出発する国鉄色の381系特急「やくも」を撮影する鉄道ファンら=2024年6月14日午後8時14分、岡山駅、白井伸洋撮影

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 中国地方を走るJR西日本の特急「やくも」で、国鉄時代から引き継がれた特急電車(381系)が定期運行から引退する。

 国鉄型特急電車の定期運行は現在、全国で「やくも」のみ。3色ある車両のうち、国鉄色と緑やくも色は14日、最終列車が鉄道ファンに見送られて岡山駅のホームを後にした。「ゆったりやくも色」は15日に定期運行を終える。

【前面展望動画】国鉄型特急電車381系「やくも」運転台から見る景色

 「やくも」は岡山駅と出雲市駅(島根県)を結ぶ。381系は今春導入された273系新型車両に置き換えられる。

 14日午後、「やくも」が走る伯備線で落石事故があり、ダイヤが乱れた。最終列車が約1時間遅れで午後8時すぎ、岡山駅を出発すると、構内は「ありがとう」の歓声と拍手で包まれた。

 「古い感じがいい」。母親に連れられて岡山市北区からラストランを見に来た小学1年の花谷直奎さん(6)は乗り物の図鑑で見た国鉄色「やくも」が大好きだという。大山や高梁川を背景にして疾走する「やくも」の姿がお気に入りという大阪府寝屋川市の山下泰さん(68)は「待ったかいがあった。良い思い出になった」と話した。

 沿線の米子駅(鳥取県)や出雲市駅ではラストランイベントがあり、米子駅では下車した人に記念乗車証などが配られた。

 JR西日本によると、381系車両は国鉄時代の1982年、伯備線全線と山陰線(伯耆大山―知井宮間)の電化に伴い、導入された。円滑にカーブを高速走行できるよう、振り子式が採用された。

 やくもの車両は2022年にクリーム色に赤帯の国鉄色、23年には、緑と黄色の帯が特徴的な緑やくも色といった歴代カラーで塗装され、鉄道ファンの人気を集めていた。(渡辺翔太郎、水田道雄)

■たくさんの鉄道ファンが沿線でもお出迎え

 リバイバルやくもがラストランを迎えた14日、沿線の鳥取県米子市のJR米子駅では多くの鉄道ファンが国鉄色や緑やくも色の381系車両をカメラやスマホで撮影し、別れを惜しんだ。

 この日は、岡山駅と出雲市駅(島根県出雲市)間を15往復するやくものうち、5往復が381系で、下りはいずれも満席。午前9時21分、緑やくも色の381系が駅ホームに到着すると、待ち構えたファンが最後の姿を撮影。乗客のうち約140人が米子駅で下車したが、多くの人がホームに並び、出発する緑やくも色の姿をカメラにおさめていた。

 米子駅で下車した乗客は、ラストランイベントの記念乗車証などを受け取り、改札口へ。そこには、駅員がホワイトボードに書いた381系への「感謝状」もあり、立ち止まって読む人の姿もあった。

 ラストランのやくもに乗った香川県丸亀市の高校1年、前田倫輝さん(16)は「好きな車両が乗れなくなるので学校を休んで来た。先生も『最後なら楽しんできて』と言ってくれた。沿線には写真を撮ったり、手を振ったりしている人もいて、車窓からの風景もいつもと違った。381系には10回ぐらい乗っているけど、最後に乗りたかった」と話した。(渡辺翔太郎)