シイタケは日本を代表するキノコであり、近年ではアジア以外の欧米諸国でも食べられるようになっています。そんな中、スイスに住む72歳の男性が調理が不十分なシイタケを食べたところ、体にまるでムチに打たれたような発疹が出る「シイタケ皮膚炎」という病気を発症してしまったと、スイス・ジュネーブ大学病院の医師らが報告しました。

Shiitake Dermatitis | NEJM

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm2304409



Undercooking Shiitake Risks This Intensely Itchy Rash

https://www.newsweek.com/shiitake-mushrooms-rash-dermatitis-medicine-1834444

Man gets rare 'shiitake dermatitis' from undercooked mushrooms | Live Science

https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/man-gets-rare-shiitake-dermatitis-from-undercooked-mushrooms

今回報告された72歳の男性は、シイタケを使った食事をとってから2日後に、背中全体にまるでムチに打たれたかのような発疹(紅斑)が現れたとのこと。この紅斑はひどいかゆみを伴い、眠ることすら困難だったそうです。

以下の写真が、実際に男性の背中に現れた紅斑を撮影したもの。背中一面にしま模様の紅斑が出ていることが確認できます。



医師らがこの紅斑を診察したところ、皮膚を強く引っかいたりこすったりしたわけではなく、細菌やウイルス感染によってリンパ節が腫れているという兆候もなかったとのこと。その後、男性がこの数日間で何を食べたのかを聞き取り調査して、2日前に食べたシイタケが原因である「シイタケ皮膚炎」を発症したと医師らは結論付けました。

シイタケ皮膚炎は1977年に日本で初めて報告された病気であり、生または半生のシイタケを食べた人の約2%が発症するほか、乾燥シイタケの戻し汁を飲んだり、シイタケ加工品を食べたりした人が発症するケースもあります。症例は主に日本や中国で報告されていますが、ヨーロッパや北米など、その他の地域でも報告されているそうです。

シイタケ皮膚炎が起きる正確なメカニズムは特定されていませんが、有力な仮説は「シイタケに含まれるレンチナンという多糖類に対する免疫媒介性の過敏反応である」というものです。レンチナンは炎症を引き起こすインターロイキン-1という生理活性物質の放出を促進し、血管の拡張や発疹などを誘発するとのこと。レンチナンは加熱によって分解されるため、シイタケをセ氏145度以上で完全に調理すればシイタケ皮膚炎は発生しないと医師らは指摘しています。



シイタケ皮膚炎は命に関わるような病気ではなく時間が経てば自然に治りますが、医師らは症状を緩和するために背中に塗るステロイドと経口の抗ヒスタミン薬を処方しました。また、男性にはシイタケを十分加熱して食べるようにアドバイスしたとのことです。

なお、男性の症状は2週間後の診察時点でだいぶ和らいでいたものの、炎症後の肌によくみられる色素沈着が残っていたと報告されています。