Appleは2022年6月7日に開催された開発者向けイベント「WWDC22」の基調講演で、Apple PayとApple Walletで、無利子の分割払いが可能になる「Apple Payで後払い(Apple Pay Later)」を発表しました。この「Apple Payで後払い」は、クレジットカードで利用される信用情報やFICOスコアで利用可能かを審査すると同時に、Apple IDで本人確認を行う予定だと報じられています。

Apple Goes Deeper Into Finance With Buy Now, Pay Later Offering - WSJ

https://www.wsj.com/articles/apple-goes-deeper-into-finance-with-buy-now-pay-later-offering-11654939801

The ugly economics behind Apple’s new Pay Later system - The Verge

https://www.theverge.com/2022/6/8/23157184/ugly-economics-behind-apple-buy-now-pay-later-system-bnpl

無利子で分割後払いが可能な決済方法は「Buy Now, Pay Later(BNPL)」と呼ばれ、近年欧米のオンラインショッピングでの採用が急増しています。Appleの「Apple Payで後払い」もこのBNPN方式のサービスの1つで6週間にわたって4回の分割払いがApple Walletに登録しているデビットカードで決済されます。



Appleはすでにアメリカ限定で使えるクレジットカードサービス「Apple Card」を提供しています。このApple Cardはマスターカードブランドで、ゴールドマン・サックスが申込者の承認や融資の資金調達を行っています。

AppleがiPhoneと連動させる独自クレジットカード「Apple Card」を発表 - GIGAZINE



「Apple Payで後払い」が従来のクレジットカードの分割払いと違うのは、金利手数料や遅延損害金が発生しないということ。金利手数料や遅延損害金で負債が発生する可能性を考えてクレジットカードを利用しないユーザーも対象にしているのが「Apple Payで後払い」の大きな特徴です。ただし、デビットカードの口座残高が不足していると、カードを発行している銀行から手数料が請求される可能性はあります。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、Appleは「Apple Payで後払い」で大きな損失を出すリスクなしに顧客を承認するために、銀行のように信用情報とその点数付けであるFICOスコアで申請者の財務状況をチェックし、Apple IDで本人確認と不正防止のチェックを行う予定だとのこと。これはつまり、Appleが銀行などの金融機関と同じような作業を自前で行うことを意味します。

「Apple Payで後払い」は、記事作成時点ではアメリカのみでの提供。日本で「Apple Payで後払い」が提供されるかどうかは不明ですが、BNPL決済サービスのあと払いペイディと提携したApple製品を購入できるプランがすでに公式提供されています。

なお、IT系ニュースサイトのThe Vergeは、「Apple Payで後払い」をiPhoneに組み込むことがBNPL方式の決済を日常的なものとすることにつながり、消費者であるユーザーに大きなリスクをもたらすと警鐘を鳴らしています。



ある調査では、BNPL方式決済を利用するユーザーの73%が1997年から2012年の間に生まれた「ジェネレーションZ」で、このうち43%が少なくとも1回は支払いが滞ったことが明らかとなりました。また、別の調査では、ユーザーの32%がBNPL方式決済の請求を優先するために家賃や光熱費、養育費の支払いをさぼったことがあると答えています。

The Vergeは、「BNPLのような危険なものをAppleのブランドに結び付ける『Apple Payで後払い』は、一般的に満足できるテクノロジーとサービスを顧客に提供するというAppleの目標と対立します」と批判しています。