大分県中津市の名店『あげ処ぶんごや』の「骨なしもも身」 | 食楽web

●からあげの聖地・大分県中津市のからあげはなぜウマい? 日本唐揚協会認定カラアゲニストであり、生まれも育ちも大分県中津市のライター・松本壮平氏が名店を紹介

 “からあげの聖地”として名高い九州・大分県中津市。市内には50~60軒のからあげ店があり、その数は同エリアのコンビニの数より多いと言われているほど。中津にからあげ店が多い理由としては、第二次大戦後の食糧難に備え、国の方針で多くの養鶏場が作られたことや、旧満州から引揚げてきた人たちが中国の調理法を再現して広まり、定着したなどの説があります。

 なので中津市ではからあげ専門店に限らず、古くから市内の精肉店や惣菜店、食料品店などでもからあげが売られてきました。そのからあげの特徴としては、(1)作り置きはせず注文が入るたびに揚げる、(2)肉の中心まで味がしっかり付いている、(3)冷めても美味しい――などが挙げられます。

 今回は、そんな中津からあげの名店の一つで、一子相伝の老舗精肉店のからあげが味わえる『あげ処ぶんごや』の逸品をご紹介します。

伝統を受け継ぎつつ進化させていく一子相伝の老舗精肉店のからあげ

『あげ処ぶんごや』。県外からわざわざ訪れる客も多く、店頭には記念撮影用の顔出しパネルも

 筆者は常々「お肉屋さんや焼鳥屋さんのからあげにハズレなし」と言ってきました。鶏肉を熟知したプロが作るからあげはとにかく美味しい。そして中津市内で50年以上続く精肉店『豊国畜産ぶんごや』の正規直営店『あげ処ぶんごや』も、そんなお店の一つです。

 テイクアウト専門のこのお店、扉を開けて店内に入ると屋外とはまるで別世界。得も言われぬいい香りに包まれます。満腹状態でもこの香りに接したとたんにお腹が空いてきてしまう不思議な空間。

明るいキャラクターで人気の店主・西郡信喜さん。実家の『豊国畜産ぶんごや』の味を守りつつ、時代に合った美味しさの追求にも熱心な、聖地・中津のからあげ界をリードする人物の一人

『あげ処ぶんごや』を初めて訪れたなら、ぜひ食べてほしいのが「骨なしもも身」(100g・290円)と「手羽先」(100g・250円)。前述の通り、作り置きはせず、オーダーが入ってから揚げていくのが中津からあげの流儀。魅惑的な揚げ音と、からあげの芳醇な香りに包まれながら待つことおよそ6~7分でからあげが完成します。

 精肉店のからあげというだけあり、肉の鮮度は抜群。明治38年創業の『田中醤油』で特注した甘口の醤油のほか、ニンニク、ショウガなどで味付けしたからあげは、揚げたてで香りも最高。この香りだけでご飯が食べられそうな芳香です。

「骨なしもも身」。鮮度バツグンでまさに王道の中津からあげ。断面から湯気とともに肉汁がじんわり。これが食欲をソソる!

 まずは「骨なしもも身」は衣と肉の一体感がとにかく素晴らしい。揚げたてアツアツ、ヤケドに気をつけながら歯を入れていくと、衣が肉を巻き込むようにして口中に侵入してきます。肉の旨みがしっかり溶け込んだ肉汁が、衣をじわじわ溶かしながら渾然一体となっていく食感と旨さは、まさに唯一無二。

 醤油ベースですが、意外とあっさり。肉本来の旨みとバランスよく調和しています。これぞ王道とも言うべき中津からあげの味わい。思わずゆっくり息を吐くように「う、ウマい…」と声が漏れ出てしまいます。全身に美味しさのエキスがじわじわと浸透していくようです。

からあげグランプリ・手羽先部門で金賞を3回受賞した手羽先からあげは肉厚で可食部が多い!

 続いて手羽先。これまた肉厚で可食部豊富なのがウレシイ。手羽先は骨付きなので食べにくい印象がありますが、こちらのものは骨離れ良好。肉汁と共に肉がスルリと舌の上に飛び出してきてくれます。このほかにもムネ肉や手羽元、砂ずりなどのからあげもあります。好みのものに出会えそうですね。

肉厚で食べごたえのある手羽先

 こちらのからあげ、店主・西郡さんのお父さんの代から始まっていたそうで、肉だけでなく水や塩にまでとことんこだわっています。そんなお店で生まれ育った西郡さんいわく、「伝統の味を受け継ぎながら、時代に合わせて少しずつ進化させている」とのこと。まさに一子相伝の味。

まとめ

こちらは「鶏皮からあげ」。一度食べ始めると止まらなくなる美味しさ!

 からあげの美味しさは言うに及ばず、西郡さんの明るく元気な接客にもファン多数。わざわざ遠方から買い求めに来るお客さんも多くいます。未体験の人は、ぜひ一度味わってみてください。本当に美味しいですよ。

●SHOP INFO

店名:あげ処ぶんごや

住:大分県中津市上宮永2丁目146-1
TEL:0979-64-6550
営:11:00~19:30
休:月(祝日の場合は火)

●著者プロフィール

松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。