中国企業が運営している、少なくとも123のウェブサイトネットワークが、30カ国の報道機関を装ったニュースサイトで親中派の偽情報や感情に訴えるような攻撃を流す「PAPERWALL」という作戦を行っていることが明らかになりました。

PAPERWALL: Chinese Websites Posing as Local News Outlets Target Global Audiences with Pro-Beijing Content - The Citizen Lab

https://citizenlab.ca/2024/02/paperwall-chinese-websites-posing-as-local-news-outlets-with-pro-beijing-content/



中国はオンライン、オフラインの両面から影響力を高めるための作戦を展開しています。その中の1つとみられるのが、ヨーロッパやアジア、ラテンアメリカで地元報道機関を装いつつ、ニュースサイト内の大量のコンテンツの中に親中派の偽情報などを混ぜて拡散する作戦です。カナダ・トロント大学マンク国際問題研究所のThe Citizen Labは「PAPERWALL」と名付けています。

PAPERWALLと同じような作戦の存在が2022年、サイバーセキュリティ企業のMandiantにより報告されており、「HaiEnergy」と名付けられていますが、The Citizen Labのアルベルト・フィッタレッリ氏は「似ているが独自の技術・戦術・手法を持つ別個の作戦」と評価しているとのこと。

作戦を仕掛けているのは中国のPR会社・Shenzhen Haimaiyunxiang Media(通称Haimai)で、中国政府が主導しているわけではなく、民間会社が果たす役割が大きくなっているのが1つの特徴です。

PAPERWALL作戦では、HaiEnergy作戦と同様に、リリース配信プラットフォーム・Times Newswireのコンテンツが多く利用されています。The Citizen Labは、Times Newswireが配信する一見無害に見えるコンテンツの中に「人身攻撃」を含む中国寄りの政治的コンテンツが定期的に混ぜられている証拠を発見したと述べています。

これまで、同種の作戦による悪影響はあまりみられなかったのですが、PAPERWALL作戦では作戦用サイトの数が増えているほか、内容も現地言語やコンテンツに適応していて、地元メディアや読者が意図せずに接触・拡散するリスクが高まっているとのこと。

以下はサイト構成を示した図。大きく「Political Contents(政治的コンテンツ)」「Scraping Of Local Mainstream Media(主要地元メディアのスクレイピング)」「Commercial Press Release(商用プレスリリース)」の3分野に分かれていて、政治的コンテンツの中にオリジナルの攻撃的記事や陰謀論と、中国国営メディアの記事が掲載されるという形です。



以下は作戦用サイトが展開されている国を示した地図。薄ピンク色の国は確認されたサイトの数が1つ、赤色の国はサイトが2つから9つ、濃い赤の国はサイトが10件以上確認された国。最多は韓国の17件で、日本は2位の15件でした。

日本向けに展開された作戦サイトでは「fukuitoday[.]com」や「sendaishimbun[.]com」、「nikkonews[.]com」など本当にニュースサイトで使われていそうなドメインのほか、「fukuoka-ken[.]com」や「tokushima-ken[.]com」、「saitama-ken[.]com」といった県名を使用したものなどが用いられていました。

なお、作戦で用いられている、中国政府の批判者を攻撃する記事は、一定期間が経過するとサイト上から削除されるのが常だそうです。