ゼッテリアは、すき家のゼンショーがロッテリアをリニューアルした新ブランド(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第43回となる今回、訪れたのは「ゼッテリア」です。

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飲食チェーンが密かにしのぎを削っているジャンル「モーニング」。午前中の集客が弱い時間帯の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。

とくに力を入れているのがハンバーガー業界。業界第1位マクドナルドの「朝マック」が1985年に始まったのを筆頭に、「モスバーガー」「フレッシュネスバーガー」など、多くの店舗で朝限定メニューを販売しています。

今回ご紹介するのは「ゼッテリア」のモーニング。業界店舗数第4位で、約300店舗を運営する「ロッテリア」の新業態として、9月20日に第1号店をオープンした、話題の店舗です。

ゼッテリアは「ゼンショー」が仕掛ける新バーガーチェーン

まずは「ゼッテリア」について、簡単にご説明をさせてください。長らくロッテ系列のハンバーガーチェーンとして運営されてきた「ロッテリア」ですが、2023年4月にゼンショーホールディングスに売却されました。

ゼンショーは、「すき家」「はま寿司」「ビッグボーイ」など、さまざまなジャンルの飲食チェーンを運営する企業で年商は約7800億円(2023年3月決算)。外食産業では2位の日本マクドナルドHDの3523億円(2022年12月決算)をダブルスコアでぶっちぎる、トップの売上高を誇ります。


ハンバーガーを模したアイコンにはZの文字が隠れています。ロゴのフォントはロッテリアのまま!?(筆者撮影)

ゼンショーがロッテリアを運営することになり「大幅なメニューチェンジや価格の変更はあるのか?」、そもそも「ロッテリア」が「ロッテグループのカフェテリア(セルフサービスの食堂)」という意味合いを持つ造語なので、「店舗名の変更はあるのか?」と、注目していたのですが、M&Aから約半年、ようやく大きな動きがありました。

公式では「ゼッテリア」の店名の由来は、「メイン商品である絶品バーガーとカフェテリアを組み合わせた」と発表されていますが、「ロッテリア」の由来を考えると、「ゼンショーグループ」の「カフェテリア」だから「ゼッテリア」なのでしょう、たぶん。

ゼッテリアのモーニングメニューは7種類

「ゼッテリア」のモーニングメニューの提供時間は開店(午前6時30分)から午前10時30分までです。

「ゼッテリア」は店名もロゴの雰囲気も「ロッテリア」に似ているし、絶品というメニュー名は「ロッテリア」でも使っていたので、「ロッテリアっぽいメニュー」を提供するのかと思っていたのですが、さにあらず。バンズから完全にオリジナルでメニュー開発をしてきていました。この時点で、やや予想を裏切られました。

メニューは7種類。単品販売のほか、ドリンクSを組み合わせて「コンビ」にしたり、ベイクドポッフル(ポテトを使ったサイドメニュー)とドリンクSを組み合わせて「セット」にもでき、キッズメニューやサイドメニューも提供しています。


ワンコインを少し超える価格帯が中心です(筆者撮影)


キッズメニューはおもちゃ付き。かわいいですね(筆者撮影)

・ソーセージマフィン 単品税込290円
・ソーセージエッグマフィン 単品税込340円
・ソーセージレタスマフィン 単品税込340円
・ソーセージエッグレタスマフィン 単品税込390円
・えびバーガー 単品税込420円
・タルタルチキンバーガー 単品税込340円
・ワッフル 単品税込290円

単品価格に、プラス100円で「コンビ」、プラス200円で「セット」にできます。カフェオレは差額分が代金に追加されていました。

「コンビ」「セット」のドリンクはプラス50円でMサイズ、プラス100円でLサイズに、サイズアップできます。

コーヒーはフェアトレードコーヒーを使用していたり、コーラやメロンソーダ、オレンジジュースなど定番のソフトドリンクのほか、ゆずレモンソーダや緑茶など、同業他社にはないようなメニューもありました。

ゼッテリアのソーセージマフィンセット490円


ゼッテリアのソーセージマフィンセット490円(ドリンクS、ベイクドポッフル付き)(筆者撮影)

