新しい美容治療が米国市場についに登場、広範囲に影響を及ぼす可能性のある新たな部類の注射剤の到来を告げている。

5月、アラガン(Allergan)はジュビダーム(Juvéderm)によるスキンヴァイブ(Skinvive)のFDA承認を取得、10月初旬には患者が治療として受けられるようになった。スキンヴァイブはヒアルロン酸を主成分とする治療で、皮膚の最上層に水分を注入することにより、なめらかな皮膚とリフレッシュした外観となることを約束する。治療の持続期間は約6カ月間だ。

通常、ジュビダームのような従来のヒアルロン酸フィラーは、顔やシワをふっくらさせて構造を与えるために、骨のすぐ上に注入する必要があった。しかしスキンヴァイブはリフトアップや立体感を与える製品として機能するのではなく、直接潤いを与え、その結果、肌に輝きをもたらしてなめらかにする。またボトックスは神経調節薬として、筋肉の動きを抑制するシワ弛緩薬とはまったく異なる部類である。

スキンヴァイブやそれに似たスキンブースターというカテゴリーは、米国のオーディエンスはまだ認知し始めたばかりだが、ヨーロッパでは数年前からこのカテゴリーの成功を享受している。

美容注射剤市場を拡大する新たな治療薬



スキンブースターというカテゴリーは、ヨーロッパでの人気をメディアが報じたことで、ここ1年、米国で勢いを増している。スキンヴァイブは2017年からヨーロッパで利用されており、ボライト(Volite)という名称で販売されている。「スキンブースター」とは、皮内注射薬だけでなく、美容液、トリートメント、さらにはデバイスをも指す俗称である。そのため、アラガンではスキンヴァイブをスキンブースターではなく、ヒアルロン酸の微小液滴皮内注射と考えている。これは米国での使用が初めて唯一認可された微小液滴の皮内注射剤である。アラガンによると、4700万人以上の消費者が、肌のくすみや輝きのなさといった肌質の問題に悩まされているという。またそのうちの85%が、こうした肌質の問題を治療で解決することを検討したことがある。

「ジュビダームのスキンヴァイブの発売で、ボリュームアップやリフティングではなく、なめらかで潤いを与えることを目的とした、次の類の注入剤、すなわち肌質治療が登場した」と、グローバルアラガンエステティックス(Global Allergan Aesthetics)のプレジデントで、親会社のアッヴィ(Abbvie)のシニアバイスプレジデント、キャリー・ストローム氏は言う。「スキンヴァイブは、ヒアルロン酸をベースとしたまったく新しい美容治療カテゴリーを創造し、美容注射剤市場を拡大する可能性を強く感じている」。

他のスキンブースター注射剤には、ガルデルマ(Galderma)所有のレスチレンバイタル(Restylane Vital)があり、ヨーロッパではスキンブースターとして承認され、米国ではレスチレンシルク(Restylane Silk)として唇にのみ使用可能となっている。またほかに、レバンス(Revance)が所有するRHAレデンシティ(RHA Redensity)、メルツ(Merz)が所有するベロテロ(Belotero)、IBSAが所有するプロファイロ(Profhilo)もある。これらの製品のいくつかは、米国では注射可能な皮膚水分補給製品として使用できるため、「スキンブースター」として適応外の使用がされているが、厳密にはその特定の使用例に対するFDAの承認はない。目的とする最終結果は、なめらかさと水分補給に基づいて皮膚の外観を改善することだが、スキンヴァイブはこの用途に特化して設計され、FDAの承認を受けた初めての治療薬である。戦略や広告の観点からは、メーカーは承認された適応症しか宣伝できない。つまり、アラガンにはほかの競合製品に先駆けて「スキンヴァイブ」を「ボトックス」のように有名にするチャンスがあるということだ。

エステティックの世界で画期的な治療に



ニュージャージーの美容メディカルスパ、ベアエステティック(Bare Aesthetic)の創業者で看護師のヴァネッサ・コッポラ氏は、スキンヴァイブを診療で使用していると述べ、水分を好むヒアルロン酸で肌を「満たし」、最終的にリフレッシュした明るい外観をもたらす「美しい」製品だと表現する。いわば注射可能なモイスチャライザーである。

