台湾と与那国島は、直行便なら船で1時間半〜2時間程度で行ける(写真は台湾の游錫?立法院長のフェイスブックから)

写真拡大

日本最西端の島・与那国島(沖縄県与那国町)と対岸の台湾を高速船で結ぶ構想が、少しずつ前進しそうだ。2023年7月4日には台湾の国会議長にあたる游錫堃立法院長が北東部、宜蘭県の蘇澳港から台湾の高速船で与那国島を訪問。超党派議員連盟「日華議員懇親会」の古屋圭司会長らと合流し、その日のうちに台湾に戻った。

今回の運航は台湾側が主導したが、別途日本側でも高速船の定期便運航に向けた動きは続いており、元々は21年度に試験運航を目指してきた。それがコロナ禍で棚上げになっている間に台湾側に先を越された形だが、23年度中に試験運航にこぎ着けたい考えだ。

直行便なら船で1時間半〜2時間程度で行ける

与那国島は沖縄本島から約500キロ、石垣島から約120キロ離れているが、台湾までは約110キロ。東部にある姉妹都市の花蓮市までは約150キロだ。航空便なら30〜40分、高速船でも1時間半〜2時間程度で行ける距離だ。ただ、今は直行便がないため、実際に往来しようとすると「与那国→石垣→那覇→台北→花蓮」と、「近くて遠い」存在だ。

游氏のフェイスブックの書き込みによると、「船に乗った99人全員が日本の西の果てに足を踏み入れるのはこれが初めてで、興奮は頂点に達した」。「コロナ前」19年に台湾を訪れた日本人は約200万人で、

「そのうちの1%が日本の西の果ての島々を訪れたいと考えているとすれば、2万人以上の観光客が訪れることになる」

と、ボーダーツーリズム(国境観光)への期待を寄せた。

一方、与那国町では以前から「八重山地域と台湾を結ぶ高速船運航実現を推進」することを掲げており、20年には与那国町が提案していた「国境交流結節点化推進事業」に対して内閣府の「沖縄振興特別交付金」の交付が決まり、コンサル会社に委託して(1)運航許可に必要な手順の整理(2)需要の調査(3)町内にある2つの港には税関・出入国審査・検疫(CIQ)の体制がないため、申請のための具体的手順を整理(4)使用する高速船に求められる条件を整理、といった作業を進めることを発表していた。

「国境交流結節点化推進事業」自体は継続、23年度中の試験運航目指す

この時点では21年度に実証実験としての運航を目指していた。だが、沖縄県のウェブサイトで公開されている事業の「検証シート」によると、20年度は「高速船就航のための社会実験の準備事業として申請手続き等の個別マニュアルの作成を行った」ものの、21年度の運航については次の記述があり、足踏み状態だ。

「当初計画ではR3年度(編注:21年度)に実証実験を行う予定だったが新型コロナウイルス感染症の収束見通しが立たなかったため実施時期の見直しを行う必要が出たため未実施となっている」

ただ、与那国町の企画財政課によると、事業自体は継続しており、23年度中の試験運航を目指すとしている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)