「ソーセージマフィンセット」は、セット料金で500円を割ってくる、ワンコインモーニングを考えた価格設定や、モーニングメニューのトップに記載されているあたり、おそらくこれが朝の看板メニューであろうということで、注文してみました。

包み紙から出してみて、驚いたのはバンズが横長だったこと。サイズは長手で11.5cmほど、短手で6.5cmほどで、通常の丸いハンバーガーのバンズよりもひとまわり小さい印象です。ただしその分、厚みがありました。


楕円形のバンズを採用。ふわふわのマフィンは食べたことのない食感でした(筆者撮影)

「これはマフィンなのか?」と驚くほど、弾力性がありシフォンケーキぐらい気泡が入ったふわふわの食感のマフィン。口に入れると確かにマフィンの味がするのですが、初めて食べる味で、うれしい驚きがありました。

ソーセージパティも粗挽きでプリプリ。しっかりめの味付けで、塩加減もいい感じです。ただし、ニューオープンならではの慌ただしさのためか、パティが芯まで温まりきっておらず、ソーセージの温度が低いため、スライスチーズもとろけずで、そこは少し残念でした。


マフィンもソーセージパティもしっかり厚みがあり、食べ応えがありました(筆者撮影)

ただ、それでも味はなかなかのもの。「もしこのソーセージパティがホカホカだったら、噛むと肉汁がじゅわっとあふれて、とろとろのチーズがまろやかさとコクを追加して、さぞやおいしかろうなぁ」と素直に思えたので、今後のオペレーションに期待して、リベンジしたいです。

気になる「ベイクドポッフル」の正体は…


マッシュポテトで作ったワッフル、ベイクドポッフル(筆者撮影)

セットについてくる「ベイクドポッフル」は、マッシュポテトをプレスして焼いた、他店のハッシュポテト的なサイドメニューです。多分「ポテトのワッフル」という意味合いで命名したと解釈しました。

味はお菓子系ではなくおかず系で、しっかりめの味付け。外はカリカリ中はほくほくもっちりで、おもしろみがある食感で、洋風のおやきを食べているよう。少し時間をおいてから食べると、表面がカリカリからしっとりに変化し、冷めてもおいしかったです。

手のひらよりも少し大きいぐらいのサイズ(直径約11cm)で、薄いけれど、けっこうな食べ応えがあり、お腹にずっしりとたまりました。


ベイクドポッフルの断面。ハッシュポテトにはない独特のしっとり感(筆者撮影)

ドリンクは「ペプシ ゼロ」をチョイス。ハンバーガーチェーンのソフトドリンクはサントリー系かコカ・コーラ系の2大派閥なのですが、「ゼッテリア」はサントリー系でした。「ペプシコーラ」と「なっちゃん」が飲めます。

ゼッテリアのタルタルチキンバーガーコンビ440円


ゼッテリアのタルタルチキンバーガーコンビ440円(ドリンクS付き)(筆者撮影)

「タルタルチキンバーガー」は、バンズに揚げたチキンとタルタルソースをはさんだ、ボリュームバーガーです。モーニングメニューだけでなく、レギュラーメニューでも販売しているので、終日オーダーすることができます。

チキンは、サクッというよりはカラッという感じ。表面がツヤツヤで食欲をそそります。しっかり下味がついた、しっとりジューシーなとりもも肉を、薄い衣で揚げてあり、洋風ながら和のテイストもどこかしら感じさせる、深みのある味付け。酸っぱくて濃厚なタルタルもたっぷり入って、朝から背徳感満載のおいしさを楽しめました。


ツヤツヤピカピカのバンズで、薄い衣のチキンパティとタルタルをサンド(筆者撮影)

バンズは横長で、サイズは小さめながらふっくら厚みがあります。表面は、卵黄を塗って焼いてあり、てっぺんは艶のあるこげ茶色で、つるりとした舌触りが楽しめ、なかは空気をたっぷり含んだ水分量少なめの生地が、サクふわっ。軽い食べ心地ながら、ほんのりした甘みで、濃い味の具材をうまくまとめてくれていました。