「これはエステティックの世界ではエキサイティングなことで、氷山の一角にすぎない」とコッポラ氏。「表面レベルの肌の見た目に焦点をあてた多くの製品が(市場に)出てくるだろう。数年前、誰もがKビューティのガラスのような透明感のある肌のトレンドについて話題にしていたが、これはその潤いのある外観を提供することができる」。

『ファッショニスタ(Fashionista)』誌もまた、スキンヴァイブが「ハイメンテナンス/ローメンテナンス」の美容のルーチンに与える影響に気づいている。これはジェルマニキュアやブロウラミネーション、まつげのエクステンションなどの高度なメンテナンス美容ルーチンを受けて、日常生活では手のかからないメンテナンスを維持するというものだ。スキンヴァイブの場合、モイスチャライザーに匹敵するほどの潤いとリフレッシュ感を継続的に与えることができる。一方、ストローム氏は、レーザーやマイクロダーマブレーションと組み合わせることで、スキンヴァイブが治療後のアフターケアに役立つ可能性を指摘した。ボトックスやそのほかの神経調節剤は、すでに(トックスブースター/ToxBooster治療と呼ばれる)VIピール(VI Peel)のような局所的な皮膚サービスと同時に組み合わせることができる。スキンヴァイブは肌の回復を促す製品として、エルタMD(Elta MD)、スキンシューティカルズ(SkinCeuticals)、スキンベターサイエンス(Skinbetter Science)、アラスティン(Alastin)、スキンメディカ(SkinMedica)など、専門的なチャネルで多く流通している治療後に特化したブランドを補完したり、あるいは競合させる役割を担うことができる。

コッポラ氏は、閉経期のホルモンの変化は慢性的な肌の乾燥を引き起こすため、スキンヴァイブは特に閉経後の女性にとってすばらしいものだと語った。またガルデルマの生体刺激治療であるスカルプトラ(Sculptra)は、患者のコラーゲンを再構築する働きがあるため、スキンヴァイブはスカルプトラの「上乗せ」に最適であるとも付け加えた。彼女の診療所では、過去1年間にスカルプトラのサービスが150%増加したのに対し、従来のフィラーは口唇拡大術から減少している。だがスキンヴァイブは、かつてフィラーを使用していた患者がシワを減らすために代わりに利用する可能性のあるサービスだと感じている。プレセデンスリサーチ(Precedence Research)によると、北米の皮膚充填剤の市場規模は2022年に26億ドル(約3894億円)と推定されている。

「スキンヴァイブは、肌の乾燥による頬の皮膚のなめらかさや潤いの改善に関心のあるジュビダーム未経験の患者向けの製品であると同時に、加齢によりヒアルロン酸が減少してクレープのような肌になっている注入経験豊富な患者向けの治療薬でもあると考えている」とストローム氏は述べた。

今後、市場に新たな注射剤の競合が現れる可能性も



アラガンが2月に発表した2022年第4四半期および通年の決算によると、ジュビダームコレクションを構成する5つのフィラーの世界純収入は25.4%減の3億2200万ドル(約482.4億円)だった。同社が7月に発表した2023年第2四半期決算では、国際的な成長により世界全体の純収入が前年同期比6.9%増の3億6800万ドル(約550.9億円)となり、若干の増加を示した。ジュビダームコレクションの売上高は、米国では依然として前年同期比14.5%減であった。

現在アラガンの競合企業のいずれかが、皮内スキンブースターのバージョンに関するFDAの承認を求めているかどうかはGlossyでは判断できなかったが、美的カテゴリーの競合的な性質を考えると、今後数年間で市場にいくつかの選択肢が現れる可能性がある。それまでのあいだアラガンは、新しい注射剤のカテゴリーとスキンヴァイブのメリットについて消費者を教育するため、時期は未定だが多面的なマーケティング、PR、インフルエンサー戦略を展開する計画である。そのキャンペーンの焦点は、この治療が治療部位を増強してボリュームを追加する従来のフィラーとはどのように異なるかという点になるだろう。さらにアラガンは「強力な」注入剤マーケティングプログラムを実施し、開業医にスキンヴァイブの使用と患者への情報提供を奨励する予定である。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: You’re about to hear about Allergan’s new Skinvive treatment everywhere]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)