えています。日本ダービーを勝った時も外捲り馬場、いわゆる外が伸びる持続力系の馬場でした。前週のオークスも大外枠のスターズオンアースが勝って、2着スタニングローズは道中インから外に出しての追い込み。持続力寄りの馬場の時に好走するのがドウデュースのイメージです。この馬は京都2200mより阪神2200mでやりたかったクチでしょうね。

こうせい 僕もほぼほぼ同意見ですね。ドウデュースの長所はコーナーにおける機動力で、他の馬がコーナーでの加速に苦しむところをスイスイ加速していくのが強み。京都だと3コーナーから4コーナーにかけて下り坂がある関係で他の馬もスピードに乗せやすいので、相対的にドウデュースの強みを活かし切れないと思います。能力の高さで格好はつけるけれど、少し足りずに2着3着に終わるようなイメージを持っていますね。

──ジャスティンパレスとは対照的に、ドウデュースの評価はかなり一致しましたね。となると、お二人の◎候補はどの辺りになるでしょうか?

こうせい 現時点での◎候補はベラジオオペラです。今回の宝塚記念で立ち回り性能を重視するのであれば、初速の速さで番手を確保してそのまま先行押し切りという、いわゆる王道の競馬で大阪杯を勝ったこの馬を評価するのは自然の流れです。それと、ベラジオオペラは色々ケチをつけられやすいタイプだと思っているんですよね。そしてこのようなタイプこそ、今は狙い目だと考えていて…。

──もう少し詳しく教えていただけますか?

こうせい 現代競馬は、AI予想やインフルエンサーの影響力が大きく、平場だけでなくGIでもオッズの片寄りが激しいと感じています。チェルヴィニアは前走13着ながら単勝4.6倍の2番人気でオークスを勝利。日本ダービーでは皐月賞4着のアーバンシックが8.3倍と売れる一方で、皐月賞クビ差2着のコスモキュランダは14.3倍止まり。安田記念のナミュールも実績上位ながらヴィクトリアマイルの敗戦だけで10.0倍まで人気を落としました。分かりやすい加点要素、評価材料によって特定の馬が注目を集めることで、中穴に分類される人気帯(単勝オッズ10倍台)の馬の妙味が薄れて、逆に本来もっと人気を集めるべき馬に妙味が生じている感覚を持っています。

立川優馬 明け4歳のレベルがどうとか、大阪杯はドバイ組が不在でレベルが低かったとか、ベラジオオペラにはわかりやすく嫌われやすい要素はありますもんね。

こうせい 今回はドウデュースやジャスティンパレスという強い馬がいることで「上位人気馬の中で消すならベラジオオペラ」みたいな発想になる人も多いと思います。立ち回りを活かして押し切るようなタイプは勝ち方が地味なので、人気を集めにくいという側面もあります。ですが、今年の京都開催での宝塚記念は立ち回り性能に長けた馬が輝く舞台になるので、人気の盲点を突くならこの馬だろうと思っています。あとは外枠が欲しいですね。

立川優馬 私もベラジオオペラは有力候補だと考えています。というか、まずは大阪杯組ですね。大阪杯当日はサロン内で映像配信による観戦会を行なっていたのですが、その場で「瞬発力型の上がりが使える馬が走っているね」と話して、ルージュエヴァイユを推奨馬に加えた記憶があります。それぐらい、この日の阪神は速い上がりを使える馬が好走していました。ですから大阪杯上位組は普通に評価していいでしょう。あとは、上がりが使える瞬発力型としてシュトルーヴェは評価しておきたいですね。

まぐ シュトルーヴェはいいですね。前走の上がり32.9秒は速いし、セン馬になってからは安定して強い(3戦3勝)ので、特にケチをつけるところは見当たりませんね。

こうせい 僕は後方に構える差し馬は間に合わないという見立てなので、あまり評価はできません。

立川優馬 netkeibaさんの想定では6番人気ですよね。こんなにわかりやすくGIIを連勝している馬が人気にならないのであれば、さきほどのこうせいさんの話ではありませんが、人気の盲点として素直に狙う手がありそうです。距離短縮ローテで持続力を補完して差しに回るローテーションもいいですし、あとは外枠を願うだけ(笑)。【レース質マトリックス】というのは、どの馬を狙うのではなく、今回であれば「外枠を引いた高速上がりが使える馬を狙う」という予想理論なので。

