あらゆる形状の超微粒子を1日あたり100万個のペースで作れる高速マイクロスケール3Dプリンティング技術が登場
3Dプリントされた微細粒子には、マイクロエレクトロニクスや医薬品の開発、複雑な部品の製造などさまざまな用途がありますが、精密な制御や人の手による工程が必要になるため、これまで大量製造は困難でした。アメリカ・スタンフォード大学の研究者らが、非常に微細なマイクロスケール粒子の製造を自動化し、1日最大100万個プリントできる処理技術を発表しました。
Roll-to-roll, high-resolution 3D printing of shape-specific particles | Nature
High-speed microscale 3D printing | Stanford News
https://news.stanford.edu/2024/03/13/high-speed-microscale-3d-printing/
Researchers develop new 3D printing technique for the mass production of microscale particles - 3D Printing Industry
https://3dprintingindustry.com/news/researchers-develop-new-3d-printing-technique-for-the-mass-production-of-microscale-particles-229256/
スタンフォード大学のジョセフ・M・デシモーネ氏らは2015年に、「連続液体界面製造法(CLIP)」を開発しました。この技術は、従来の手法のように層ごとに樹脂を硬化させるのではなく、酸素透過性の膜である「窓」からUV光を投影することで連続的に硬化させて3Dプリンティングにかかる時間を大幅に短縮するというものです。
研究チームは今回、このCLIPに生産ラインの手法を組み合わせた「ロール・ツー・ロールCLIP(r2rCLIP)」を新しく開発しました。これにより、手動入力を必要とすることなくマイクロスケールモデルを自動的に3Dプリント、洗浄、硬化、除去できるようになり、生産速度が大幅に向上したとのこと。
このアプローチにより、複雑な微細デザインの素材を大量に3Dプリントすることが可能になるため、生物医学や先端材料などへの応用が期待されています。
スタンフォード大学デシモーネ研究室の博士候補生であるジェイソン・クローネンフェルド氏は「私たちは、従来の粒子製造では示されなかったような速度で、より複雑な形状をミクロのスケールで作成できるようになりました」と述べました。
新しく開発された3Dプリンターは、最大で200マイクローメートルまでの粒子を2マイクロメートルのフィーチャー解像度で造形することが可能です。このr2rCLIPの性能を実証するため、研究チームはバッキーボールをモチーフにしたデシモーネ研究室のロゴを含むさまざまな形状の粒子を3Dプリントしました。
従来の3Dプリンティング技術では、粒子を手作業で処理する工程があるため、時間と手間がかかったとのこと。しかし、r2rCLIPはプロセスが完全に自動化されているので、1日に最大100万個の粒子を3Dプリントすることが可能です。
このr2rCLIPの高いスループットがあれば、マイクロロボットの部品や薬物成分の伝達容器まで、さまざまな粒子を大量生産できると研究チームは考えています。
研究チームは既に、マイクロエレクトロニクスの製造を念頭に置いたセラミックの硬質粒子や、体内での薬物送達技術への応用を視野に入れたハイドロゲルの軟質粒子を3Dプリントする実験に着手しています。
クローネンフェルド氏は、「私たちのアプローチは、専門家がさまざまな用途に不可欠と考える粒子生産量を満たすのに必要な製造ペースを維持しながら、高解像度の出力を得ることができるという点で際立ったものです」と述べました。