内向的な性格の良さをリーダーシップに発揮してみませんか(写真:metamorworks / PIXTA)

人と話すのは嫌いではないけれど雑談は苦手。会話では聞き手に回ることが多く、ひとりで過ごす時間も必要……。そのような内向的な性格の人は、外向的な人に比べて社交性やリーダーシップに欠けると思い込んでいませんか。

しかし「内向型の人は素晴らしいリーダーになることができる」と断言するのは、自身も内向型だというビジネスコーチのティボ・ムリス氏。著名人の実例を踏まえながら、内向的な性格だからこそ、つかめる成功のチャンスについて著書『「ひとりが好きな人」の上手な生き方』から一部を抜粋/再編集してお届けします。

リーダーに向くのは外向型、の間違い

その気になれば、誰もがリーダーになることができる。リーダーになることは、外向型の人にだけ与えられた特権ではない。

もし周囲の人に好ましい影響を与えているなら、あなたはすでにリーダーだと言える。自分の人生を適切にコントロールしているなら、リーダーの資質を持っている。

結局のところ、優れたリーダーとは、人々を正しい方向に引っ張っていく人のことだ。しかし、もし人々があなたの行動を見て感動しないなら、どうやって彼らを導くことができるだろうか?

リーダーシップは内面から始まる。自分の心身をコントロールする能力が、影響力の度合いを決定づける。それは外向型の人だけの資質ではない。

実際、多くの偉大なリーダーが内向型だった。大きな声は出さなかったが、彼らの行動は言葉よりも大きなインパクトを持っていた。ガンジーの名言を引用するなら、彼らは「自分が見たい変化を体現していた」のだ。

人々に勇気を与えて導くことができるかどうかは、彼らがあなたをお手本とみなすかどうかにかかっている。自分がリーダーかどうかを知りたいなら、「周囲の人に好ましい影響を与えているか?」と自分に問いかければいい。

あなたはパートナーや子ども、友人、同僚に好ましい影響を与えているだろうか? 人々はあなたを手本とみなしているだろうか?

内向型の人は素晴らしいリーダーになることができる。実際、私たちは何らかの状況下で外向型の人たちをしのぐことができる。


「ハーバード・ビジネス・レビュー」の研究によると、外向型の人たちを導くうえで、内向型の人のほうが外向型の人より優れたリーダーシップを発揮した。

その逆も真実で、内向型の人たちを導くうえで、外向型の人のほうが内向型の人より優れたリーダーシップを発揮した。

要するに、あなたは内向型として、外向型の人たちと同じくらい優れたリーダーになれるということだ。

“内向型”の先人から学ぶ

ここでは、大成功を収めた内向型の人たちの代表例を紹介しよう。

世の中で最も大きな成功を収めている人たちの中には、内向型の人がたくさん含まれていることがわかるはずだ。彼らを分析すると、内向的な性格が大成功の要因だった可能性が高い。

▼ビル・ゲイツ(アメリカの実業家、マイクロソフト共同創業者)

ビル・ゲイツはふだんとても物静かだが、ビジネスへの情熱に関しては非常に熱く夢を語る。これは多くの内向型人間に当てはまる。内向型人間は情熱を燃やすことによってエネルギッシュになり、大きな力を得ることができるのだ。

ゲイツはスピーチの中で次のように言っている。

「内向型人間は大成功する可能性がある、と私は確信しています。もし熱心な勉強家なら内向的な性格の恩恵を受けることができるでしょう。

なぜなら数日間、ひとりきりで過ごし、困難な問題について考え抜き、関連書を片っ端から読んで調べ、その分野について知り尽くすことができるからです」

▼ウォーレン・バフェット(アメリカの投資家、バークシャー・ハサウェイ会長)

大成功を収めたこの世界的な投資家も内向型だ。相場の動向に興奮して無謀なことをするのではなく、冷静に計算してリスクをとれることが、彼の成功の要因のひとつだろう。

多くの投資家がウォール街の近くに住んでいる中で、彼は喧騒から離れたネブラスカ州オマハのつましい家に住んでいる。

▼マーク・ザッカーバーグ(アメリカの実業家、メタ・プラットフォームズ創業者)

フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)の創業者マーク・ザッカーバーグも内向型だ。

彼は外向的な経営者たちほどの人脈を持っていないかもしれないが、本当の意味でのつながりをつくり、スタートアップの創業者に彼の会社に加わるように説得する能力を持っているのは大きな強みである。

内向型として人脈の広さより深さを優先したいという思いは、彼にとって有利に働いているようだ。

ブレンダン・アイリブ(オキュラス創業者、元CEO)は「ファースト・カンパニー」誌のインタビュー記事でこう言っている。

「マーク・ザッカーバーグがスタートアップの創業者たちに働きかけて、自分の会社に加入し、一緒に働くように説得しているという事実は、私たちを信頼してくれていることの証しだと思います。

私がとくに説得力があると感じるのは、彼が一緒に多くの時間を過ごしてくれることです」

内向型の素晴らしいエンターテイナー

▼クリスティーナ・アギレラ(アメリカのシンガーソングライター)

彼女は外向型のように見えるかもしれないが、実際には内向型である。

「マリ・クレール」誌のインタビュー記事で、かなりの内向型であることを明かしている。この事実は、内向型でも素晴らしいエンターテイナーになれることを示している。

実際、私たちにとって、何らかの人物を演じたり、トークショーの主役をつとめたりすることは、とても楽しいことである。だから私はときおり人前で話すことを楽しんでいる。

聴衆は私の話に耳を傾けてくれるから、とても気分がいい。

▼エマ・ワトソン(イギリスの女優、活動家)

外向型のように振る舞うことが期待されている世の中で、彼女は自分に欠陥があると感じていた。外出して友達と遊ぶのが大嫌いだったのだ。

内向性について学んだことで気分が安らぎ、とても勇気づけられたと語っている。

「実を言うと、私は社交性に欠ける典型的な内向型人間です。パーティーで脚光を浴びると、いつも緊張してしまいます。それは私にとって刺激が強すぎるのです。

だからそんなときは休憩をとるために、いつも洗面所に行くことにしています。私をパーティーで見かけた人はたくさんいることでしょう。

でも私は大勢の人と一緒にいると不安で仕方がないのです。雑談は大の苦手で、集中力が続きません」

ひとりのときに最高の思索を

▼マハトマ・ガンジー(インド独立の父)

ガンジーにとって、人前で長いあいだ話すことは、いつも苦痛の種だった。多くの内向型の人と同様、スピーチの準備に時間がかかった。彼は入念に言葉を選ぶ思慮深さのおかげで多くの問題を回避できた。

ガンジーはこう言っている。

「私が自信を持って言えるのは、思慮に欠ける言葉を発したり書いたりしたことがほとんどないことだ。私はスピーチや本で不適切なことを言ったり書いたりして後悔した記憶がない。

おかげで多くのトラブルを避けることができ、そのために貴重な時間を浪費せずにすんだ」

▼アルベルト・アインシュタイン(ドイツ生まれのアメリカの物理学者)

多くの内向型人間と同様、アインシュタインはひとりでいるときに最高の思索をすることができた。ひとりで過ごして問題に対して長時間向き合えたことが、大きな功績につながったのだ。

注意が散漫にならずに特定の問題に集中することが、成功の重要な条件であることが証明された。彼は「私はそんなに頭がいいわけではなく、問題に対して普通の人より長く取り組めるだけだ」という名言を残している。


ここで紹介した人たちほどの大成功を私たちが収めることはできないかもしれないが、成長の余地がまだかなりあることは断言できる。

内向型であることをハンディキャップとみなすのではなく、自分の内向的な性格を歓迎することは、社会に貢献する原動力になる。

ただし、どうやって社会に貢献するかが問題である。粘り強さを通じてか、思慮深さを通じてか、アイデアを通じてか、情熱を感じる対象に取りつかれることによってか?

それはあなた自身が決めることだ。

(ティボ・ムリス : ビジネスコーチ・著述家)