──◎候補は出揃ったので、穴候補についても教えてください。

まぐ 私はディープボンドですね。実績的には阪神内回りでも走れていますが、必ず勝負どころで手応えが悪くなる馬なので確実に京都外回り向きです。実際京都外回りは【1-1-2-1】で、唯一の着外も菊花賞の4着。ただ、そうはいっても高速上がりだと厳しいので、馬場や展開の後押しは欲しいところです。

立川優馬 ディープボンドは、上がりが求められるレースでは手を出しにくいので、瞬発力戦想定の今回は評価しにくいですね。京都新聞杯のようなハイペースになれば話は別ですが。

こうせい その展開に自ら持ち込みたい部分はあるかもしれないですね。ポジションの優位性がある馬=先行馬を重視するという意味では、この馬が外枠を引いたら面白そうです。先ほどお話しした並びの点でもそうですし、この馬自身、大きなストライドで走るので自分のペースで動ける外枠が理想。あと、僕が穴候補として注目しているのはルージュエヴァイユです。元々東京で持続力質の差し脚を伸ばして善戦するタイプだったのが、去年のエリザベス女王杯や今年の大阪杯では、ある程度立ち回りの巧さを活かしながら決め手を発揮して好走しました。いわゆるキャラ変ですね。個人的にはハーツクライの覚醒パターンに当てはまっている印象を持っていて、今回も引き続き、立ち回りの巧さを生かして好走するシーンがあっても不思議ではありません。

立川優馬 馬の上がりの速度という部分では、ルージュエヴァイユが瞬発力戦に向いているのは間違いないでしょう。一つ気になるのは、この馬の好走パターンがほぼ「内を捌いた」「内を突いた」レースに限られている点です。エリザベス女王杯は2番枠から内を通したもので、大阪杯も直線インを強襲する形でした。内を通すことが好走条件だとすると、馬場やコース形態から求められる要素には反しています。レース質を加味して大穴候補を挙げるとするなら…ヤマニンサンパはいかがでしょうか。上がりの質だけならこのメンバーでもそこまで見劣らないので、外枠を引いて、距離延長ローテを生かしてスローペースの流れをいつもより位置を取る形になれば、3着に紛れ込んでくるシーンがみられるかもしれません。

──ここまで名前が挙がっていない有力馬はローシャムパーク、ソールオリエンスあたりでしょうか。

まぐ ソールオリエンスは不器用なので大阪杯では捲りましたが、同じく捲りを打ったローシャムパークが2着に残しているなかで7着。ローシャムパークの方が明らかに上の内容で、ソールオリエンスは買えないなという評価です。ローシャムパークはスタートから45秒付近で捲りにでているので、かなり長く脚を使っているはず。それで2着に残したのは強い内容で高く評価しています。

こうせい 僕は2頭とも軽視の予定です。ソールオリエンスはまぐさんがおっしゃったように不器用で、軽視しようと思っている後方追走の差し馬に該当しています。ローシャムパークについては、11秒台中盤を5ハロン近く踏んだロングスパート性能の高さはもちろん認めるのですが、外からスムーズに走れる状況で全能力を発揮するタイプであるのも事実。そう考えると、この馬も“立ち回り重視”という今回のテーマからはズレます。トレンド的に、先行して辛勝のベラジオオペラよりも差し届かなかったローシャムパークの方が売れると思うので、その辺りも評価を落としたい要素になります。

立川優馬 ソールオリエンスはまぐさん、こうせいさんとほぼ同意見。ローシャムパークは、今回のレース質を「外枠・差し・スローペース」に取るので捲りも打ちやすいでしょうし、瞬発力戦に強い上がりの資質も備えています。大阪杯上位馬でもあるので順当に評価するつもりです。外が伸びる馬場だと想定しているので、内枠だろうと外枠だろうと外回し一択であろうこの馬は買いやすいですよね。

──御三方とも共通する部分、意見が真っ向から対立する部分があって興味深かったです。今日はありがとうございました。