ウィラーが展開してきた2km圏内の移動に特化したデマンドバス「mobi」がいよいよ全国展開。KDDIと新会社も設立されました。「移動」の枠にはまらない、スケールの大きな話になってきています。

KDDIとの新会社で「mobi」展開 豊島区でもスタート

 ウィラーが2021年から展開してきた、いわゆるオンデマンドバスサービス「mobi」が本格的に拡大します。2022年4月はKDDIとの合弁会社「Community Mobility」がサービスを担当。その設立発表会が4月21日(木)に開催されました。


mobiの車両の例(中島洋平撮影)。

 mobiは、アプリや電話による呼び出しに応じてワゴン車が迎えにくるサービスです。運賃は月額料金は5000円で乗り放題。同居家族は1人あたり500円で、最大6人まで追加が可能。1回300円(子供150円)の単発利用などにも対応しています。

 事業の最大の特徴といえるのが、「半径2km程度のエリアに特化していること」で、2021年は東京都渋谷区、名古屋市千種区、京都府京丹後市で提供。2022年4月1日からは大阪市北区と福島区、そして20日(水)からは東京都豊島区(大塚・東池袋周辺)でもサービスが始まりました。

 新会社の社長はウィラー社長の村瀬茂高さん(瀬の字は異体字)が務めます。村瀬さんによると、昨年6月30日から今年4月19日までの総ライド数(利用回数)は約4万。4月から始まった大阪市北区・福島区では、開始19日間で会員登録者数1300名、サブスク会員数700名、総ライド数2500に上るといい「非常に順調」だということです。

 主な利用は、子どもの送迎や、通院などがメインだそう。村瀬さんは「多くの方が移動が楽になった、ライフスタイルに変化があった、外に出ることが多くなったと回答しています」といい、地域のなかに潜在的な移動需要がまだまだあるという見解を示しました。

 そして今回、新たな提供予定エリアが発表されました。

シロカネーゼもmobiに?

 提供予定エリアは次の通り。カッコ内は発表されている具体的な導入地域です。

・北海道根室市
・北海道室蘭市(白鳥台)
・秋田県大館市
・新潟県佐渡市
・東京都港区(白金・高輪地域)
・千葉県旭市(イオンタウン旭周辺)
・三重県明和町
・大阪府富田林市
・奈良県(なら歴史芸術文化村と奈良公園周辺、天理駅)
・香川県三豊市
・香川県琴平町

「これらは地域ごとに抱える課題やニーズがバラバラです。決まったサービスとしてmobiを各地で展開するのではなく、地域にフィットした移動手段にカスタマイズすることが重要です」と村瀬さんは話します。これらのエリアでの提供は夏頃を目指しているということです。


間 寛平さんもmobiの利用に挑戦(中島洋平撮影)。

 今回の会見の司会は、吉本興業のタケトさんが務め、ミキ、空気階段、エルフがそれぞれコンビで登場。72歳の間 寛平さんが大阪で実際にスマホを使ってmobiを利用し、お年寄りでも簡単であることをアピールする動画も放映されました。

 今後、mobiは様々な他業種とのコラボレーションにより、街の新たな移動需要を創造していくといいます。吉本興業もその企業のひとつで、47都道府県に住む「住みます芸人」とのコラボを展開していくとのこと。

 また、イオンタウンでは店の移動手段としてmobiを活用するほか、英会話のイーオンも教室へ通う生徒の移動手段としてmobiを提供し、家族の送迎を不要とする環境をつくるということです。

「こんなサービス聞いたことない!」しかし反発も

 会見中、エルフの“ギャル”こと荒川さんはmobiを、「こんなサービス聞いたことないし、マジ令和!」と話して笑いをさらいました。

 デマンドバスは交通の維持が厳しくなった地域を中心に導入されてきましたが、全国的にはまだ新しいサービス。その周知にも吉本芸人が一役買ってくれるかもしれません。

 村瀬さんが、「バスとタクシーの中間的なサービス」と紹介するmobiの運行を担うのは、主に地元のタクシー会社であり、そのサービスレベルはタクシーに匹敵するものです。「いま参加してくれているのは、とりあえずチャレンジして一緒に考えていこうというタクシー会社さん」(村瀬さん)といいます。

 しかしタクシー業界のなかには、競合となりうるmobiへの反発もあります。

 これに対し村瀬さんは、「相乗りなので速達性は当然タクシーより劣ります。むしろ、バスが家の近くまで来て、回遊できるサービスになった」ものと話します。実際、家からはmobiで移動し、帰りは急ぐのでタクシーを利用するというケースも少なくないとか。


左からタケトさん、エルフの2人、ミキの2人、空気階段の2人(中島洋平撮影)。

 現在展開中のmobiは、それぞれの地域における実証実験の位置づけで、1年をめどに、利用者にとって必要か、既存の交通へどう影響を与えるかなどを判断していくことになるといいます。mobiのニーズが、タクシーなどの既存市場だったのか、それともmobiが創出した新しい市場なのか、そのあたりも判断されるということです。