ハマスやヒズボラなどの過激派組織は資金調達のために仮想通貨ネットワークを用いています。過激派組織の資金調達に使用される仮想通貨ネットワークは以前はビットコインが主流でしたが、記事作成時点では「TRON(トロン)」がビットコインに代わって主流の仮想通貨ネットワークとなっていることが報告されています。

Focus: New crypto front emerges in Israel's militant financing fight | Reuters

https://www.reuters.com/world/middle-east/new-crypto-front-emerges-israels-militant-financing-fight-2023-11-27/



ハマスは2019年頃から仮想通貨ネットワークを介した寄付を募っています。ハマスは寄付を募り始めた当初はビットコインを用いていたのですが、2023年4月にはハマスの軍事部門であるエゼディン・アル・カッサム旅団が「寄付者の安全を懸念し、危害を避けるため、ビットコインによる寄付の受け取りを停止する」と宣言しました。

ブロックチェーン分析会社「Merkle Science」のCEOを務めるMriganka Pattnaik氏によると、過激派組織が用いる仮想通貨ネットワークは以前はビットコインが主流だったものの、記事作成時点ではトロンが優勢になっているとのこと。

トロンは2018年にサービスを開始した仮想通貨ネットワークで、公式サイトでは1億9800万件のアカウントを抱えていることや総取引件数が67億回を超えていることがアピールされています。Pattnaik氏はトロンのメリットとして「取引が高速」「取引コストが安価」「安定性に優れる」の3点を挙げています。また、トロンネットワークでは2019年からテザー(USDT)の取引が可能となっており、トロンネットワークで取引される仮想通貨のほとんどがテザーであるとも指摘されています。



イスラエル当局はトロンのアカウントに対する規制も強化しており、2021年7月〜2023年10月に過激派組織に関連するとされる143件のトロンアカウントがイスラエル当局によって凍結されました。凍結されたアカウントのうち2023年に凍結されたものは87件で、そのうち56件はハマス、39件はヒズボラ、26件はイスラム聖戦と関係していたとされています。

また、イスラエル当局はハマスによる大規模襲撃の数週間後に仮想通貨取引所「Dubai Co.」に接続している600件のアカウントを凍結したことを発表しており、凍結されたユーザーはロイターの取材に対して「トロンを使っていた」と回答しています。ただし、取材に応じたユーザーらは過激派組織との関係は否定しているとのこと。

トロンの広報担当者はロイターの取材に対して「理論上は疑わしい活動に使用される可能性がある」と認めつつトロン運営チームと過激派組織との関係は否定しています。また、トロンのジャスティン・サンCEOはXに「当社は多様なパートナーと協力して過激派組織へ資金が行き渡らないように取り組んでいます」と投稿し、過激派組織とは協力関係にないことを強調しています。