法廷で録音敢行の国選弁護人、大阪地裁から解任される 即日不服申し立て
大阪地裁に係属中の刑事事件で、法廷での録音許可を求めた国選弁護人が裁判所から解任されたことが、12月5日にわかった。弁護人は同日、憲法違反があるなどとして最高裁に不服申し立て(特別抗告)をした。
刑事訴訟規則47条2項や同215条は、法廷での録音について裁判所の許可が必要としている。
解任された中道一政弁護士によると、事前に録音の許可を求める上申書を裁判所に提出。11月29日にあった初公判の冒頭で不許可となったが、異議を申し立て、録音を敢行したところ、裁判所は「録音をやめないと期日を開けない」として閉廷した。
その後も録音が必要な理由を訴えたが、認められず解任となった。裁判所の訴訟指揮について不服を申し立てる関係で、12月5日に電話したところ、すでに解任されていると伝えられたという。弁護士ドットコムニュースは大阪地裁に事実関係を確認している。
●調書の正確性、どうやって検証する?
中道弁護士が主張するのは、訴訟活動の正確な記録のために録音は不可欠ということだ。
法廷で語られた内容については、裁判所が文字起こし(公判調書)をつくるが、人の話し言葉は書き言葉のように整然とはしていない。その内容に間違いやニュアンスの違いがあったとしても、録音がなければ間違いであることを立証するのは難しい。
中道弁護士は、裁判所が調書用に実施している録音データが開示されるかも尋ねたが、裁判所は開示しないと回答したという。録音ができないなら、メモに専念する2人目の弁護人を選任してほしいとも訴えたが、聞き入れられなかった。
中道弁護士は、「大阪地裁がなしている録音の開示すら認められないにもかかわらず弁護人が法廷録音をできないということであれば、弁護人としては、もはや、録音反訳の正確性を検証できない」などと指摘。裁判を受ける権利を規定した憲法32条や37条などに違反していると主張している。
●弁準「盗聴」との相違点
裁判の録音をめぐっては、今年10月に国の指定代理人が非公開の弁論準備手続を無断録音していたことが問題になった。特に被告の国側が退席したあとの、裁判所と原告による個別聴取も「盗聴」されていたことが、より悪質だと問題視されている。
一方、今回のケースは、誰でも傍聴できる公開法廷での録音。それも事件に無関係な傍聴人ではなく、弁護人の録音だ。裁判の公開という観点からも注目を集めそうだ。
【追記:2022年12月6日】
大阪地裁広報課から、12月5日付で解任したことの確認がとれた。