猛暑の屋外で一日立ち続ける交通誘導員の仕事の実態
通勤のために毎朝駅まで行くだけで汗だくになるような猛暑が続く今年の夏だが、オフィスで仕事ができる人であればまだいい。さらに過酷なのが屋外で仕事をしている人たちである。
その代表格といえば、交通誘導員だろう。強烈な陽射しの下でも分厚い制服を着て、立ちっぱなしで仕事をする交通誘導員を見て「きつそうな仕事だな」と思ったことがある人は少なくないはずだが、彼らの仕事がどんなものなのかは、意外と知らないものかもしれない。
■自分の誘導で接触事故…交通誘導員のストレスフルな日常
『交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます』(柏耕一著、フォレスト出版)はそんな交通誘導員たちの仕事や日常を描いたエッセイである。イベント会場や工事現場など、誘導員の需要は多い。そして現場では人も車も彼らの誘導通りに動く。絶対に事故があってはいけない。プレッシャーの大きい仕事でもあるのだ。
本書によると、誘導員が一番恐れるのは、自分の誘導ミスによる事故なのだそう。しかし、長年この仕事をしていると、どうしても事故に出くわしてしまう場面はあるようだ。
著者の柏さんも一度だけ自分の誘導で接触事故を招いてしまったことがある。建築現場での仕事の際、現場の前の細い道で事故は起こった。現場前の道に停車している2トントラックをバック誘導して、現場横の信号のない交差点で方向転換させようとした時のこと、トラックが交差点にさしかかったあたりで、反対方向からゆっくり直進してくるミニバンがいた。
道が狭いため、柏さんは交差点中央あたりにいるトラックも、やってくるミニバンも一時停止させようとした。そのうえでトラックを方向転換させてからミニバンを通そうとしたのである。ところが、ミニバンは誘導に従わずに直進し、強引にトラックの脇を通り抜けてしまった。その時にミニバンはトラックにこすってしまったという。
身勝手な運転からして、いかにもミニバンの運転手は車に傷がついたことでクレームをつけそうな予感がする。まだその警備会社に入ったばかりだった柏さんも入社早々の事故に冷や汗をかいたが、ミニバンの運転手は車から降りてくることはなく、さらにいえば車を止めることもなくそのまま走り去ってしまった。ミニバンには大きな傷がついていた。
接触事故に気づかないとは考えられないが、運転手は電話をしていたか、スマホでも見ていたのだろうか。妙な事故だったが、ドライバーによっては「警備員に誘導されたから」「警備員の誘導ミス」と主張する人もいる。柏さんからしたら救われた一件だった。というのも、誘導にしたがったら接触事故を起こしたというドライバーが、示談になると「その筋の人」を前面に出して、補償金500万円を要求する、というような事案が実際にあるそう。こういう場合、警察も民事不介入で動いてくれないというから厄介である。
◇
日々様々なドライバーと触れ合っている誘導員だが、中には面倒なドライバーや理不尽なドライバーもいる。本書では肉体労働でありサービス業でもある交通誘導員の悲哀と喜びがつづられている。
誘導員が好きになれない人について。また歯がない誘導員が多い理由など。社会の黒子として奮闘している彼らの日常と実像を知ることができる一冊だ。
(新刊JP編集部)
【関連記事】
「衰退のはじまり」か「成長のための踊り場」か GAFAMの人員削減が意味するもの
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その代表格といえば、交通誘導員だろう。強烈な陽射しの下でも分厚い制服を着て、立ちっぱなしで仕事をする交通誘導員を見て「きつそうな仕事だな」と思ったことがある人は少なくないはずだが、彼らの仕事がどんなものなのかは、意外と知らないものかもしれない。
『交通誘導員ヨレヨレ日記――当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます』(柏耕一著、フォレスト出版)はそんな交通誘導員たちの仕事や日常を描いたエッセイである。イベント会場や工事現場など、誘導員の需要は多い。そして現場では人も車も彼らの誘導通りに動く。絶対に事故があってはいけない。プレッシャーの大きい仕事でもあるのだ。
本書によると、誘導員が一番恐れるのは、自分の誘導ミスによる事故なのだそう。しかし、長年この仕事をしていると、どうしても事故に出くわしてしまう場面はあるようだ。
著者の柏さんも一度だけ自分の誘導で接触事故を招いてしまったことがある。建築現場での仕事の際、現場の前の細い道で事故は起こった。現場前の道に停車している2トントラックをバック誘導して、現場横の信号のない交差点で方向転換させようとした時のこと、トラックが交差点にさしかかったあたりで、反対方向からゆっくり直進してくるミニバンがいた。
道が狭いため、柏さんは交差点中央あたりにいるトラックも、やってくるミニバンも一時停止させようとした。そのうえでトラックを方向転換させてからミニバンを通そうとしたのである。ところが、ミニバンは誘導に従わずに直進し、強引にトラックの脇を通り抜けてしまった。その時にミニバンはトラックにこすってしまったという。
身勝手な運転からして、いかにもミニバンの運転手は車に傷がついたことでクレームをつけそうな予感がする。まだその警備会社に入ったばかりだった柏さんも入社早々の事故に冷や汗をかいたが、ミニバンの運転手は車から降りてくることはなく、さらにいえば車を止めることもなくそのまま走り去ってしまった。ミニバンには大きな傷がついていた。
接触事故に気づかないとは考えられないが、運転手は電話をしていたか、スマホでも見ていたのだろうか。妙な事故だったが、ドライバーによっては「警備員に誘導されたから」「警備員の誘導ミス」と主張する人もいる。柏さんからしたら救われた一件だった。というのも、誘導にしたがったら接触事故を起こしたというドライバーが、示談になると「その筋の人」を前面に出して、補償金500万円を要求する、というような事案が実際にあるそう。こういう場合、警察も民事不介入で動いてくれないというから厄介である。
◇
日々様々なドライバーと触れ合っている誘導員だが、中には面倒なドライバーや理不尽なドライバーもいる。本書では肉体労働でありサービス業でもある交通誘導員の悲哀と喜びがつづられている。
誘導員が好きになれない人について。また歯がない誘導員が多い理由など。社会の黒子として奮闘している彼らの日常と実像を知ることができる一冊だ。
(新刊JP編集部)
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