断面図。さっくりバンズとふっくらとりもも肉とこってりタルタルの、朝から罪深いおいしさ(筆者撮影)

系列のノウハウが生きた「フェアトレードコーヒー」

ドリンクはホットコーヒーを選びました。フェアトレードコーヒーを使用していることが、看板にも紙コップホルダーにも記載されています。

フェアトレードコーヒーとは、適正な値段で途上国から輸入したコーヒー豆を指します。SDGsや人道的観点で考えればフェアトレードに越したことはないのでしょうが、それ以外のコーヒーと比べてどうしても値段が高くなるため、フェアトレードコーヒーを看板にかかげているカフェチェーンはめったに見かけません。


ゼッテリアの看板にもフェアトレードコーヒーと記載がありました(筆者撮影)

ゼンショー系列のカフェチェーン「モリバコーヒー」は、フェアトレードコーヒーを使用しているにもかかわらず、安価でコーヒーを販売している、めったに見かけない店のうちの1つなのですが、ゼンショーならではの直接かつ大量に買い付けできる資本力と、(SDGsにも配慮しつつの)薄利多売のノウハウが「ゼッテリア」にも生かされているようで、うれしい限りです。

関連記事:コメダに匹敵も?超実力派の「420円モーニング」

味もハンバーガーチェーンのコーヒーとは思えないほど本格的で、コーヒーを飲むためだけに、この店を訪れてもいいぐらいのレベルの高さです。「バーガーにプラス100円でこれが飲めるのはすごい」と、軽い感動を覚えました。


紙コップホルダーにも、フェアトレードコーヒーの記載がありました(筆者撮影)

朝だけでなく、昼も夜も同じコーヒーが出てくるとは思うのですが、とくに朝に飲みたい、目覚めの一杯にぴったりな爽やかさで、香りもよく、苦さは控えめ。ほんのりした酸味があり、おしゃれなサードウェーブコーヒー店で出てくるような、フルーティーな味わいでした。

さらなる進化が期待できそうな、ワクワクするハンバーガーチェーン

「ゼッテリア」は「ロッテリア」の進化系店舗だと思っていたのですが、隠し味に和の要素も含まれ、そこに「すき家」っぽさを感じたり、「モリバコーヒー」と同じく、フェアトレードコーヒーを採用したりと、ゼンショーならではの強みを出してきてるなぁという印象を持ちました。

バンズを横長にしたり、看板メニューに“絶品”というワードをつけてくるあたりに、同業他社との差別化を明確にしたいという狙いも感じます。


店内の壁にもZEPPINBURGERのマークが(筆者撮影)

価格設定は「マクドナルド」と比べると安くはないものの、そのほかのハンバーガーチェーンのなかでは、お手頃な印象です。なにより「ロッテリア」で税込270円で販売している「シェーキ」が「ゼッテリア」では税込220円になっているなど、全体的に見ても「ロッテリア」よりも価格帯は下げて、味を上げるという気概が満々です。

別チェーンの話になり恐縮ですが、以前「大戸屋」が外食大手「コロワイド」に買収された時、熱心なファンからは「大戸屋の味が失われるのでは……」と不安視されていた時期がありました。しかし、「コロワイド」傘下に入ったことで、むしろ品質は下がらずに価格はお値下げ(その後、円安等で値上げとなりましたが)。

今回の「ゼッテリア」も、同じようなシナジーが今のところは感じられました。「ロッテリア」は過去に本連載でも紹介し、想像以上に良かったとご紹介していますが、「ゼッテリア」はさらにその上をいってくれた印象です。

関連記事:ロッテリア「560円モーニング」が想像以上だった

「ゼッテリア」は現在はまだ1店舗しかありませんが、メニューもさらにおいしさとコストのバランスよく、進化を続けていくのでしょう。ハンバーガーチェーンの台風の目になって、新しい風を吹かせまくってほしい。

今後「ゼッテリア」の店舗が増えるのか、「ロッテリア」の面影を完全に消し去るのかはわかりませんが、ゼンショーが運営するハンバーガーチェーン、面白くなりそうな予感がします。

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)